• 賃貸住宅経営の基礎知識

急増する高齢者単独世帯と賃貸住宅需要

住宅需要に大きな影響を与える要因として、世帯数の変化、そして世帯類型の変化があります。
そのため、地域における世帯数の将来見通し、そして世帯類型別の世帯数の将来見通しを知ることで、「これから先、どんな住宅が求められるか」を推し量ることができます。

今回の原稿では、
前回に続いて、国立社会保障・人口問題研究所が11月に公表した「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)-2024年推計」のデータの中から、「高齢世帯がどれくらい増えるのか」にフォーカスしてみたいと思います。

増える高齢者世帯

すでに高齢化社会と言われて久しいですが、今後も都市部を中心に高齢化が進みます。
世帯主が65歳以上の世帯は全国では、2050年には2020年(最新の国勢調査)比で、14.6%の増加となる見通しです。

ただし、一貫して伸び続けるということではありません。最も人口ボリュームゾーンである「団塊世代」の方はすでに75歳以上となっており後期高齢者となっており、現在の平均寿命を考えるとこの先はお亡くなりになる方が増えます。

そのため20年→25年では3.9%と増える予測ですが、その後増加率は減少します。
その後「団塊ジュニア世代」が高齢者に差し掛かる35年→40年には増加率が上昇しますが、一時的なものとなります。

高齢者世帯が増えるのは大都市や人口増加県

一方で、現在も高齢者世帯が多く、人口減少が目立つ県では、高齢者世帯においても減少が始まっています。
秋田県や山口県、高知県など16の県では、2050年の高齢者世帯が20年比で下回ることになります。特に前掲の3県では10%以上減少します。
これらの地域では、「高齢化社会の先の世界」が近づいているといえるでしょう。

逆に都市部や少し前まで人口増加が続いていた地域では、これから高齢者世帯が増えます。
2050年に世帯主が65歳を超える世帯が20年比で増加する都道府県は31あります。
なかでも、沖縄県は44.5%増、東京都37.3%増、滋賀県31.0%増、愛知県30.9%増、神奈川県30.7%増とこれら5つの都県では30%以上の増加率となり、これから高齢者世帯が一気に増える見通しです。

しかし、全国でみれば、高齢者世帯が一般世帯(寮や施設に入居していない世帯)に占める割合でみれば、すべての都道府県で2050年には20年に比べて増え、20年の国勢調査では37.6%でしたが50年には45.7%となります。

最も高齢者世帯の割合が少ないのが東京都で28.5%、逆に最も多いのが秋田県で49.9%となります。
秋田県では2世帯に1世帯が高齢者世帯となるという見通しで、人口増が見込めない状況が顕著となっているのでしょう。

急増する高齢者単独世帯

「高齢者世帯が増える」という予測と前回の原稿でお伝えした「単独世帯が増える」という予測、当然ながらこれら2つを掛け合わせた「高齢者の単独世帯」も増えます。

65歳以上の世帯で単独世帯は、20年には738万世帯が50年には1084万世帯へと1.47倍に増えます。75歳以上の世帯では同1.69倍に、85歳以上の世帯では1.88倍となります。

これを世帯数の割合でみれば、高齢者世帯のうち、単独世帯の割合は2050年には20年比で46.9%増加、すべての都道府県で増加します。
とくに、沖縄県では86.6%増、滋賀県では81.2%増、愛知県71.1%増と沖縄県と都市部で増える見通しです。数でみれば、最も多い東京都は2030年には「高齢者単身世帯」が100万世帯を超え、2050年には148万世帯を超える見通しです。

高齢者単独世帯と賃貸住宅需要

このように、これからの30年、「高齢者の単独世帯」が急増するということになりそうです。
単独世帯が増える要因の1つとして、「死別」があります。人口のボリュームゾーンが高齢者に差し掛かっている状況下で、「夫婦」世帯で一方が先にお亡くなりになれば、単独世帯となります。

これらの方の中には、夫婦で住んでいた(子供たちも)住まいに、そのまま住むこともあれば、「高齢者の1人暮らしには広すぎる」などの、高齢者向けの賃貸住宅等に引っ越しされる方も増えてきました。

「令和5年住宅・土地統計調査」(総務省)によれば、高齢者のいる世帯が賃貸住宅に居住する割合は全世帯では18.2%ですが、これを高齢者単独世帯に限れば32.2%と1/3が賃貸住宅に住んでいるようです。

なお、この賃貸住宅のうち65.5%は民営の賃貸住宅です。
また、生涯未婚率が上昇し続けていることも、高齢者単独世帯急増の予測の大きな要因と考えられます。
現役の間は賃貸住宅に住むことが多い単独世帯の方々は、高齢者になっても(リタイアしても)そのまま賃貸住宅に住むことを選ぶ方が多いでしょう。

このような「ずっと賃貸住宅に住んできた」高齢者単身者の方向けの賃貸住宅の需要は今後も増えると思われます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。

著書

「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。

レギュラー出演

ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

公式サイト

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