• 髙松建設不動産市況レポート

2025年11月 髙松建設不動産市況レポート

賃料の定点観察ができる主要データの違い

物価上昇に伴って、また不動産価格上昇に伴って家賃の上昇が顕著になってきました。
ひとくちに「賃料」といっても実際に観測されるデータは、募集賃料・成約賃料・ストック賃料など複数あり、それぞれの特徴が異なります。
そのため各データの特性を知らずに数字だけを見ると、市場の動きを正しくつかめなかったり、判断を誤ったりする可能性があります。
投資判断・エリア分析にデータを活用するためには、まずそれぞれのデータの性質を理解しておく必要があります。

市況に最も敏感に反応する「募集賃料」

募集賃料は、その名の通り募集に出す時の希望価格のことで「公募賃料」とも呼ばれます。
オーナーサイド(管理会社や仲介会社)が設定するもので、市況が良い時は高めに設定される傾向にあります。
ここでは株式会社東京カンテイが公表している「分譲マンション賃料月別推移」をご紹介します。

本データは株式会社東京カンテイのデータベースに登録された分譲マンションの「月額募集賃料」を行政区単位に集計・算出し・㎡単価に換算したものです。
2025年10月分データでは集計対象はファミリータイプのみで47,449件が母数となっています。

分譲マンション賃料月別推移(東京23区)

2018年頃から募集賃料が上昇しているのがわかります。これは昨今の物価上昇よりも早いタイミングとなります。
背景は複数の要因が考えられますが、新築マンションの供給減少・マンション価格の上昇の中で、マンション購入を控えるファミリーユースの方々の賃貸需要が旺盛となったことが最も大きな要因と思われます。

実需を最も正確に反映する「成約賃料」

先に示した募集賃料が供給サイドの動向を反映したものだとすれば、成約賃料は実需を表していると言えます。ここではアットホーム株式会社および株式会社三井住友トラスト基礎研究所の「マンション賃料インデックス」をご紹介します。

マンション賃料インデックス(東京23区)

本データはアットホーム株式会社の「実際に決まった賃料データ(成約事例)」を元に、物件の違い(広さ・駅距離・築年数など)を補正した上で作った賃料の動きを示す指数と言えます。
シングル・コンパクト・ファミリーの全てで上昇傾向にあるのがわかります。
ファミリータイプにおいてのばらつきが大きいのは、物件の違いを補正したとはいえ、そもそも母数が少なくその差が出ているためと考えられます。

入居者家賃の推移はマクロでみる

最後に賃料推移を見る公的なデータとして「消費者物価指数(CPI)」をご紹介します。CPIには「民営家賃」という項目があります。

CPIは価格の「小売物価調査」で得られた“生の価格データ”を元に加工した“物価の指数”です。この小売物価調査は無作為に選定された地域において調査対象となった不動産管理会社が報告した数字を集計しています。
居住中の家賃が対象のため毎月変動するわけではありません。

よって変動は非常にゆっくりで、短期の(現状の)賃料動向を把握するには向いていませんが、長期スパンでは家賃水準のトレンドを把握できます。

消費者物価指数(民営家賃)の長期推移(東京23区)

最後に3つの指標を一つのグラフにまとめてみました。 マンション賃料インデックスに合わせるために、四半期の平均データを2009年を100とした数値に変換しています。

3つの指標の推移

既存入居者の家賃を反映するためCPIは短期ではほとんど動いていません。
募集賃料(分譲マンション賃料)と成約賃料(マンション賃料インデックス)がほぼ同じ動きを見せています。

募集賃料は性質上、募集時点の期待値を示すため市況の先行指標として使えそうです。
一方、成約賃料は実際に決まった賃料なので、もっとも実態に近い指標と言えます。それぞれの指標の特性を理解し目的に応じて使い分けることで、賃料市場の変化をより正確につかむことができます。

定点観測データ

Ⅰ 首都圏中古マンション流通レポート

出典:(公財)東日本不動産流通機構

Ⅱ 近畿圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)近畿圏不動産流通機構

Ⅲ 中部圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)中部圏不動産流通機構

Ⅳ 福岡県中古マンション流通レポート

出典:(公社)西日本不動産流機構

   

Ⅴ 貸家着工戸数状況(東日本)

出典: 国土交通省

Ⅵ 貸家着工戸数状況(西日本)

出典: 国土交通省

Ⅶ 金利の推移

出典:財務省住宅金融支援機構

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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