• 髙松建設不動産市況レポート

2023年7月 髙松建設不動産市況レポート

日銀は7月27~28日の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブコントロール)の方針を一部修正し、これまで10年物国債を±0.5%へのコントロールから、0.5%を「めど」として0.5%を超える金利を一定程度容認しました。昨年12月20日に0.25→0.5に修正して以来7カ月ぶりの修正です。これにより、28日14時には10年物国債の金利は0.6%を超えました。
不動産市況においては、現在変動金利で借りる方が大半なので大きな影響はないと思われますが、今後、固定金利は少し上昇することが確実でしょう。また「物価上昇は秋ごろには収まる」としていた見通しも、少し先に伸びる予測に変わりました。

TOPICS① 令和5年路線価発表。地価回復の勢いが強まる。

7月3日に国税庁より、「路線価」が発表されました。路線価とは、主要道路に面する土地の1平方メートル当たりの価格を言います。国税庁が毎年1月1日時点の価格を7月1日(今年は土日を挟んだため3日)に発表し、相続税や贈与税や固定資産税などの算定に使われます。

公的な土地価格の指標の違い

相続税はそもそも、財産を「時価」で評価することを定めていますが、現金や上場株などと違って、土地の「時価」を把握することは難しいという現状があります。そのため、国税庁が原則として路線価に基づく算定を認めています。
ただ、最近では直下の不動産市場の動向を反映しづらい側面もあります。代表的な例はタワーマンションです。路線価をもとにした評価額が、高層階などで実勢価格と大きく乖離するケースがあります。ここに目をつけた節税が大きく広まっていることなどを受けて、国税庁は今後新たな評価ルールを設けて行く方針を発表しています。

標準宅地の対前年変動率の平均値

2023年1月1日時点の路線価は25都道府県で平均値が上昇。全国平均は前年比+1.5%の上昇で、前年の+0.5%から1ポイント上昇しました。また、前年マイナスだった兵庫県、茨城県、秋田県、山形県、岩手県などの5県が、プラスに転じており、新型コロナウィルスからの経済再開で、地価回復の勢いが強まっていると言えます。
今回上昇率が上位だったのは北海道や福岡県、宮城県など地方都市で、これらのエリアはオフィス市況が活況な上、再開発なども追い風となりました。繁華街や観光地がコロナ禍の影響から脱しつつあることで、今後も回復傾向、それ以上にコロナ前を上回る水準にまで回復する可能性も考えられそうです。

TOPICS② 都心での地価の回復の兆し。エリア別路線価の考察

路線価を、各県庁所在地内の最高地点の変動率推移で詳細に見ていきましょう。

東京都 最高路線価の推移

東京都でもっとも高かったのは「中央区銀座5丁目(銀座中央通り) 鳩居堂前」で、今年で38年連続の全国首位となります。1平方メートルあたり路線価は、4,272万円でした。変動率は、3年振りに上昇に転じました。新型コロナウィルス禍で落ち込んだインバウンドが回復傾向にあり、路線価にもその状況が反映されつつあると言えます。数値としては、コロナ禍直後の2020年の1.1%を超えていますが、コロナ前の2019年の2.9%にはまだ及んでいません。しかし、来年以降は更なる上昇が見込める状況と言えます。

名古屋市 最高路線価の推移

名古屋市は、名古屋駅前の「中村区名駅1丁目(名駅通り)」で1平方メートルあたり1280万円と去年から2.6%上昇し、これで19年連続の県内最高額となりました。名古屋市全体では、交通の利便性が高い駅周辺でのマンション需要が価格上昇を牽引している状況です。

福岡市 最高路線価の推移

大阪市「北区角田町(御堂筋) 阪急うめだ本店前」は、前年から+1.3%で1平方メートルあたり1920万円となり、40年連続で関西のトップをキープしています。
大阪市の屈指の繁華街であるキタやミナミでも回復の兆しが見えてきました。特にミナミの戎橋周辺エリアは2年連続で管轄内の路線値下落ワースト1位でしたが、2023年は前年と同額で下げ止まりました。インバウンドが戻ってきたことで、路線価の回復も浮き彫りになりました。

東京都 最高路線価の推移

福岡市の最高路線価は「福岡市中央区天神2丁目(渡辺通り)」で、前年比+2.7%、1平方メートルあたり904万円、43年連続の九州トップとなりました。福岡市は、福岡市主導による「天神ビッグバン」によって再開発が進んでいます。期待感は高く、コロナ禍でも「渡辺通り」の路線価はマイナスになることはなく推移していました。今後もオフィスの大量供給を控えており、地価の上昇が期待できそうです。

定点観測データ

Ⅰ 首都圏中古マンション流通レポート

出典:(公財)東日本不動産流通機構

Ⅱ 近畿圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)近畿圏不動産流通機構

Ⅲ 中部圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)中部圏不動産流通機構

Ⅳ 福岡県中古マンション流通レポート

出典:(公社)西日本不動産流通機構

Ⅴ 貸家着工戸数

出典:国土交通省

Ⅵ 金利の推移

出典:財務省住宅金融支援機構

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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