建物・土地活用ガイド

2022/01/19

人口減少が続く日本人、急増する外国人 賃貸住宅需要にも変化のキザシ 〜最新国勢調査を読み解く〜

2020年10月に行われた国勢調査の集計結果が21年11月30日に公表されました。21年6月に速報値が発表されましたが、このほどの公表結果は確定値(のちほど、遡って修正という例もあります)ということになります。
今回は最新の国勢調査の結果を見ながら、今後の住宅需要について考察してみましょう。

人口減少は続くも低下速度は弱まる。その背景に外国人の急増

2020年10月1日時点(以下調査時点は同じ)の日本国の人口は1億2614万人で前回調査(2015年)から約95万人減少しました。減少は0.7%で、これを1年平均に換算すると0.15%ということになります。
国勢調査は5年ごとに行われますが、前々回2010年→前回2015年において人口は0.8%の減少(この時調査開始以来、初めて人口減少となりました)でしたので、減少幅はわずかに小さくなりました。
減少幅が小さくなったのは外国人移住者が増えたためです。外国人人口は20年10月時点において274.7万人(全人口の2.2%)で、前回調査から83.5万人(プラス43.6%)と大幅に増えています。1年換算ではプラス7.5%増えていることになります。逆に、日本人はこの5年で178.3万人減少しています。日本人だけでは前回調査からマイナス1.4%で、2010→15年ではマイナス0.9%、2005→10年ではマイナス0.3%でしたので、回を追うごとにマイナス幅が大きくなっています。
20−21年においては新型コロナウイルスの影響により減少していると思いますが、これが元に戻れば、外国人の我が国への移住者数は増えるでしょう。かりに、回復がおそくなれば、次回調査(2025年)の国勢調査での人口減少はこれまで以上に多くなるものと思われます。
いずれにせよ、今後我が国への外国人移住者は増えることは概ね確実であり、こうした方々の住宅需要は増えてくるものと思われます。今後、賃貸住宅需要が大きく成長する領域だと思われます。

高齢者の1人暮らしと空き家問題

男性よりも女性の方が約345万人多く、女性100に対して男性94.7の比となっています。また、差は広まっていますがその要因としては、平均寿命の差だと思われます。そのため、高齢女性のみの単身世帯が増えています。高齢になると各施設に入居される方もいますが、自宅で暮らす一人暮らしの老人のケアをどうすればいいかは、自治体(特に地方都市)にとって大きな課題となっています。
空き家問題は、実数は増えていますが、空き家率で見れば予想よりかなり低く、最新の(2018年)の総務省「住宅・土地統計」を見ても、前回調査(2013年)からの上昇は0.1%未満でした。都市部や都市部周辺地域での空き家は、都市部の再開発が全国的に行われていることもあり、それほど増えていません。もんだいは、これら以外の地域で空き家が増えている現状をどうするか、です。高齢で単身の方が、施設へ入居されたり、お亡くなりになられたりした後の使わなくなった住まいで、相続が上手くいかず、また売ろうとしても買い手がつかず、という現実が増えてきています。このように、人口動態と空き家問題はリンクしています。

首都圏集中に加速がついている

都道府県別に人口をみれば、東京都は1400万人を超え、全体の約11%が住んでいます。首都圏1都3県に住む人口は約3700万人でこれは全人口の約3割となっています。人口増加の実数をみれば、上位は首都圏に集中しており、東京都、神奈川県、埼玉県がベスト3となっています。これを増加率でみれば、東京都、沖縄県、神奈川県となっています。
東京都の人口は、2010→15年でプラス2.7%だったのが 15→20年ではプラス3.9%、神奈川県の人口は、10→15年はプラス0.9%が15→20年ではプラス1.2%、埼玉県や千葉県でも増加幅が増えており、首都圏1都3県へのへの人口集中に加速がついていることが分かります。5年単位での人口増加率が増えているのは1都3県と福岡だけとなっており、人口集中に差がついている状況です。このように人口集中エリアが絞られていく状況は今後も続くと思われ、該当エリアにおける住宅建築、ビルや商業施設の建築なども集中的に行われるものと思われます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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