建物・土地活用ガイド

2022/03/15

固定金利の上昇が続く。いつまで金利は上昇するのか?

住宅ローン金利、賃貸住宅向け融資における固定金利の上昇が続いています。
住宅購入においても、賃貸住宅建築においても、ほとんどの方が金融機関のローンを利用しますので、金利の上昇は気になるところです。今回は、固定金利の状況を見つつ、今後の展開を予測してみます。(執筆時点:2月28日)

メガバンクの住宅ローン金利引き上げ

大手メガバンクの住宅ローン(10年固定もの)の金利が、2022年3月1日実行分から引き上げられました。2月にも引き上げられましたので、2カ月連続となります。たとえば三井住友銀行で固定金利特約期間10年を選んだ場合、この10年間に適用される金利は、1月適用分は年3.40%、2月は3.50%(+0.10%)、3月は3.55%(+0.05%)になります。これは他の大手銀行もおおむね同じような上げ幅で、三菱UFJ銀行では1月分は年3.39%だったものが2月は年3.49%に3月1日からは3.54%、みずほ銀行では1月は年2.75%でしたが、2月は年2.80%、3月1日からは2.95%に引き上げられました。
同様に、りそな銀行も3月分から3.45%(+0.10%)、三井住友信託銀行も3.05%(+0.05%)と軒並み固定金利が上昇しています。

この金利水準がいつ以来なのかを、時系列で住宅ローン金利の推移を公表している三井住友銀行のサイトを参照してみます。10年固定金利が3.50%台になったのは、2015年8月以来です。金利の推移をたどっていくと、この時点から徐々に低下していき、2017年2月には2.95%まで下がりました。これが直近では金利の底で、その後はしばらく3.20〜3.40%で推移し、2020年3月にはコロナ禍の影響で一層の金融緩和に転じたため3.15%まで低下しました。そして、2022年2月適用分から3.50%、3月適用分は3.55%になったという流れです。ただ、特に住宅購入で利用する方が多い変動金利に、大きな変動はいまのところ見られていません。
(注:ここでの金利の数字は店頭金利です。ご紹介する場合は優遇金利が適用され、この店頭金利から、市況により異なりますが一定の%分引かれた金利が適用されます。詳細は担当者までお問い合わせください)。

ご存知の方も多いと思いますが、アメリカでは住宅ローン金利が大きく上昇しています。22年に入りアメリカの住宅ローン金利はほぼ毎週ごとに上昇し、1月の1か月で約0.5%の金利上昇になりました。日本においては先に述べた程度の上昇に留まっており、まだ「金利上昇のキザシが見え始めた」という状況ですが、この先が気になります。

賃貸住宅融資の状況

次に、賃貸住宅建築向け融資の金利動向を見てみましょう。
下グラフは、住宅金融支援機構の賃貸住宅向け融資、35年固定の金利の推移です。

グラフをみれば、すぐわかるように、22年3月分から、急に上昇しています。
変動金利で住宅・賃貸住宅融資を受けている方が、固定金利へと切り替える件数も増えてきているようです。一過性か、この先上昇が続くのか、判断に迷うところです。

金利上昇の背景

住宅・賃貸住宅融資における固定金利は、一般的に10年物国債の金利などを勘案して、金融機関が決めます。アメリカにおいて、まもなく金融緩和が収束に、そして利上げに向かう中で米国債の長期金利上昇が続いています。日本においても、金融政策はしばらく続けると日銀は発表していますが、それとは裏腹に長期金利の指標となる日本国債10年物の利回りが上昇基調にあります。
下図をみれば、年明けからの上昇基調が一目瞭然です。日銀は許容金利の上限を0.25%に置いているようですが、そのポイントが近くなってきました。
一方、変動金利は政策金利が基準となります。こちらは、日銀が上げる気配を見せていませんので、よって変動金利にも動きがないというわけです。

この先住宅・賃貸住宅ローン金利はどうなる?

この先の金利の見通しですが、世界的な金利上昇の中で、しばらくの間上昇は避けられないと思われます。ただ、過度な金利上昇は需要の冷え込みにつながりますので、日銀は政策的に、例えば今以上に国債の買い入れを行うなどして、金利上昇を抑え込むものと推測されます。そのため、上昇はするものの、米国のように一気に上がる可能性は低くいと思われます。現在変動金利でお借り入れの方は、もうしばらく様子を見てもいいと思います。
一方で、中長期的に見れば金利上昇は避けられないとも思いますので、住宅購入・賃貸住宅建築を考えている方は早めがいいかもしれません。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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