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マンション転売規制と不動産市況

大都市圏のマンション価格は2012年後半に底を打ち、その後の金融緩和政策の後押しもあり、長期的に価格上昇が続いています。
さらにインフレ傾向が見え始めた2022年~2024年は、一段と急な上昇カーブを描くようになりました。
マンション価格の上昇幅は落ち着きを見せ始めたものの高止まりは続き、国土交通省が毎月公表している不動産価格指数の区分マンションの項目を見ると、2010年の平均を100として最新(=2025年9月末)の公表データである2025年5月分は216.4ポイント(全国の指数)と本指数の過去最高値を更新しています。
これを見ると首都圏だけでなく主要大都市において、長期的に見てマンション価格の高騰が続いている状況です。

2022年以降マンション価格が急上昇した理由

マンション価格の上昇は、不動産市況全般の盛り上がりやインフレに伴うものというマクロ環境要因に加えて、地価の上昇・建築費など(原価ともいうべきものの価格)の上昇、また長く続く円安傾向のため、外国人の購入も増えていることも価格上昇の要因です。
加えて新規供給が大幅に減少しているため、新築マンション購入者による転売(差益目的)が盛んになっていることも、また希少性の高い物件を購入して高級リノベーションをして販売する買取再販業者の台頭なども、マンション価格上昇の要因と思われます。

マンション転売規制

こうした状況のなかで東京都千代田区は、2025年7月に不動産大手企業に対して(具体的には業界団体に対して)、「市街地再開発事業などで開発・販売するマンション」において、マンション購入者に対して「引き渡しから原則5年間の転売を禁じる」、また「同一名義で複数購入することを禁止する」ように要請を出しました。
千代田区によれば「投機目的のマンション取引が増えることにより、過度な住宅価格の上昇、ひいては賃貸住宅の賃料の高騰などにも影響を及ぼし、区内に居住したい方々が住めないことが想定されます。とりわけ居住実態のない住戸が増えることによる管理組合の運営への支障など、住環境整備への悪影響も懸念されます。」(千代田区ホームページより)ということが背景にあるということです。

転売規制の効果はあるのか

要請の禁止ルールは、すでに確認申請が済んでいる物件に対しての規制は難しいと考えられます。もしそうだとすれば、少なくとも数年間は規制がないことになります。
またこの規制は「市街地再開発事業で販売されるマンション」に限っての規制となります。業界では「実際に規制できるのか」といった運営面を疑問視する声も聞かれます。 こうしたことから買い取り再販業者や不動産流通業者では「影響はそれほどない」、あるいは「影響はあってもだいぶ先」と考えているようです。

さらに千代田区は将来的には別の対応も検討しているようです。「引き続き区内のマンション取引の動向を注視し、今後も必要に応じて対策を検討する」との見解を示しており、「国や都に対して短期で転売した場合の譲渡所得税の引上げ等、投機目的での転売を抑制する有効な施策を講じるよう求める」というような全国を巻き込んでの動きになる可能性もあります。

また中野区では2025年9月8日に区長が「千代田区の政策の影響を見定めた上で、我々としても今後検討していく必要がある」と発言しました。こうした動きに他の区や全国の主要都市でも追随する可能性も出てきました。

国は住宅価格上昇にどう対応する?

住宅価格上昇に対する国の関与は、我が国だけでなく他の国でも見られます。
日本国政府は戦後から一貫して「良好な住宅を広く国民に提供する」ということを掲げており、住宅ローン減税やそれに類する減税はいつも行われており、かつての住宅金融公庫では低い設定の長期固定金利を提供、民間の金融機関は住宅ローン金利を優遇して「買いやすさ」を提供してきました。
このように政府の「広く国民へ住まいの提供」は、つまり「住宅を買いやすくする」とも変換することができ、これができなければ「何らかの規制をかけたり、重い税を徴収したりする」という策は多くの国で行われてきました。

わが国では、住宅価格(あるいは不動産価格全般)の急激な上昇はこれまで何度かありました。のちにバブル期やミニバブル期と呼ばれた期間です。
基本的には金融上の操作による価格抑制策が中心で、もっともシンプルなものは「政策金利を上昇させ、住宅ローン金利を上昇させる」ということです。
またバブル期やミニバブル期には、金融機関に対して不動産に対する事実上の「貸出総量規制」を行い、融資の抑制を促し盛り上げる不動産市況を抑える策を行いました。
海外に目を向けると、例えばシンガポールでは自国民が2つ目の物件を購入すれば、不動産取得に対する税を加算(税率が上昇)、外国人が購入する際には、1つ目の物件から不動産取得時の税を加算される(税率が上昇する)法律となっており、日本でもこうした案が検討されているとの話を聞きます。

不動産市況への影響は?

確かに現在のマンション価格(中古マンション価格)は地価の上昇率やインフレ率などから考慮すると、少し高すぎるようです。
希少性の少ない物件(タワーマンション乱立エリアなどの一般的な部屋)は、早晩価格下落基調になると思われます。逆に「転売規制」が広まったとしても、築浅の「希少性の高い優良マンション」の売却は少なくなることが予想されます。
これらは「規制」がもたらすものではなく、住宅価格における原則に従うものであり、転売規制は不動産市況に大きな影響が出るとは思えません。 心配すべき点は「転売規制」が大きく報じられ市場が混乱することで、それがトリガーとなって不動産市況が冷え込むことです。
大げさな報道には注意が必要です。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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