TOPICS@ どうなる金利上昇?キャッシュフローへの影響は?
現在、アメリカやヨーロッパの中央銀行で利上げの動きが本格化してきています。日本でも、長期金利の代表的な指標となる10年物国債の利回りが年明けから僅かづつ上昇しています(2月22 日時点)。
確かに金利は上昇していますが、これまでの金利がかなりの低水準でしたので、長期推移でみても、まだ低い水準と言えます。とはいえ、欧米では金利の上昇が進みつつありますので、いつ日本も金利が急上昇するかどうか分かりません。わずかな金利の上昇でも、総支払額に影響を与えるので、不動産投資や賃貸住宅建築を検討している方は、金利の動向に注意し、金利が上昇する前に、行動に移すべきだと言えます。金利が上がったらキャッシュフローにどのような影響があるのでしょうか?キャッシュフローを考える際に重要な家賃について見ていきましょう。
一般的に、賃料は価格硬直性(賃料粘着性)があると言われています。これは、家賃は市況に左右されますが、短期間ではそれほど大きく変動しないというものです。実際に、総務省の消費者物価指数(CPI)を見ても、物価の指数の一つである「生鮮食品を除く総合」指数は上下が激しいのに対し、「民営家賃」は落ち着いた動きを見せています。
金利が上昇したらどうなるか?ですが、長期で見ると金利の動きと家賃の動きは強い相関関係があります。左の図は、10年物国債と、「動き」という点に注目して先ほどの民営家賃CPIを前年同月比で表した結果です。
金利が上昇したとしても、その際に家賃が上昇傾向があれば、キャッシュフローへの大きな打撃を受けにくいということも考えられます。
TOPICSA コロナ禍で大都市の転入超過数はどのように変化したのか?
上のグラフは、東京都、愛知県、大阪府それぞれにおける、人口の転入超過数の長期推移です。東京都の転入超過数の上下が大きいのが分かります。一方、東京都に比べると、愛知県や大阪府の増減は小さいですが、東京都の転入超過数が増えると、愛知県・大阪府もそれぞれ増え、また逆も正となります。東京の人口が減ったからと言って、それが名古屋や大阪などの都市に流出するというわけではなく、東京と同じような現象が起きているというわけです。それではコロナ前後を詳細に見ていきましょう。東京都は一極集中が続いており、転入超過数は8万人を超えていましたが、2020年は3万8千人、2021年には1万人をやっと超える程度にまで転入超過数が減少しています。愛知県は、2020年から転出超過に転じ、大阪府も2021年の転入超過数は、2019年の半分程度にまで減少しています。
コロナ禍で転入超過数が大幅に減少しましたが、年齢別に見てみると、際立って転出超過となっているのは、30歳〜44歳と0歳から9歳までの層、つまり子育て世代がメインとなっているようです。逆に、転入超過を支えているのは、東京都、愛知県、大阪府でも15歳〜29歳の若者となっています。最新の国勢調査では、若者世帯(15歳〜29歳)の7割以上が賃貸住宅に住んでいます。コロナ禍で都市から人口が流出してると言われていますが、それが「イコール賃貸需要が減る」とは言い切れないことがデータより分かります。
定点観測データ
T 首都圏中古マンション流通レポート
出典:(公財)東日本不動産流通機構
U 近畿圏中古マンション流通レポート
出典:(公社)近畿圏不動産流通機構
V 中部圏中古マンション流通レポート
出典:(公社)中部圏不動産流通機構
W 貸家着工戸数
出典:国土交通省
X 金利の推移
出典:財務省、住宅金融支援機構

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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