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土地活用・建築の基礎知識建て替え・リニューアル

2022/10/19

実家が空家になった際の土地活用法とは

この先の我が国では少子高齢化、人口減少が進むことが確実です。2022年現在空き家率の推移は予想に反してほとんど増えていませんが、空き家の実数は今後増加する可能性が高くなっています。
実家を相続する場合、田舎や遠方ならともかく、実家が都市部にあるのであれば、やり方次第では土地や建物を有効活用する道も残されています。「住む予定がないから」と空き家のまま放置しておいては、固定資産税や各種経費等の出費がかさむばかりです。急に相続する事態に陥った場合、非常に困ることになりますので、空き家になった際の土地活用法をあらかじめ知っておきましょう。

地主の子息が考えておくべき実家の相続

実家がご両親の所有されている土地・建物なら、当然、そのお子さんはいずれ相続をする日が来ます。たとえ、今はご両親ともに健在でも、遅かれ早かれその時は訪れるでしょう。もし、それが急なことであったような場合、何の準備も心構えもなければ、ほとんどの方は初めての経験だと思われますので、相続や土地活用といった対応をすることは大変です。

親が万が一の事態に備えて遺言を作成していれば問題ありませんが、そうでない場合は財産分与などで家族との調整に時間がかかったり、最悪の場合は揉め事に発展したりして交渉が長期化する恐れもあります。両親ともが亡くなった場合では、実家は住人がいない空き家の状態が続くことになります。人が住んでいない状態でも固定資産税などの費用がかかります。

また、両親が亡くなった場合以外でも、病気やケガで寝たきりになったり、認知症にでもなったりすれば、そのまま施設に入所というケースも考えられます。そうすると実家が空き家になり、住人不在の状態をどのように有効活用すべきかが必ず問われるようになるでしょう。そのため、その時が来てから考えるのではなく、将来を見越して事前準備することが望まれます。


空家のまま実家を放置することのリスクとは

何の管理もせず実家を空き家のまま放置すると建物の傷みが加速し、維持するには修繕やリフォーム等の費用がかかります。また、倒壊の恐れや防犯上・衛生上の問題、景観を損なうといったリスクが懸念されるようであれば、空き家対策特別措置法に基づいて「特定空き家」に指定される恐れもあります。こうなると更地と同様、通常の6倍の固定資産税が課されることもありますので要注意です。

もちろん固定資産税の問題だけではありません。管理の行き届いていない空き家は、放火や犯罪の発生、不法投棄、景観の悪化といったトラブルを招いて地域社会に悪影響を与えかねません。さらに建物の老朽化が進めば、倒壊などで第三者に危害を及ぼす恐れもあります。もしそうなれば、補償問題に発展することもあるでしょう。仮に最悪の事態とならなくても、管轄の自治体から解体・撤去を指導され、従わなければ強制執行となり、しかも工事費用は所有者の負担となることもあります。

早めの対応が相続税対策になる!

もう1つ注意すべきが相続税です。平成27年から相続税の基礎控除額が下がり、実質増税となりました。つまり、これまで資産総額から相続税の課税対象にならなかった場合でも、対象となるケースも出てきました。たとえば、相続税の基礎控除額は<3,000万円 + 600 万円 × 法定相続人の数>で計算されるので、法定相続人が3人なら非課税枠は4,800万円までということになります。もし、都市部に実家がある場合、土地建物を含めて評価額が課税対象範囲内になることも珍しくないでしょう。

土地活用・売却を含めた将来の計画を

空き家を活用せずに放置することは、コストとリスクの両面から決して得策とは言えません。そのため、売却という選択肢もあるでしょう。ただし、建物や土地などの不動産を売ったことで得られた売却益には「譲渡所得税」、それに伴う「住民税」、さらに譲渡所得税に対して2.1%の「復興特別所得税」がかかります(令和19年まで)。つまり、トータルで20.315%※もの税金が課されることになるわけです。

※長期譲渡所得の場合の税率。所有期間により変わる。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)=39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
長期譲渡所得(所有期間5年超)=20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
長期譲渡所得(所有期間10年超のマイホームの軽減税率の特例)
【譲渡所得が6000万円以下の場合】
 =14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%)
【譲渡所得が6,000万円超の場合】
 =譲渡所得6000万円以下の部分:14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%)
 =譲渡所得6000万円超の部分:20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

たとえば、古くなった建物の価値は評価されないことも多いですが土地は都市部にあれば購入当時より高く売れることもあります。それでも例えば1,000万円でも売却益が出れば、そのうち約200万円が税金となります。ただし、相続した年から一定の期間内に売却すれば、譲渡所得から3,000万円を特別控除として差し引くことができるという「空家に係る譲渡所得の特別控除の特例」もあるので、こうした制度を利用すれば税額の大幅軽減も可能です。


生前の居住用住宅建築

このほか、生前に実家を賃貸併用住宅に建て替えることも有効だと言えます。建物の賃貸割合に応じて敷地の評価額が200uまで最大50%減額でき、相続税の課税対象額を減らすことができるからです。活用法がいくつかありますが、実家の今後については親が健在のうちに検討しておくことが望まれます。土地活用の詳細や各種特例などの優遇措置利用に関しては、早い段階でその道の専門家に相談することがおすすめです。よく言われることですが、相続については両親が元気なうちに早めの対応が最善です。早めの対応は相続税の軽減にもつながります。

2018年4月からの税制度の改正により、相続前3年以内に不動産賃貸業を開始した場合の収益物件については小規模宅地等の特例が利用できなくなりました。このため、相続税対策を主目的とした居住用賃貸住宅建築については、とくに早めに専門家に相談されることをおすすめします。

※上記で記載の情報は2022年10月現在のものです。税制度は変更されることがありますので必ず最新の情報をお確かめください。

監修 : 吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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