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2021/06/29

倉庫業界で進む保管場所から総合物流化への流れ

従来は倉庫といえば資産を保管するだけのスペースでしたが、近年では総合物流化の流れを受け、単なる保管場所以上の意味合いを持つようになってきました。特に大型倉庫や複合的な機能を備える物流センターでは事業の起点となることが求められ、最新の建築技術が駆使された建物構造が取り入れられているケースも珍しくありません。今、倉庫業界にはどのような変化が起きているのでしょうか。

ネット通販がもたらす「倉庫=保管場所」時代の終焉

倉庫は物を保管するための場所として、長きにわたって物流業の中で重要な役割を担ってきました。しかし、近年その役割は大きく変化しつつあります。その要因として考えられるのがネット通販の普及です。野村総合研究所が2016年11月に発表した「ICT(情報通信技術/Information and Communication Technology)・メディア市場の動向分析・市場規模予測」では、個人向けのネット通販市場は2015年度の15.4兆円から2022年度には26兆円に成長するというデータを算出。約10兆円も拡大することを予測しています。

自宅にいるときや移動中にPCやスマホで買い物ができるネット通販は、利用者にとっても大変便利である一方、企業にとっては即日配達などの顧客対応の負担が増える結果となりました。運送大手のヤマト運輸が2017年4月にAmazonの当日配送サービスから撤退を発表した一件は記憶に新しく、これは目まぐるしく変化する消費者ニーズのスピードに企業がついていくことの難しさを物語るエピソードとなっています。

ネット通販市場は今後も拡大を続けることが予想されているだけに、大企業ならずとも時代の変化に応じる必要があるでしょう。特に製品を保管する倉庫を所有している会社にとっては、“単なる物置き”として利用しているだけでは、スピードが重視される時代の流れに対応できなくなることが予想されます。つまり、現代の倉庫は保管スペースとしての役割だけでなく、さまざまな機能をもつ複合施設として事業拠点となることが求められているのです。


急速に進む倉庫の総合物流化

倉庫が複合施設としての事業拠点となるには、物流拠点としての機能も備えた施設になることが重要です。具体的には、保管しているものの中から顧客の注文に沿った商品を即座にピッキングする機能や、切り分けや梱包といった物流加工の作業を行う機能を有していることが必要になってきています。

その要因としては、物流企業が物の保管や輸送だけでなく流通加工や輸出入代行をする、「総合物流化」が挙げられます。前述したように近年、ネット通販市場の拡大によって、いっそう効率的な物流が求められつつあることや1ヶ所で集中的に物を管理することでコストを削減したいと考える企業が増えたことによって発生した流れです。

これは巨大な物流センターを保有しているアマゾンなどの企業に限らず、中小規模の一般企業においても例外ではありません。企業として製品を保管することにしか利用されていない倉庫がある場合は、時代のニーズに合わせて活用法の見直しを図る時期にきていると言えるでしょう。


物流センターが担う事業拠点の役割

実際にこれまで荷主から寄託を受けた物品を保管することが主な業務であった倉庫業界の企業の中には、顧客から保管、荷役、運送といった物流業務の全行程を一括して請け負うサード・パーティ・ロジスティクス(3PL)といった事業を展開しているところも近年多く見受けられます。

そういった企業の倉庫はもはや単なる倉庫ではなく、事業の拠点となる大規模な「物流センター」として進化を遂げています。最新鋭の機器を備えているのはもちろんですが、伝票処理、集品、包装、梱包、値付け、配送などの手作業を担う人員が大量に必要となるため、作業環境の快適性を高め、休憩室や売店といった施設の充実にも配慮しなければなりません。まさに事業を円滑に回す拠点としてのあらゆる機能を備えた施設と言えるでしょう。

このような倉庫の総合物流化の流れは、今後は中小規模の倉庫にも波及していくことが考えられます。物流の効率化が求められる時代において、規模にかかわらず複合的な機能を備えた事業の拠点となる総合力をもった施設に発展を遂げることが望ましいでしょう。現在も保管場所としてのみ利用している倉庫があるのなら、これを機に事業の拠点となる複合施設としての再活用を検討してみるべきかもしれません。


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