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イラン情勢が日本の建築工事費・不動産価格に与える影響

2026年2月28日、米国とイスラエルによる共同軍事作戦が始まり、中東情勢は急速に悪化しました。
世界の海上原油輸送の約4分の1、LNG(液化天然ガス)の約5分の1が通過すると言われる、文字通りエネルギーの大動脈であるホルムズ海峡ですが、イランにより事実上の「封鎖」状況に陥ったことで、原油先物価格は3月8日から9日にかけて急上昇しました。
その後は、やや低下しましたが、それでも2月初旬と比べるとかなり上昇しています。
日本が輸入する原油の約9割以上はホルムズ海峡を経由していることから、今後大きな影響が出ることが確実です。すでにガソリン価格は上昇しており、今後 電気・ガスなどのエネルギー価格の上昇することは確実でしょう。
これに対して政府は、3月11日にエネルギー価格抑制のため、政府備蓄石油の放出とガソリン等に対しての補助を出すことを決めました。
ウッドショックの再来か?
建築工事費は2021年以降上昇を続け、高止まりが続いていますが、今回のエネルギー価格の上昇が追加的なコスト上昇圧力となることは確実でしょう。鉄骨・鉄筋などの製造コスト、輸送費、現場の重機の燃料費はいずれもエネルギー価格に連動します。
原油高が建築工事費に波及する理由としては主に三つあります。
第一は「製造コストの上昇」です。鉄鋼・アルミ・セメントなどの主要建材は、製造過程で大量のエネルギーを消費します。原油価格の上昇は燃料費・電力費を押し上げ、これらの素材価格に直接転嫁されます。すでに建設資材物価指数(東京)は2021年1月比で建築部門平均37%上昇している状況下に、さらなる圧力がかかりそうです。
第二は「輸送・物流コストの上昇」です。建材の工場から現場への輸送は重機と輸送トラックに依存しており、軽油価格の上昇が運賃に直結します。また、ホルムズ海峡の封鎖による船舶保険料の急騰も、輸入建材のコストを押し上げる要因となります。
第三は「円安によるコスト増の増幅」です。有事の局面では円安圧力が高まりやすく、それが輸入建材のコストをさらに押し上げます。
いろいろな試算が出ていますが、今回の原油高騰により5~10%の追加上昇がありそうです。
近年の建築工事の状況は下記のグラフから見て取れます。
建設工事費デフレーター:建て方別前年同月比の推移(2020年1月~)

(国土交通省「建設工事費デフレーター」より作成)
グラフは、2020年1月以降の「建築工事費デフレーター」の前年同月比の推移を示したものです(国土交通省:最新データは2025年12月分)。このグラフを見ると、近年は上昇が続いているものの、ここ1年の上昇幅はおおむね2%台で推移しており、消費者物価指数の上昇幅に近く、比較的「妥当な価格上昇」といえる状況でした。
これが先に述べた予想を加味すると、今後の上昇幅は10%に迫る(あるいは超える)上昇となりそうで、グラフから読み取れる通り、2021年~2022年の「ウッドショック」と呼ばれた、工事費急上昇の状況になるということです。
早急な検討が求められる
建築費の上昇は、建築発注額の増加を意味します。建築の計画をしている企業や個人、事業用不動産や開発案件を検討している企業にとっては、工事費の見積もり前提を見直し、事業用不動産の場合は事業収支の再検証を行うことが求められます。つまり「今日契約するのが最も安い」というような状況になることは確実で、検討している方々にとっては、早急に進めるべき局面に入ったと言えるでしょう。
流通不動産価格への影響
建築工事費の上昇は、新築マンション・戸建住宅の価格上昇に直結する可能性が高くなります。特にこのところ戸建住宅は価格上昇していながらも好調の兆しが見えていたのですが、雲行きは怪しくなってきました。その一方で、中古住宅価格は引き続き高値が続くことになりそうです。
金の価格が上昇しているように、有事においては現物資産の価格が上昇する可能性があり、不動産もその一つです。
ただこの理論が通じるのは、金の資産性の背景に「希少性」があるように、不動産においても「希少性がある物件」に限られるものと思われます。
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