• 髙松建設不動産市況レポート

2022年12月 髙松建設不動産市況レポート

12月20日、日銀は異次元緩和の政策を一部変更しました。政策金利の変更はなかったものの、長期国債の許容範囲を~±0.25%→~±0.5%へ変更し、これに伴い長期国債(10年物)の金利は0.45%付近で推移しています(12月27日)。直ちに不動産市況や建築市況に大きな影響はないと思われますが、今後の日銀の政策には注意が必要でしょう。

TOPICS① 期待利回りの低下が進む

(財)日本不動産研究所より「第47回 不動産投資家調査(2022年10月現在)」が公表されました。キャップレートは、2010年頃から一貫して低下しています。賃料が同一と考えるならば、計算上の不動産価格が上昇しているということです。今回の調査結果では、さらに低下しています。

賃貸住宅(ワンルーム)期待利回りの推移

(一財)日本不動産研究所「不動産投資家調査」より作成

コロナ禍で期待利回りは横ばいとなるエリアもありましたが、比較的早い段階で下落へと戻りました。東京城南エリアでは、今回の結果では3.9%と調査開始以来初めて4.0%を切りました。
名古屋・福岡はともに4.7%となり前回よりも0.1ポイント下落しています。黄色で示した2020年4月が新型コロナウィルスが直撃した時期だと想定すると、直後は多くの都市が横ばいとなっていましたが、福岡だけは直後の2020年10月に0.1ポイント下落しており、いち早く回復の兆しを見せていました。
大阪は今回下落とはなりませんでしたが、2025年に万博を控えており、再開発事業等があることからも富裕層からの人気も高く、今後更に下落することが予想されます。

次にオフィスについても見てみましょう。下のグラフは、オフィスビルの期待利回りと東京5区の平均オフィス空室率を示しています。オフィスの空室率が下落基調にあると言うことは、投資家から見ればリスクが低いということになります。よって、期待利回りも下げ基調になります。実際に2004年から2019年までの両指数の相関係数を算出すると0.71と高い相関関係となっていました。

(一財)日本不動産研究所「不動産投資家調査」三鬼商事株式会社「オフィスマーケットデータ」より作成

しかし、コロナ以降はテレワークの浸透によりオフィス空室率が急上昇しましたが、だいぶ戻ってきました。そのためか、オフィス期待利回りは低下を続けています。都心のオフィス優良物件に対する投資家からの投資熱は高く、経済回復に従ってオフィス需要も高まり、空室率、賃料とも改善に向かうことが期待されているようです。また、賃貸住宅への投資と同様に、国外からの投資欲も底堅いようです。

TOPICS② 世界から見てもお買い得感がある日本の不動産

トピックス①でキャップレートが低下していることをお伝えしましたが、日本の不動産への投資熱が高いのは、日本国内からだけではありません。海外からも注目を集めており、海外の投資家の日本不動産の購入が活発になってきています。

マンション/高級住宅(ハイエンドクラス)の価格・賃料水準比較 (2022年10月時点の東京/港区元麻布地区=100)

(一財)日本不動産研究所「国際不動産価格賃料指数」より作成

上の図表は、一般財団法人 日本不動産研究所による「国際不動産価格賃料指数(2022年10月現在)」です。東京港区に所在するハイエンドクラスのマンション価格、マンション賃料をそれぞれ100.0とした場合の各都市との比較指数です。調査時点の価格において現地通貨等で評価したものをその価格時点で円換算の上、指数化されています。北京、上海、台北は黄色で示した賃料水準が東京よりも低くなっていますが、青色で示したマンション価格は東京よりも高い状態にあります。数字上では東京の物件のお買い得感が際立っているようです。更に、大阪は東京と比べると賃料差よりも価格差が大きく、収益面で更に好条件のようです。

各都市のマンション価格指数・マンション賃料指数の推移(2010年10月=100)

(一財)日本不動産研究所「国際不動産価格賃料指数」より作成

最後にマンション価格指数と賃料指数の推移を各都市2010年10月の指数を100とした際の推移で比較を見てみましょう。
東京や大阪の不動産価格は上昇を続けていますが、アジアにはより高騰している都市もあります。その点を見ても、日本の不動産は海外投資家からは魅力的に見えているのでしょう。
先日、日銀が金利の上限を0.5%に引き上げることを決定しました。今後住宅ローンが上昇することになっても、もし海外からの投資熱が冷めることがなければ、自宅用で住宅を購入したいと考えている人はローン金利高と価格状況の2つのことに注視していく必要がありそうです。

定点観測データ

Ⅰ 首都圏中古マンション流通レポート

Ⅱ 近畿圏中古マンション流通レポート

Ⅲ 中部圏中古マンション流通レポート

Ⅳ 福岡県中古マンション流通レポート

Ⅴ 貸家着工戸数

Ⅵ 金利の推移

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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