TSUGITE 第20号 2022.8月発行

建物の配管は人の血管、電気設備は神経に例えられるように、人と同じく建物も健康管理が必要です。そのためには、自分の体に興味をもつことと同様に、建物を知ることが大切。建物における日常の健康管理、さらには建物の生涯価値の向上に何ができるか見ていきましょう。
※TSUGITEは松建設で建築いただいたオーナー様向けの情報誌です。WEBでは誌面の一部を公開しています。

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価値を生かし育て続ける 建物の健康管理。

価値を生かし育て続ける 建物の健康管理。

建物の配管は人の血管、電気設備は神経に例えられるように、
人と同じく建物も健康管理が必要です。
そのためには、自分の体に興味をもつことと同様に、建物を知ることが大切。

そう考えると、建物にも信頼できる主治医がいたら、どれほど心強いでしょう。
「日常的に病気予防をサポートし、もしものときは適切な治療をしてくれる」
「日ごろの健康状態を把握し、自分を理解し寄り添ってくれる」
私たち松建設グループは、オーナー様の所有する建物にとって、
そんな頼りになる主治医でありたいと思っています。

そのためにもオーナー様との信頼関係を大切にしながら、
グループ3社が連携して計画的な維持管理を行い、建物の資産価値を守ります。

また建物の健康は、利用する全ての方が健やかであるためにも重要なこと。
【予防(日常管理・清掃)】【検診(定期点検)】といった段階から
些細なシグナルを見逃さず、良好な建物環境を保つことをサポートします。
そして、変化する時代のニーズやライフスタイルにも柔軟に対応し、
そこにプラス の価値を加えることで、継続的に魅力ある建物に育みます。

ながく建物を見守り続けてきた、松テクノサービスの視点とともに、
建物における日常の健康管理、
さらには建物の生涯価値の向上に何ができるか見ていきましょう。

いかに生かし、育てていくか。建物における健康管理のポイント。

建物も人と同じ健康に配慮し生かし育てる見据えるのは 「成長建築」

まずはじめに、建物の健康管理を語る上で欠かせない、松建設グループの「成長建築」という考え方。それは、建物にとって避けては通れないネガティブな課題も含めて「建物を育てる」という柔軟な視点をもち、ハード(建物)とソフト(事業)の両面から建物の生涯価値を高めていくことを意味します。そのためには、実は日常の維持管理がとても重要です。それは建物の健康寿命を延ばすこと、すなわち総合的な資産価値維持につながる行為そのものだといえます。
建物が健康な状態でなければ経営は成り立ちません。事業性に優れた状態を維持するためにも、長期目線で計画性をもって判断・対応することが大切です。日々の予防的な維持管理に加え、建物も人間ドックのように定期的な点検を行い、必要な修繕や設備の交換を行うこと。そして利用者様や入居者様の視点からニーズの変化にも柔軟に適応し、収益を見込める健やかな建物の状態を維持し育んでいくことが重要だと考えます。

建物の健康状態を把握し未来を見据えた対応を要となるのは 「建物カルテ」

建物を熟知し、オーナー様と並走する主治医を担う、松テクノサービス。建物竣工より大規模修繕に至るまでの中長期的な計画を念頭に、日常の維持管理からトータルに寄り添います。その要となるのが、日々の不具合対応や修繕履歴などを記録した「建物カルテ」。過去の対応を把握した上で、主治医の立場から総合的な判断で最善の処置ができる体制を整えています。
例えば、突発的なトラブルに対しても対症療法ではなく本質的な対応ができるとともに、不具合傾向をふまえた予防的で効率的なご提案を可能にします。また、適切なタイミングでの点検や修繕の実施、さらには将来の大規模修繕工事時期の見極めなど、オーナー様が余裕をもって準備・実行できるようサポートいたします。
私たち松建設グループは、建物の健康状態をオーナー様と共有し、オーナー様のお考えに寄り添いながら未来を見据えた対応を心がけています。日常メンテナンスのパートナーとして松テクノサービスにご相談ください。

建物の診療記録である「建物カルテ」
日常と中長期の好循環サイクルを生む

日々の健康状態はどうか。どのような処置を施してきたのか。これらを記録した「建物カルテ」をもとに、迅速かつ円滑な対応で建物の健康寿命を支えます。予防的な維持管理と適切な対処を行う『日常サイクル』と中長期目線の『成長サイクル』を上手く連携させ、建物の生涯価値を高めていくことを目指します。


