• 髙松建設不動産市況レポート

2026年1月 髙松建設不動産市況レポート

2025年の首都圏新築マンション市場を価格帯構成から読み解く

株式会社不動産経済研究所が公表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年のまとめ」によると、2025年のマンション市場動向は、いくつかの注目される数字が並んでいます。

  • 発売戸数は21,962戸。1973年以降で過去最少
  • 平均価格は9,182万円、㎡単価139.2万円といずれも過去最高
  • 初月契約率は63.9%と前年66.9%より低下し、2年連続で70%を下回る

データを詳細に見ると、このところの象徴的な動きがわかります。

新築価格上昇の裏側

本当に価格は“全体的に”上がったのでしょうか。
下のグラフは、価格帯別の供給戸数を10年前と比較したものです。

首都圏新築マンション価格帯別供給戸数の比較(2016年・2025年)

(株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向」より作成。以下同様)

このグラフを見ると、平均価格上昇の背景にある実態がはっきりと見えてきます。
2016年には多く供給されていた3,000万円台から4,000万円台の住戸は、2025年には大幅に減少しています。

一方で、1億円以上の供給戸数は大幅に増加し、2億円・3億円以上の価格帯も明確に存在感を増しています。
つまり、全体的な平均価格が上昇したというよりも低価格帯の供給が減少し、高価格帯の供給が市場の中心になったと捉える方が、実態に近いように見えます。

契約率の低下は「市況悪化」を意味しているのか

次に、初月契約率が低下傾向にあるということは、何を示しているのでしょうか。

首都圏月間契約率と新築マンション供給戸数の推移

2025年の63.9%という数値は、この10年の推移の中でも低水準に位置しており、決して強い結果とは言えません。ここで重要なのは「供給が豊富な中での契約率」と「供給が大きく絞られた中での契約率」の違いです。

供給戸数が35,000戸を超えていた2016年と、2万戸台前半まで減少した2025年とでは、市場の構造そのものが大きく異なります。単純に契約率の数値だけを比較して市場の強弱を判断することはできません。

供給そのものが減少する中で契約率が下落しているという事実は、2025年の市場が「売れなくなった」というよりも、市場に出ている物件の条件や価格帯、そして購入できる層が変化している可能性を示唆しています。 この点を踏まえると、先ほどの価格帯別の供給構成の変化が、より重要な意味を持ってきます。

まとめ

レポートの数字を読み解いていくと、価格や契約率の変化以上に、市場構造そのものの変化が静かに進んでいることが見えてきます。
2025年の首都圏新築マンション市場は、「価格が上がった市場」というよりも、供給される価格帯が大きく変わった市場と捉える方が実態に近いのかもしれません。

今後の市場を考える上でも、この価格帯構成の変化は重要な視点の一つになりそうです。

定点観測データ

Ⅰ 首都圏中古マンション流通レポート

出典:(公財)東日本不動産流通機構

Ⅱ 近畿圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)近畿圏不動産流通機構

Ⅲ 中部圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)中部圏不動産流通機構

Ⅳ 福岡県中古マンション流通レポート

出典:(公社)西日本不動産流機構

Ⅴ 貸家着工戸数状況(東日本)

出典: 国土交通省

Ⅵ 貸家着工戸数状況(西日本)

出典: 国土交通省

Ⅶ 金利の推移

出典:財務省住宅金融支援機構

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト