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法人の土地活用・建築

2017/12/11

研究施設の環境整備におけるフレキシビリティとは

山中伸弥教授が所長を務める京都大学 のiPS細胞研究所などを筆頭に、日本国内のみならず世界からも注目を浴びている日本の研究機関。しかし、すべての研究施設が設備面において恵まれているわけではありません。よりよい成果を出すためには、支援を行う企業側としても研究者が不自由なく研究に没頭できるような空間づくりを行うことが不可欠だと言えるでしょう。柔軟な思考を導く研究施設とはどのような空間なのでしょうか。

創造性を刺激する空間であるべきラボ

現在日本の研究分野は1949年に湯川秀樹教授がノーベル物理学賞を受賞したことを皮きりに、物理学賞、化学賞、医学・生理学賞といった分野で合計20名を越えるノーベル賞受賞者を輩出しており、国内外で注目を集めています。最近では2016年に東京工業大の大隅良典栄誉教授がオートファジーの仕組みを解明し、ノーベル生理学・医学賞を受賞したことでも話題となりました。

研究と一口に言っても0から1を作りだす研究や、今あるものをよりよいものへ昇華させる研究などさまざまですが、どの研究にも共通して必要となるのが「創造性」です。事実、科学研究費の審査においてもその研究の創造性やオリジナリティが最重要ポイントとして評価されています。しかし、日々行われている研究の創造性やオリジナリティは、いつ、どのような環境で、どのようにしてもたらされるのかを予測することは非常に困難なことです。

だからこそ、研究の創造性やオリジナリティといった発現の可能性を少しでも高めるために、研究者が日々研究を行うラボ(研究室)の環境を整えることが大事な要素の1つなのではないでしょうか。優れた研究結果が優れた環境で生まれるということは、もはや“自然の道理”だと考えられます。


研究者の能力を引き出すフレキシビリティ

ラボにはそこで日夜研究に没頭する研究者の能力を十二分に発揮できるような高いフレキシビリティが求められます。研究に必要なユーティリティの供給や排水・気流の管理などの細かい点はもちろん、実験台や実験機器など研究を行う空間の最適化が可能なモジュール設計(機能ごとに分割したそれぞれのモジュールの内部構造を設計すること)を取り入れることで空間ごとのフレキシビリティを高めることも大切です。

また、近年ではプロジェクト・研究規模による人員変動への対応が容易であり、研究者が相互に視認できることで安全性の確保にもつながるオープンラボがトレンドとなりつつあります。多様な研究内容に、多様な研究者が関わることができる環境整備は、支援する企業にとっても重点課題だと言えるでしょう。

行う研究やその段階などによって必要とされる環境も変化します。そうした研究・開発に対応した環境の変化に素早く、かつ経済的に対応が可能な自由度の高い空間創出を考えることが必要です。日進月歩する研究を行う場所であるからこそ、さまざまなイノベーションに対応できる高いフレキシビリティを備えた施設であることが求められます。研究者の能力を引き出し、ひいては研究の生産性の向上にもつながるでしょう。


研究成果の向上に貢献する設備投資

研究成果の向上には研究者の能力が大きく関わってくるのは当然ですが、その研究者の能力を引き出すという意味では設備投資が非常に重要となります。先述したようなフレキシビリティを始めとして、近年注目されている居室と実験室といった日常動線の効率化を図るリニアレイアウト(縦または横の一列に並べるレイアウト)などの導入も検討すべきでしょう。研究者の負担となる手間を省き、より創造力やオリジナリティをもって研究に取り組めるような環境づくりを行うことで研究成果向上への貢献も可能です。

毎日のようにラボにこもり研究に没頭する研究者にとって、その施設環境の快適さは成果にも大きな影響をおよぼします。そのため、支援企業にとって研究者の創造力を駆り立てるようなフレキシビリティのある空間づくりを整備することが、大発明への大きな貢献になるでしょう。


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