建物・土地活用ガイド

2021/09/03

都市部の狭小地・変形地を活かした土地活用

狭小地・変形地に対して多くの人は、使い勝手の悪い土地というイメージを持っているかもしれません。そのため、都市部の好立地に土地を所有していても、敷地が狭かったり、特殊な形状だったりする場合は、「売るにも売れない」「満足な建物も建たない」と消極的に考えてしまう方も少なくありません。しかし、郊外や田舎ではなく都市部であれば、たとえこうした土地でも有効活用も可能です。狭小地や変形地の特徴を活かした土地活用を行えば、良質な収益物件にすることも十分可能だと言えます。

狭小地や変形地の活用が難しいと言われる理由

住居やビル、マンションなどを建てる場合、ある程度の広さで正方形や長方形など整った形の土地(整形地)であることが理想的だと言えます。一方、坪数の少ない狭い土地=狭小地や、正方形や長方形でない“いびつ”な土地(変形地)は、そうした用途に向いていないとされています。しかし、狭小地や変形地の活用が難しいのは、単に敷地形状の問題だけではありません。実は日本の住宅建築事情とも密接に関連していることにも注意する必要があります。

たとえば、日本のハウスメーカーが得意とする規格住宅や量産型住宅の多くは、正方形や長方形の整形地、適度な広さがある敷地に建てることを前提に設計されています。したがって、三角形や細長い敷地、旗竿地と呼ばれるような特殊形状の土地に合ったようなプランは、多くの場合、最初から検討されていません。

建物の大部分が工場で作られ、現地で組み立てるユニット型住宅の場合はなおさらで、大型のトラックやクレーン車が入っていけない敷地の場合は十分な広さがあっても、それだけで工事ができないと判断されてしまう可能性があります。

狭い土地を利用した重層長屋が人気に

上記の問題点を鑑みると、土地活用が難しいケースの多くは、敷地形状がネックというよりも、最大公約数的な発想に基づいた設計やプランニングに問題があると言えるかもしれません。要するに敷地形状を活かす家づくりや、建築設計がなされていないだけの話なのです。したがって、規格や量産性にとらわれない本来の自由設計なら、土地の形状、広さにかかわらず、理想の住宅やオフィスを建てることも可能だと言えるでしょう。

その良い例が、狭い土地を活用した「重層長屋」です。長屋を上下に重ねた集合住宅ですが、玄関やエントランスホール、階段、廊下といった共用部がない点が通常のアパートとは異なります。その分、同じ面積の敷地でも共同住宅より住戸部分を広く取れます。こうした特徴から都心部では重層長屋が増えています。狭い土地でも2階建ての集合住宅が建てられるので収益の点でも申し分なく、同じ敷地面積なら共同住宅よりも共有部分のスペースの有効活用も見込めます。

また、2018年の建築基準法改正案で接道規制が強化されました(※)が、重層長屋は特殊建築物(学校、体育館、劇場、展示場、百貨店、旅館、工場など)のような厳しい法的規制を受けない点も重層長屋の魅力です。しかも、各戸が独立した玄関を持っているので建築法上は共同住宅にはあたらず、耐火基準も緩やかなため、設計もしやすく建てやすいといった利点もあります。このように都心部では仮に十分の広さがない土地でも、収益性の高い集合住宅を建てることも十分に可能だと言えます。

※接道規制を付加する建築物の条件が、特殊建築物や3階建て以上の建築物などに限定されていたが、改正案で袋路状道路にのみ接する延べ面積150u超の建築物に対象が拡大

都市部の立地なら活用法も豊富

都市部では土地の形状が特殊でも狭い土地でも、ビルや商店、住居などに活用されています。なぜなら、人の往来や交通量が多いので商売をするにも、賃貸して収益を上げるにも最適だと判断できるからです。仮にそこが狭小地や変形地の上に立った建物であっても、それが個性的だという理由で人気のスポットになる可能性も秘めています。

たとえば、そうした特殊性を逆手に取れば、企業やブランドのアンテナショップにしたり、内外装をセンスよくまとめれば洒落たカフェなども出店したりすることもできるでしょう。また、都心部の利便性を活かせば、単身者に人気のデザイナーズハウスを建てることもできます。

よく言われるように、「不動産ビジネスは立地が命」という見解は正しいと言えるでしょう。つまり、都市部の立地環境を最大限に利用すれば、土地の広さ、形状にかかわらず、多様な活用が図れるということです。もし、所有する土地が変形地や狭小地でも、非常に有望な資産となり得るでしょう。活用法の工夫に頭を使うことで収益物件とすることも不可能ではないのです。

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