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令和8年度(2026年度)税制改正大綱 貸付用不動産の相続時評価の改正

今回は令和8年度(2026年度)税制改正大綱に盛り込まれた、「賃貸住宅などの貸付用不動産の相続時評価の改正」を中心に、その他の住宅や不動産に関する改正項目をピックアップして解説します。

現行の評価と評価減の理由

賃貸用不動産の流通価格と相続税評価額の間に乖離があることを利用したスキームは、相続税対策として広く知られています。これは税の不公平感があるとして改正されることになります。

国税庁がHPに掲示している例では、「課税時期において貸家の用に供されている家屋は、その家屋の固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた価額を、その家屋の固定資産税評価額から控除して評価します。
具体的には家屋の固定資産税評価額が1,000千円、借家権割合が30%である地域で、賃貸割合が100%である場合、1,000千円-1,000千円×30%×100%で財産評価額は700千円となります」この例では賃貸用の家屋は固定資産税評価額の70%になるということです。

固定資産税評価額は、概ね時価の70~80%程度に設定されています。そのため時価(=流通価格)と比較すると、評価額は70%×70%=49%となり、約半額の評価となります。
この評価に基づいて相続税が課税されるため、現金で保有すれば、その評価は(言うまでもなく)100%となります。
この例では課税評価額が51%減らせることになります。現行の制度では、この原則の計算方法で計算した際に、著しく問題があると国税庁が判断した場合には、個別に評価することになっています。

しかし、これまでの評価方法では公平性を保つことが難しく(指摘を受けた側が、不運と感じてしまう状況)、また納税者にとっても「どう評価されるかわからない」という不安な状況となります。こうした課題を解消するために、今回の改正が行われたのです。

改正の内容

相続税法は基本的には「時価主義」を採っており、貸付用不動産(=賃貸住宅など)の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえて、その取引実態等を考慮し、以下の見直しが行われます。
以下「※財務省公表資料 令和8年度税制改革大綱」より引用。

「被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する」
(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の 100 分の 80 に相当する金額によって評価することができることとする。

適用時期

この改正は、令和9年(2027年)1月1日以降に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。
つまり、相続発生日(被相続人が亡くなった日)が例えば令和9年(2027年)の2月などであれば適用対象となります。
この場合、財産の取得時期は問いませんので、例えば令和4年(2022年)3月に賃貸用住宅として購入した場合であっても、令和9年(2027年)に相続が発生すれば、土地・建物とも適用されます。

ただし、この改正については改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む)には適用されません。
つまり、通達に定められた日(今後の詳細な通達により決定されるため、未定)までに、5年以上前から保有している土地に新築工事を始めた物件であれば、完成が令和9年(2027年)1月1日以降であっても、現行の評価の方法が適用されるということになります。

適用されれば5年内での(比較的慌てての)賃貸住宅を購入、あるいは建築するパターンでは相続税圧縮スキームが使えなくなります。
土地活用での賃貸住宅建築の主要目的に挙がる1つである「相続税圧縮」については、早め早めの対応が求められるでしょう。
以下、その他の不動産関連の税制改正です。

新築住宅の固定資産税の減額

近年住宅価格は上昇を続けていますが、住宅取得者の初期負担を軽減するために、新築住宅にかかる固定資産税の減額措置が6年間延長されます。
現行と同じ特例処置により、新築住宅の固定資産税が戸建住宅は3年間、マンション(耐火建築物等)は5年間半額になります。適用要件は原則として床面積の下限が50㎡でしたが40㎡に引き下げられます。また住宅ローン減税と同じく、一定のハザードエリア内に所在する住宅は対象外となります。

長期保有土地等に係る事業用資産の買い替え特例

例えば首都圏にある老朽化社宅を売却して、その売却金をもとに地方都市に工場を新設したような場合、譲渡した事業用資産の譲渡益について原則80%の課税繰り延べが行われます。

現行の特例処置が一部見直されますが、基本的には3年間、令和11年(2029年)3月末まで延長されます。所得税・法人税について、長期保有(10年超)の土地等を譲渡し、新たに事業用資産(買換資産)を取得した場合、譲渡した事業用資産の譲渡益について原則 80%の課税が繰延べされます。

東京23区内から三大都市圏外に本社を移転する場合の繰延割合を高く設定(90%)されており、企業の地方移転へのインセンティブを高めることも盛り込まれています。

土地の所有権移転登記に係る登録免許税の特例

不動産取引価格が近年上昇しているなかで、定率税である登録免許税の負担も増大しています。
『土地の取得時の負担を軽減させ、土地に対する需要を喚起することで、土地の流動化を通じた有効利用等の促進を図り、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとする』狙いがあると国土交通省の資料に記載されています。
所有権移転登記の登録免許税は本来は2%ですが、売買による土地の所有権移転登記に係る登録免許税は1.5%となります。
これが2年間延長されます。

未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例処置

「売却価格が低いなどの価格面の課題から市場取引が成立しにくい低未利用地について、新たな利用意向を示す者への土地の譲渡を促進し、適切な利用・管理を確保するとともに、更なる所有者不明土地の発生を予防する」(国土交通省資料)ための特例で、現行制度が3年延長されます。

個人が以下の条件「5年以上の保有期間、市街化区域や用途地域設定区域内等にある800万円以下の低未利用地等、これら以外の都市計画区域内にある500万円以下の低未利用地等、譲渡前に低未利用であること」を満たす不動産の譲渡を行った場合、土地の長期譲渡所得から最大100万円を控除されます。

外国人の不動産取引への消費税課税

現在は、消費税がかからない海外に住む人が国内不動産を取引した際の仲介手数料に消費税を課すことが今回の税制大綱に盛り込まれました。これまでは免税でしたが、消費税がかかる国内居住者との間で負担額に差が生じることとなり、近年は外国人投資家による不動産購入が増えていますので、不公平感を解消するためで、令和8年(2026年)10月から適用されます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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