建物の不具合に慌てないために。
給水設備受水槽の清掃、点検、水質検査
給水ポンプの点検

賃貸マンションRC造5階建・8戸/築35年

飲料水を担う受水槽
清掃を怠った結果、コケが発生。

状況・症状他社施工の賃貸マンションをご所有のオーナー様。一部メンテナンスをご依頼いただき対応する中で、受水槽を5年間清掃していないことをお聞きし、受水槽の清掃を提案しました。

調査・診断受水槽を開けると中にコケの発生を確認。外部塗膜の経年劣化もみられ、太陽光が受水槽内に透過することで塩素濃度が低下し、コケが増殖してしまっている状態でした。

対応・結果受水槽の清掃、点検、水質検査および給水ポンプの点検と動作確認を実施。コケの再発を防ぐためにも、太陽光を高い水準で遮蔽する遮光性塗料で受水槽外部の塗装も行いました。

松テクノサービス
からのアドバイス
受水槽や高架水槽の清掃・点検と給水ポンプの点検は毎年実施しましょう。入居者様に常に安全・安心な飲料水を供給するためにも、突然の断水を防ぐためにも大切です。

給湯設備電気温水器の交換

賃貸マンションRC造13階建・70戸/築17年

交換時期を過ぎた電気温水器
立て続けに不具合の連絡。

状況・症状「“お湯の出が悪い”と入居者様から2件立て続けに連絡があった」とオーナー様より調査のご依頼を受けました。

調査・診断電気温水器を調査したところ、設置から17年経過しており、状況を鑑みると、今後、他の住戸にも同様の不具合が発生することが予想されました。

対応・結果使用年数や不具合の状況から、修理ではなく電気温水器本体の交換にて対応。今後、故障してからの対応にならないように入退去時のタイミングで計画的に本体交換するプランを提案し、快諾をいただきました。

松テクノサービス
からのアドバイス
メーカーの修理部品保有期間も考慮し、設置後15年を本体交換の目安としてください。トラブルが発生すると入居者様の日常生活に影響が大きい設備です。状況に応じた計画的な対応をおすすめします。

共用部屋上の清掃・点検

賃貸マンションRC造10階建・40戸/築13年

屋上の定期清掃を実施せず
排水口が詰まり屋上がプール状態に。

状況・症状「どこからか水が漏れているのではないか」とオーナー様からご相談。ゲリラ豪雨の後、一週間以上経過しているにも関わらず、晴天の日でも、雨どいからポタポタと水が落ちる音が続いているとのことでした。

調査・診断屋上(陸屋根)を点検したところ、雨水がたまってプールのような状態に。屋上の排水口がごみで詰まっていたため、雨どいに水が少しずつしか流れない事態になっていました。

対応・結果詰まっていた排水口の清掃を実施。雨水と混じりあって堆積した砂泥や落ち葉、ビニールなどのごみを取り除き、水の流れを正常な状態に戻しました。

松テクノサービス
からのアドバイス
定期的に屋上の清掃・点検を実施しましょう。疎かにすると、排水口が詰まり水たまりができることがあります。水がたまった状態を長期間放置すると防水層の劣化が進み、雨漏りにもつながりかねません。

防犯設備エントランス設備のリニューアル

賃貸マンションRC造13階建・60戸/築26年

インターホン故障をきっかけに
オーナー様のご意向をお伺い。

状況・症状インターホン設置9年目。「通話音声が聞こえづらい」という不具合が発生し、オーナー様から修理のご依頼をいただきました。

調査・診断調査に伺った際、オーナー様より「入居者様の安全性や利便性を高めるためはどうすればいいか」と相談を受けました。故障したインターホンについては一旦部品交換で対応し、改めてエントランス設備のリニューアルを提案しました。

対応・結果全戸最新のカラーモニター付きインターホンへ交換し、インターホン連動の宅配ロッカーを設置。エントランスのドアは手動ドアから非接触の自動ドアにリニューアルし、入居者様の利便性を向上させました。

