建物・土地活用ガイド

2022/08/31

超入門!ZEBについての基礎知識

世界的な脱炭素社会を目指す動きの中で、日本は2050年にはカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)、2030年度には温室効果ガス46%(2013年度比)削減の実現に向けて、様々な取り組みが進んでいます。
これに伴い、エネルギー消費の約3割を占める建築分野での省エネ対策を加速させる取り組みが進められています。

この建築物における推進の中で、「ZEH」「ZEB」という言葉が徐々に浸透しています。とくに、住宅についてのZEHはかなり浸透してきました。
今回は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に比べまだ浸透していないZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)について、「これだけは知っておきたい」ことを解説したいと思います。

ZERO エネルギーの背景

地球規模での課題である「気候変動問題」の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択されました。この中で、

「世界共通の長期目標として、世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて、2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)」

「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」

等が合意されました。

この実現に向けて、世界各国が取組を進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げて推進しています。

一般の我々が(意識の高い方や専門家以外という意味)がこうした目標を達成するためにどんな事ができるのでしょうか?
省エネつまり「使うエネルギーを減らす」に加えて、創エネつまり「エネルギーを生み出す活動を促進する」の2つのアプローチがあります。

カーボンニュートラルに向けた取り組み

カーボンニュートラルに向けた建築分野での取り組みは、国土交通省の資料によれば、次のようなステップとなります。

2030年度までのステップとして
建築物省エネ法を改正し、省エネルギー基準適合義務の対象外である住宅及び小規模建築物の省エネルギー基準への適合を2025年度までに義務化する。
2030年度以降新築される住宅・建築物について、 ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、整合的な誘導基準・住宅トップランナー基準の引上げ、省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。

2050年度中までに
2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す。

エネルギー基本計画(2021年10月22日閣議決定。国土交通省資料)より

ZEHとZEB

ZEH(ゼッチ)とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称です。
ここでのハウス(住宅)は、戸建や集合住宅(マンション)、所有や賃貸用かを問いません。集合住宅では「ZEH−M」と言われることもあります。本稿では簡単な説明に留めます。

ZEB(ゼブ)は「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称です。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。

ビルという建物は一般的に日々多くの方が利用します。そのため、そこで使われるエネルギーは膨大な量となります。
ガス・電気を使い、空調(エアコン)、エレベーター、給湯、照明、換気設備、OA機器の稼働など、大量のエネルギー消費が行われます。

建物(ビル)の中では人が活動しているので、エネルギーの消費量をゼロにすることはできませんが、利用者の協力で使うエネルギーを減らし、工夫を凝らした「創エネ」によって使用するエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができるというわけです。

ZEB4つのパターン

このように大量にエネルギーを消費するビルにおいて「建物のエネルギー消費量」を実質ゼロにするには、大幅な省エネルギーと大量の創エネルギーが必要です。
そこで、ゼロエネルギーの達成状況に応じて4段階のZEBシリーズが定義されています。

ネットエネルギーゼロを実現している順に並べると、以下の4段階に分かれます。

1)『ZEB』(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ))
省エネ(50%以上)+創エネで100%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現しているゼロ以下に抑えられているビルです。

2)Nearly ZEB(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ニアリー ゼブ))
省エネ(50%以上)+創エネで75%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している25%以下まで削減できているビルです。

3)ZEB Ready(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・レディ(ゼブ レディ))
省エネで基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している省エネのみで50%以下に削減できているビルです。

4)ZEB Oriented(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・オリエンテッド)
延べ面積10000u以上で、用途ごとに規定した(下記※)一次エネルギー消費量の削減を実現し更なる省エネに向けた未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入している。
※事務所等、学校等、工場等:40%
  ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等:30%


環境省資料より

高松建設の取り組み

最後に、高松建設のこれまでのZEBについての取り組みについて簡単に紹介します。

高松建設では、「ZEBの実現・普及によるエネルギー消費量の削減を地域温暖化対策のための重要な施策のひとつと捉え、ZEB化の技術検証・蓄積を進めていきます。2021年に示された政府による第6次エネルギー基本計画では、2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指すという目標が掲げられました。これを受け、当社では2025年度に受注する建築物のうちZEBが占める割合を50%以上とする目標を新たに掲げ、ZEBプランナーとしてお客様にZEB化の意義とメリットを説明し、積極的にZEBの普及に取り組んでいきます。」と宣言し、取り組みを進めています。

また、WEBサイト上では「省エネ建築物の実績」の一部を掲載していますのでご覧ください。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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