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2026年6月 髙松建設不動産市況レポート

金利上昇で不動産市場はどう変わる?~投資家が求める利回りから読み解く不動産価格~

2026年6月のフラット35の金利が3%超えに急上昇したニュースは、大々的に報じられました。
最低金利は3.21%となり、現行制度となった2017年10月以降で過去最高水準を記録しています。
一般的に「金利が上昇すると不動産価格は下落する」と言われますが、実際の不動産市場はそれほど単純ではありません。
今回は、長期金利と不動産投資家が求める利回りの関係から、現在の不動産市場の状況を詳しく分析します。

長期金利は大きく上昇している

住宅ローン金利や不動産投資の資金調達コストに大きな影響を与えるのは、10年国債利回りです。
日本では長らく超低金利政策が続いていましたが、近年は物価上昇や金融政策の正常化を背景に長期金利が上昇しています。

10年国債利回りの推移

(財務省データより作成)

2021年頃には0.1%前後で推移していた10年国債利回りは、その後上昇基調となり、2026年には2%台半ばまで上昇しています。
不動産市場も徐々に新たな局面に入り始めています。

期待利回りは依然として低水準

投資物件の適正価格を算出したり、投資価値を比較・判断する重要な指標として「期待利回り」があります。期待利回りとは、その不動産に投資した場合に期待される収益の程度を示すものです。

一般的には、金利が上昇すると投資家はより高い利回りを求めるようになります。なぜなら、国債などの安全資産でも一定の利回りが得られるようになるためです。
そのため理論上は、「金利上昇→投資家が求める利回り上昇→不動産価格下落」という流れになります。
では実際に、投資家が求める利回り、つまり「期待利回り」はどのように変化しているのでしょうか。

賃貸住宅期待利回りの推移(東京・城南)

(一般財団法人日本不動産研究所「不動産投資家調査」より作成)

近年、期待利回りは低下傾向が続いており、2026年4月時点の最新調査では、ワンルーム・ファミリーともにさらに低下しました。

期待利回りの低下は、投資家が以前よりも低い利回りでも購入したいと考えていることを意味します。
つまり金利が上昇しているにもかかわらず、不動産への投資意欲は依然として強い状態が続いていると言えます。

注目したいのは「期待利回りと金利の差」

ここで注目したいのが、期待利回りと長期金利との差です。
不動産投資において、投資家は空室リスク、修繕リスク、災害リスク、滞納リスクなど、さまざまなリスクを負っています。そのため、リスクの低い国債よりも高い収益を求めるのが一般的です。
そこで、「期待利回り-10年国債利回り」の差を見ることで、不動産投資の相対的な魅力を把握できます。

期待利回りと10年国債利回りの差の推移

(財務省、日本不動産研究所データより作成)

この差は、2010年代にはおおむね4~5%程度ありましたが、近年は長期金利の上昇に伴い縮小が続き、2026年には約1%台前半まで低下しています。
これは、不動産投資家が負うリスクに対して得られる利益が過去と比べて小さくなっていることを意味します。
つまり、不動産投資を取り巻く環境は以前よりも厳しくなっているとも考えられます。

それでも不動産価格が下がらない理由

では、なぜ期待利回りは上昇せず、不動産価格も高水準を維持しているのでしょうか。その背景には複数の要因があります。

例えば、下記の5点が挙げられます。

  • 建築費の高騰
  • 人件費の上昇
  • 新築供給の減少
  • 都心部への人口集中
  • 賃料上昇の期待

特に都市部では新規供給が限られる一方で需要は根強く、不動産価格を支える要因となっています。金利上昇による下押し圧力よりも、供給不足や需要の強さが上回っている状況と言えるでしょう。

今後の不動産市場はどうなる?

長期金利の上昇は、不動産市場にとって無視できない変化です。
これまでのような超低金利環境を前提とした価格形成は、徐々に見直しを迫られる可能性があります。
一方で、現時点では投資家の期待利回りは依然として低水準で推移しており、不動産への投資需要も大きく落ち込んでいるわけではありません。

今後注目すべきなのは、「金利が上昇するかどうか」だけでなく、「投資家がどこまで低い利回りを受け入れ続けるのか」という点でもあります。

定点観測データ

Ⅰ 首都圏中古マンション流通レポート

出典:(公財)東日本不動産流通機構

Ⅱ 近畿圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)近畿圏不動産流通機構

Ⅲ 中部圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)中部圏不動産流通機構

Ⅳ 福岡県中古マンション流通レポート

出典:(公社)西日本不動産流機構

Ⅶ 金利の推移

出典:財務省住宅金融支援機構

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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