松テクノサービス
からのアドバイス
集合インターホンの部品交換目安は10年、本体交換目安は15年です。また、オーナー様のお考えや現在の生活ニーズに対応したトータルなご提案が可能です。

次は建物の『健康管理』早見表

建物の不具合で特に多いのが、ガス給湯器・電気温水器の不具合や水漏れなど水回りのトラブル。点検頻度や交換時期の目安を把握しておくこともトラブル予防に大切です。次のページで、ポイントを確認していきましょう。

建物の生涯価値を高める『健康管理』早見表

『健康管理』早見表の建物モデルケース

 建物種別  賃貸マンション   構造・規模  鉄筋コンクリート造 6階建   総戸数  20戸   専有面積  58u-65u(ファミリータイプ) 

建物の生涯価値を高める
『健康管理』早見表

『健康管理』早見表の建物モデルケース

 建物種別  賃貸マンション   構造・規模  鉄筋コンクリート造 6階建   総戸数  20戸   専有面積  58u-65u(ファミリータイプ) 

 点検・清掃   全体交換   部分交換  調査・診断   大規模修繕   改修 

※早見表の実施時期は目安としてご参考ください。 建物の立地環境、使用頻度により異なります。 詳しくは担当者にご相談ください。


建物のある風景

時代を超えて人々に愛されつづける建物たち。
そんな建物のある風景を訪ねに、ちょっとでかけてみませんか。

聴竹居ちょうちくきょ

竣工 : 本屋・閑室 1928年(昭和3年)、茶室 1931年(昭和6年)構造 : 木造平屋建て住所 : 京都府乙訓群大山崎町谷田31お問い合わせ : 聴竹居倶楽部 事務局 TEL:075-956-0030 9時〜17時ご見学はホームページからの事前予約制となります。詳しくはホームページをご覧ください。 聴竹居HP:http://www.chochikukyo.com/

日本の気候風土と西洋的な空間を融合させた近代住宅建築の名作「聴竹居」。
環境との共生を図るとともに、和洋それぞれの長所を取り入れ、日本人のライフスタイルに西洋的な空間構成を見事に融合させている。

建築されてから90年以上が経った今、改めて注目されている建物があります。1928年に建築家・藤井厚二によって建てられた「聴竹居」です。この建物に人々が関心を寄せている理由は環境共生住宅の原点≠ニされているため。今でこそ環境共生は住宅における基本概念になりつつありますが、藤井厚二は90年以上も前に環境工学の知見を設計に取り込み、日本の気候風土と日本人の感性に適合した理想の住宅を自邸として具現化していました。例えば自然換気システム。床下換気口と天井裏をつないで空気循環を促進するとともに、クールチューブ(導気口)で外気を室内に取り込むなど夏も快適に過ごす工夫が随所に見られます。その他にも外壁には断熱性に優れた土壁を採用し、壁面や天井面には調湿に優れた和紙を用いるなど、あらゆる面で自然との調和と共生への取り組みが実践されています。
また、藤井は機能面だけでなく、デザイン含めすべてにこだわりを見せました。その一つが縁側。庭に面した軒には日差しや雨を防ぐ庇がありますが、縁側から外を眺める際に視界の邪魔にならないよう、微妙に長さが調整されています。また、窓の上部を擦りガラスにすることで、額縁効果により景色が一層美しく感じられると同時に、日差しを柔らかく取り入れる間接照明のような効果を得ています。
住まう人の心地よさが追求されている点も「聴竹居」を語る上で欠かすことができません。玄関を上がると広がる居室を中心に客室、縁側など各室が隣接しており、それぞれ扉を開ければ緩やかにつながるひと続きの空間となるよう設計されています。これにより、プライバシーを守りながらも、居心地の良い空間のつながりを創出し、家族との心地よい距離を感じることができます。
2017年、自邸として建てた昭和の住宅としては初めて国の重要文化財に指定された「聴竹居」。そこには、私たち日本人が豊かに暮らすための大切なメッセージが詰め込まれていました。

