ヒャクからのさらなるヒヤクを目指す松建設のお役立ちコンテンツ 建築・土地活用ガイド

建て替え・リニューアル法人の土地活用・建築

2017/11/13

病院の老朽化対策として急務となる移転建替

立派に造られた地元の医療を支える大病院であっても、当然ながら経年による建物の劣化は避けられません。建物の経年劣化対策における選択肢の1つとして挙げられるのが、病院の移転建替です。しかし、病院の移転建替をするにあたってはいくつかのリスクが存在するだけに、綿密な準備が必要になります。当コラムでは、医療機関の移転建替をご検討するうえで注視すべきポイントを紹介します。

医療を提供する病院は設備面の完備が最重要

病気やケガを治療するため訪れる患者さんに対して、病院は万全の医療を提供し信頼感を与える役割が求められています。この役割を果たすためには、誰もがわかりやすく利用ができる「機能性」、何か不測の事態が起きた際に患者さんやスタッフを守れる「安全性」、高いホスピタリティによって患者さんに居心地のよい空間を提供する「快適性」といった要素をすべてそろえた建物環境が不可欠となります。

特に地震大国である日本では、病院においても高い耐震性・耐久性が求められるでしょう。老朽化した建物では、予期せぬ天災が起こった際に病院としての機能維持が困難になる恐れがあります。災害によって電気やガス、水道といったライフラインがストップすると入院患者さんの安全の確保しづらくなります。また、被災した患者さんが運び込まれてくるにもかかわらず、医療を提供できないケースだけは避けなければなりません。老朽化した病院ではそうした事態を避けるためにも、病院はまず建物環境の整備に力を入れる必要があるでしょう。

たとえ見た目には老朽化が顕著でなかったとしても、古い建物の場合は最新の耐震基準を満たしていない場合もあります。患者さんの安全を確保し、不安を少しでも払拭するためには移転建替を検討することも重要です。移転建替をすることで安心・安全だけでなく新しくきれいな空間を患者さんに提供でき、働くスタッフのモチベーションアップにもつながります。


移転の場合は患者さんの治療環境確保を

実際に病院移転を決断する場合は、さまざまな準備が必要になります。既存の患者さんの治療環境の確保は、一般企業の移転とは異なる病院移転の至上命題です。特に入院中の患者さんの環境には最大限の配慮が欠かせません。以前までは移転の際に入院患者さんを一時的に帰宅させるという方法も採られていましたが、最近では一時帰宅をさせず、そのまま移転先の病院へ搬送するケースが増えてきています。

入院中の患者さんを搬送する場合には、患者さんの負担とならないよう事前に綿密な搬送計画を立てる必要があります。「利用する経路は安全か」「渋滞で時間を費やしてしまわないか」という移転の懸念から始まり、病院搬送後は「何階のどの部屋へ移動させるか」という配置に至るまで、すべて詳細に取り決めすることが不可欠です。そして、定期的に通院しているの患者さんへの配慮も忘れてはいけません。移転によって通院距離が遠くなってしまう場合は、近くにあるほかの病院を紹介するなど、誠意ある対応が求められます。

また、万全の治療環境を確保するためには、患者さん搬送だけでなく医療機器や薬品といった物品の迅速な整備が必要になります。事前に現場で働くスタッフとしっかり打ち合わせし、移転先のどこにどのような順番で移送させるかなどの物品移送計画も綿密に練っておきましょう。


病院の移転建替に必要なのは計画性

既存の患者さんを大切にするのは大前提ですが、病院を経営していくうえでは新規の患者さんを開拓することも重要です。移転したことで以前より患者さんが減ってしまうというケースも珍しくありません。そうしたリスクを回避するために意識しておきたいのが、「診療圏調査」です。

「診療圏の人口はどれくらいか」「競合の医院はどのくらいあるのか」「移転予定の土地は交通の便がよいか」などを診療圏調査によって詳細にリサーチし、採算が取れると確信してから移転を決めることで想定外のリスクを回避することもできるでしょう。移転にはさまざまな準備が必要になりますが、立地への細かい調査は最重要事項と言っても過言ではないでしょう。移転後の計画も含めた土地選定は移転成功を目指すうえで欠かせない要素です。

総合病院など医療機関では24時間、365日の対応が必要とされるため、移転によって病院の機能が停止することは望ましくありません。建物の増改築や建替によって休診に陥る事態は、経営を考えても患者さんの心情を考えても避けたいところでしょう。スムーズな病院移転を実現するためにも、綿密な計画を立てることが重要になります。


建築・土地活用ガイド一覧へ