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株高が促す企業不動産の構造変化

日経平均株価は2026年5月25日に終値6万5,158円を付け、過去最高値を更新しました。
特に5月7日には、連休明けの一日で前日比3,320円高という史上最大の上げ幅を記録するなど、日本株市場は歴史的な上昇局面にあります。
野村證券は2026年5月、メインシナリオの2026年末の日経平均見通しを6万3,000円へ再度上方修正し、上振れシナリオでは年内7万円台到達もあり得ると指摘しています。
こうした株式市場の活況は、企業の不動産戦略・設備投資においても構造的な変化をもたらしています。
変化する不動産戦略
世界最大手の米系不動産サービス会社CBREの調査によると(参照:CBRE「Japan Investment MarketView Q1 2026」/「不動産マーケットアウトルック2026」)、2026年1〜3月期の国内事業用不動産(10億円以上対象)の取引額は、前年同期比2%増の2兆430億円となり、第1四半期としては過去最大を記録しました。
2025年通年では6兆円を超え、2007年の約5.4兆円を上回って通年実績でも過去最大を更新する見込みです。
こうした大企業の具体的な動きは、経済新聞などで報じられていますが、中小企業においても同様の動きが見られます。
中堅・中小企業の経営課題と不動産戦略多様化のニーズは深く結びついています。
事業承継期の経営者にとっては、含み益を抱える本社・工場の整理は後継者の負担軽減につながります。
建築費高騰や2027年4月施行の改正省エネ基準を踏まえると、老朽化した自社所有建物の修繕・建替コストをかけて活用し続けるか、一旦売却して賃借に切り替えるという選択を迫られることも多いと思われます。
地方圏では事業用定期借地権を活用した底地のみの売却スキームも普及しつつあり、工場や物流施設を稼働させながら資金を捻出する手法として、中堅メーカーや地場物流会社の関心を集めています。
株高とPBR改善要請の連動
上場企業においては不動産の流動化が進んでいますが、この流動化を後押ししているのが、東京証券取引所のPBR(株価純資産倍率)改善要請です。
要請開始から2年余りで対応企業数は急増し、改善策の開示は2024年1月時点の1,115社から2025年7月末には2,312社へと倍増しました。
2026年1月15日からは「開示済」表記に加えて改善策の具体的「内容」が一斉公開される運用となり、PBR現状認識・目標・期間・手段が同業他社と横並びで比較される時代に入っています。
株式市場が史上最高値圏で推移するなか、株価上昇に乗り遅れている企業ほど投資家から厳しい視線を浴びます。
バランスシート(貸借対照表)に眠る含み益の大きな不動産はROIC(投下資本利益率)改善の有力な原資であり、本社ビルや工場底地を売却して得た資金を成長投資や自社株買いに振り向ければPBRの押し上げ効果が期待できます。
サッポロHDのケースは、3Dインベストメント・パートナーズによる長期介入を経て不動産事業切離しに至った象徴的な事例といえるでしょう。
2027年新リース会計基準
2027年4月から適用される新リース会計基準(企業会計基準第34号)では、原則としてすべてのリース取引が借手のバランスシートに計上されることになり、従来のS&LB(セール&リースバック)によるオフバランス効果は大幅に減少します。施行前の駆け込み売却が足元の取引額を押し上げている側面も無視できません。
事業会社による不動産売却は、J-REITや私募ファンド、海外投資家にとって優良物件供給の好機となっています。
株高がCRE戦略を動かし、生じた優良物件供給が投資市場の厚みを増す。
「保有」から「活用」へ──日本企業の不動産戦略は、株高を触媒として新たな段階に入ったといえます。
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