建物・土地活用ガイド

2021/10/26

いまこそ見直しの好機!企業が所有する不動産の4分類と一覧化

長引く新型コロナウイルスによる影響からか、2021年に入り企業と不動産の関わりについて見直しが行われているようです。今回は、こうした今だから「自社が所有する不動産を見直す」ために「まず何を行うか」、について考えます。

企業が所有する不動産、4つの分類

企業が所有する不動産は2軸で分けることが出来きます。
「お金を生みだす不動産かどうか」という切り口。そして、「企業にとっての位置づけ」という切り口です。

企業が持つ直接的に「お金を生み出す」不動産では、本社や支社支店営業所(オフィス)、工場、店舗などがあります(タイプA)。
また、企業が所有する賃貸物件(ビル、住宅)は「お金を生みだす」不動産ですが、企業の位置づけとしてはコア(核をなす)な不動産ではありません(タイプB)。お金を生みださなくとも、「社宅、福利厚生施設」などは、従業員にとって快適で機能的な職場環境を作ることで、結果的に資産性の向上につながることから、コア不動産としての位置づけとなります(タイプC)。
何も使っていない不動産(遊休不動産)はコアでもないし、お金を生まないものと言うことができます(タイプD)。ただ、遊休不動産は、企業によっては借り入れの担保として組み込まれていることもありますので、その観点からは「お金を生みだす」不動産とも言えます。
しかし、そうでなければ、将来的に使うかどうかを判断して、売却あるいは何らかの活用をすることを考える必要があります。
このように、企業が所有する不動産は2×2の4つに分類することができます。

企業が所有する不動産を一覧化する意義

企業不動産戦略(CRE戦略)は、企業が所有する不動産を最大限有効に活用することにより、「企業価値の最大化」を図ることです。そのためには、上にあげたような企業が所有する不動産の1つ1つがどうかということだけを見ても最適化は図れません。
「工場が古くなったから建替えよう」、「社宅が老朽化してきたから、売却しようか建替えようか」とそれぞれに目が向きがちですが、所有する不動産の全体を見て戦略を考えなければいけないということです。
そのためには、企業が所有する不動産をすべて一覧化して、全体的に精査することが必要となります。場所、広さ、築年数といった不動産についての事から、立地状況、場所の将来性、また簿価、残債、といった財務的な内容と一覧には細かく記載するといいでしょう。

長引く新型コロナウイルスの影響での企業不動産の変化

長引く新型コロナウイルスの影響で、「業績悪化のため、本社ビル売却・・・」というような報道が増えてきました。オフィスビルの利用方法の見直しや郊外移転、業績悪化傾向の企業が本業とは関係のない不動産資産を売却している事例も聞かれます。どちらかというとネガティブなイメージです。
また、「リモートワークの定着を機に、オフィスをダウンサイジングした」という報道も目立ちます。これは、業績悪化ではなく、レジュームチェンジとみた方がいいでしょう。
一方、オフィスを増床している企業もあります。新たに投資用に不動産を取得して、「逆境こそチャンス」とばかりに、勢いづいている企業も見られます。本業とはかかわりのない、賃貸住宅を所有していたことで、コロナショック期の収益下、支えになったという例も見られたようです。

いまこそ、見直しの絶好のタイミング

確実に言えるのは、「このような状況だからこそ、冷静に自社が所有する、あるいは使用している不動産を見直そう」という動きが、日本中の企業の間で広まっているという事です。ここで言う、見直すとは、「手放す」という選択だけでなく、「増やす」の選択も含めた、不動産のかかわりを精査することです。

企業は不動産とかかわりを断つことはできません。いまのような時世は、「企業にとって不動産とは何か?」を改めて考え直す時なのではないかと思います。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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