• 髙松建設不動産市況レポート

2023年3月 髙松建設不動産市況レポート

アメリカの2月分の消費者物価指数は前年同月比で+6.0%と、利上げを続けているにも関わらず依然としてインフレ基調が続いています。アメリカの政策金利は上昇、アメリカ国債の金利も3%台半ばから後半の水準となっています。そのためドルが強く円安基調が続き、投資マネーの米国債への流入が続いています。
日本の金利上昇はしばらくなさそうな気配ですが、世界的に金融情勢は不安定な状況となっています。国内だけでなく海外の金融市場も注視しておく必要がありそうです。

TOPICS① 中古マンション成約状況と最近の築年数に関する傾向

中古マンションの成約状況をエリア別に見ていきましょう。

近畿圏:(公社)近畿圏不動産流通機構、その他エリア:(公財)東日本不動産流通機構より作成

成約件数はコロナウィルスが感染拡大を始めた直後大きく下落しました。2020年4月の成約件数はどのエリアでも、前年比が集計が始まって以来過去最低となりました。ですが、コロナ禍でも住宅需要は底堅く推移していたということもあり、行動の制限が撤廃されてからは溜まっていた需要の反動で大きく成約件数を増やしました。
しかし、前年同月比でプラス傾向だったのは2021年前半頃までで、それ以降はマイナスになる月が多く、2022年の通年の実績では首都圏が前年比-11%、近畿圏は-1.6%、愛知県は-7.0%、福岡県は-6.0%と全エリアでマイナスとなりました。
次に、成約単価を見ていきましょう。コロナ禍で成約件数が大きく減少した頃は、成約㎡単価も下落しました。しかし、その後はどのエリアでも多くの月でプラスとなりました。この成約データ上では、中古マンションの成約価格は上昇が続いています。

(公財)東日本不動産流通機構より作成

左のグラフは、首都圏の中古マンションにおける、成約物件と新規登録物件の平均築年数の推移を表したグラフです。過去10年を見ると、成約物件・新規登録物件ともに築年数が上昇傾向にあり、成約では4.36年、新規登録物件では7.85年上昇しました。中古マンションの築古化が進んでいます。特に新規登録物件では、2018年頃からの上昇が目立っています。
右のグラフは、成約・新規登録物件に占める築10年以内物件の割合を線グラフで示し、その差を棒グラフで示したものです。2022年では成約物件のうち23.7%が築10年以内の物件でしたが、新規登録物件では15.2%しかなく「約6.6戸に1戸の割合」と、両者の間にはかなり差があるのが分かります。需要の高い築浅の中古マンションでは、需要と供給の差が年々広がっている状況が分かります。

TOPICS② エリア別に見る中古マンションの需給関係

中古マンションの成約取引件数を需要、新規登録件数を供給であると想定し、エリア別に中古マンションの需給関係の変化を考察していきましょう。
下のグラフは、件数倍率と価格乖離率の推移です。件数倍率とは、成約に対して新規登録件数が何倍あるか(新規登録件÷成約件数)、価格乖離率は、売り手が提示する新規登録価格の平均と買い手が購入を決めた価格の平均はどれくらい乖離しているのかを示します(成約㎡単価÷新規登録㎡単価-1)。数値が上に行く程、需給関係がタイトな状況にあると言えます。

近畿圏:(公社)近畿圏不動産流通機構、その他エリア:(公財)東日本不動産流通機構より作成

まず首都圏ですが、コロナ直後は契約件数が大きく落ち込みました。そのため、青色で示した件数倍率も悪化しました。その後、成約件数が回復してきましたが、供給側では様子見をする売り手が増えたため、新規登録件数が減少しました。そこで件数倍率も縮小し、需要と供給を量で見た場合、需給タイトな状況になりました。その後は新規登録件数も増えてきたため、現在は緩やかに需給緩和状態に向かっています。
コロナ後、件数が大きく減少した新規登録ですが、価格の面では強気な価格を付ける売り手が多く、オレンジ色で示した通り成約価格と新規登録価格の乖離は拡がっていました。現在は若干回復傾向にあります。

近畿圏も首都圏と同じように、コロナ直後に成約件数が大きく落ち込んだことで2020年は件数倍率が拡大しました。その後は、底堅い需要があるため回復し価格乖離率とともに、現在は需給タイト傾向に推移しています。愛知県では件数倍率は落ち着きましたが、価格の乖離が拡大傾向にあります。

福岡県では件数倍率、価格乖離率ともに需給タイト傾向に推移しています。特に新規登録件数が減少傾向にあり、供給量が少ない状況にあります。金利が上昇しない限り住宅需要が大きく減退することは考えにくいので、新規登録件数が今後の福岡県の中古マンション市場の鍵を握ると言えそうです。

定点観測データ

Ⅰ 首都圏中古マンション流通レポート

出典:(公財)東日本不動産流通機構

Ⅱ 近畿圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)近畿圏不動産流通機構

Ⅲ 中部圏中古マンション流通レポート

出典:(公社)中部圏不動産流通機構

Ⅳ 福岡県中古マンション流通レポート

出典:(公社)西日本不動産流通機構

Ⅴ 貸家着工戸数

出典:国土交通省

Ⅵ 金利の推移

出典:財務省住宅金融支援機構

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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