賃貸住宅経営において避けては通れない物件の修繕費の悩みですが、実は2021年11月、国土交通省から賃貸住宅修繕の共済制度に認可が下りました。
今回は「賃貸住宅修繕共済」の概要とメリットについて解説します。
賃貸住宅修繕共済とは
「全国賃貸住宅修繕共済組合」が提供している大規模修繕に備えた積立金共済制度は、「賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度(全国賃貸住宅修繕共済協同組合の共済掛金制度)」が正式名称で、国内で初めて国から認可を受けた賃貸住宅修繕工事に備えるための共済制度です。
賃貸住宅オーナー様が毎月の積立共済金を払うことで、大きな負担となる賃貸住宅の大規模修繕(屋根・外壁など)に使う共済と火災による修繕共済を組み合わせたサポートを受ける事ができます。※一定の要件があります。
この共済では
1⃣ 修繕への計画的な備え
2⃣ 天災などの想定外の劣化への対応
が可能になるだけでなく、別の加入メリットもあります。(後述の項目に記載)
築年数と賃貸住宅経営で発生する工事関連
長期にわたる賃貸住宅経営では、入居率の維持と賃料の維持または上昇が望まれます。しかし、現在はネット上での物件検索が圧倒的多数で「賃料」「広さ」「駅からの距離」「築年数」などのフィルターが一般的です。築年数が経過すると、物件選びの段階で競争力が下がります。
また、築年数が経つと外観の劣化、住宅設備スペック等の要因により、周辺の築浅物件と比べ選ばれにくくなります。入居希望者に魅力を感じてもらうためには、積極的かつ計画的に修繕を行い、常に物件を良い状態にしておく必要があります。
そのため、賃貸住宅経営を始める前の収益シミュレーションでは修繕費用・リフォーム費用や15年〜20年目に起こり得る大規模修繕の費用を見込んでおきます。
※賃貸住宅経営を始めてから発生する工事については以下の記事をご参考ください。
松建設マガジン「賃貸住宅のリフォームの一覧」
オーナー様向け情報誌TSUGITE20号「価値を生かし育て続ける 建物の健康管理。」
共済で保証できる内容
共済に加盟するためには、長期修繕計画※を提出しなくてはなりません。こうした計画書を作成することにより、適切なタイミングで修繕ができるようになります。
経年に伴い大規模修繕が必要となる設備はさまざまですが、現時点で共済が対象としている工事は、外壁(塗装やタイル張り補修など)と屋根(塗装・補修・防水・葺き替えなど)に限られているので注意が必要です。
階段や廊下、給排水管、給湯器やエアコンなどの設備は対象外となりますので、これらの修繕には従来どおりの方法で資金を確保する必要があります。
利用するための条件
共済金支払いには、以下の要件を満たす必要があります。
@ 劣化事象が発生していた箇所に、1年前の定期検査では、劣化事象が発生していなかったこと
A 劣化事象が発生してから、当該箇所に対して初めて行われる修繕であること
B 修繕の対象は、劣化事象を修繕するために、全国賃貸住宅修繕共済組合が合理的と認めた範囲であること
C 修繕が上記の定期検査日から2年以内に実施されるものであること
※高松建設では基本的に賃貸住宅経営をされるお客様に対して長期修繕計画を作成していますのでご安心下さい。
修繕対応だけではない!共済加入のメリット
共済加入の最大のメリットは、共済掛金が全額経費になることです。
オーナー様が毎年定期的に拠出した共済掛金はその年の必要経費として認められます。将来の大規模修繕費用(の一部)を確保しながら、節税効果を得ることが可能です。
一例をあげれば、築20年後に1200万円の外壁や屋根の大規模修繕があることを前提に毎年60万円の掛け金を納めれば、その分が損金(経費)となります。
このオーナー様の税率が所得税23%、住民税10%だとすれば、損益通算を適用して年間19.8万円の節税となります。20年間通算すると約400万円の節税です!
まとめと注意すべきこと
オーナー様のメリットが多いこの共済ですが、いくつか注意があります。
・共済の対象が外壁、屋根、軒裏に限定されていること
・あくまで修繕で、グレードアップ工事には適用されないこと
・毎年、建物検査を受ける必要があること
・加入には建物の長期修繕計画の提出が求められること
・加入後の期中に解約したり満期を迎えたりしても、払い戻しはないこと
共済掛金は修繕のための積立のようなものですので、活用して初めてメリットがあります。
松建設で賃貸住宅を建築したオーナー様の加入も徐々に増えてきました。賃貸住宅修繕共済はまだあまり知られていませんが、今後多くの賃貸住宅オーナーが加入することでしょう。
松建設ではマンション建築のご相談と併せて共済加入に関する質問やご相談も承っています。ぜひ気軽にお問い合わせください。
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吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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