左 食事室(ダイニング):床を少し高く設計し、天井高を低めにおさえることで団らんスペースとしての落ち着きと、居心地の良さを演出。 
真ん中上 居室(リビング):居室には穏やかに分離された食事室や畳の小上がりがあり、畳の床下は導気口になっている。 
真ん中下 欄間障子:間仕切り上部の欄間を開閉できる障子にすることで通風をコントロール。室内の空気環境を快適に維持する。 
右上 縁側:周囲の自然と室内をつなぎ、サンルームとしても機能する縁側。冬の寒さの原因である隙間風を防ぐため、建具と窓枠が接する部分を凹凸にすることで密閉度を高める工夫もされている。 
右下 客室(応接室):客室に置かれているのは自作の机と椅子。壁に埋め込まれた照明も藤井自身が手がけており、部屋ごとにデザインや光の広がり方を調整するなど細部までこだわりが感じられる。

昨今、CO2削減やZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など長期優良住宅の政策が進む中、昭和初期にいち早く自然が持つエネルギーを巧みに取り入れた藤井厚二の作品は、彼が「其の国の建築を代表するものは住宅建築である」と語っていたように、「日本の住宅」への想いとあるべき姿を、私たちへ示し続けています。

大阪本店設計本部 一級建築士 山部 隆浩

オーナー様を陰から支える建設のプロフェッショナルたち 想いを築く仕事人 Vol.8

お客様の想いをカタチに、 想像を超えるクオリティで応え続ける。

住之江工芸 企画設計部
仁科 史朗
あらゆる内装における空間設計、什器・家具のデザインを担当する企画設計部。営業や製造部門と連携しながら、コンセプトプランを構築・ビジュアル化し、家具一点から内装すべてにわたりお客様の想いを具現化する。

世界水準の技術と知恵で、理想の空間を創り出す。

国内外の高級ブランドショップをはじめ、百貨店やホテル、住宅などの内装を手がける住之江工芸。ワンランク上の空間デザインに特化し、設計から製造、施工までを自社一貫体制で提供している。そこで設計・デザインを担当している一人が仁科だ。「住之江工芸の仕事は、一つひとつが特注です。培ったノウハウと高度な技術力によって、お客様の想いを一からカタチにする。そのため、どの家具、什器をとっても、世界に二つと同じものはありません」と仁科は語る。実際、クライアントからは「表面の仕上がりから細部に至るまで、完成度が高い」と、特に自社工場における什器・家具、内装部材の製作・塗装技術に高い評価を得ている。世界各国のハイブランドとの仕事は、求められるクオリティが非常に高く、その基準やニーズに応える経験を長年にわたり積み重ねていることが強みになっているという。

「ただ、高い技術力や豊富な実績だけが私たちの強みではありません。お客様の意図を汲み取り、しっかり寄り添えるプランを提示できることにこそ大きな価値があると考えています」。そう語る仁科は、提案の前段階から、担当営業とともにお客様の元へヒアリングに行く。直接対話を重ねることで、お客様のご要望や想いをしっかりとデザインにアウトプットするのだ。住之江工芸への依頼は、特注が基本であるものの、什器や家具にしても具体的に「これをつくって欲しい」といわれることはほとんどなく、ご要望やイメージが明確ではない場合も多い。話を伺いながらお客様がぼんやりと頭の中で描くものを、仁科をはじめ設計士が具体化していく必要がある。「私たちの仕事には、一切マニュアルがありません。お客様が求められている機能、使い心地、色、形などを感じ取り、提案を重ねて想いに近づけていきます。オーダーメイドの仕事は難しいことも多いのですが、お客様の想いと我々の想いが重なり理想の完成形を一緒につくり上げていくことに喜びを感じます」。世界基準の高いスキルと、真摯にお客様へ向き合う姿勢。それが一流ブランドから選ばれる理由といえる。

高級内装空間づくりのエキスパート集団住之江工芸。
1963年設立。2004年、松コンストラクショングループに加入。特注家具や什器などを製造する自社工場は、内装業としては西日本最大規模の10000uを誇る。国内外のハイブランドに認められる技術力を生かし、近年ではオフィスの応接室や個人住宅の改装、大切な家具の修復等も多く手がける。

※新型コロナウイルス感染予防対策に配慮した上で、取材・撮影を行っています。


掲載内容は2022.8月発行時点のものです。
時間経過による掲載内容の変化は保証できませんのであらかじめご了承ください。
内容についてお確かめの場合は、【0120-53-8101】へお問い合わせください。

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