建物・土地活用ガイド

不動産市況・最新トレンド賃貸住宅経営の基礎知識

2021/09/14

賃貸管理会社が見る、賃貸住宅市場の現状

賃貸住宅経営と管理会社

賃貸住宅経営が始まると、ほとんどのオーナー様は管理会社(PM会社)に、賃貸住宅運営にかかる多くを依頼します。これは、個人オーナー様でも企業が所有する場合でも同様です。時間が取られるから、よくわからないから、という理由の方もいらっしゃいますが、「やはり専門家に任せた方が安心」という考えからの方(企業)が多いようです。松建設においては、主に高松エステート(株)がこうした業務を請け負っています。

賃貸住宅における管理会社の役割を整理しておくと、物件の管理(維持管理・清掃・メンテナンスなど)の他、入居者管理(家賃、その他トラブル対応)という管理業務に加えて、入居者の斡旋、退去時の対応なども行います。入居者の斡旋については、管理会社が自ら行いつつ、提携している賃貸斡旋系企業と連携しつつ行われることが多いようです。
いま列挙したように、賃貸住宅経営にかかわる多くの事を依頼しますので、必然的に管理会社との関係は、建物を建てる建設会社と同じかそれ以上に密となります。

管理会社は日々、入居者の方々や賃貸物件を探している方々と接しているわけですから、賃貸管理を請け負う企業は、賃貸住宅における現状を肌で感じる立場にあります。
こうした管理会社は、現状の賃貸住宅市況をどうとらえているのでしょうか?

賃貸住宅管理業社へのアンケート調査

(公財)日本賃貸住宅管理業協会(通称、日管協)は、多くの賃貸住宅管理会社、賃貸住宅斡旋会社が1668社(2020年9月現在)加盟している団体で、加盟社が管理する戸数は約830万戸(2020年9月現在)あり、日本最大級の賃貸住宅管理業の団体です。
この日管協は、年に2回、同協会の正会員に対しアンケートを行っており、それらを集計・分析したものが、賃貸住宅景況感調査「日管協短観」です。
この「日管協短観」の最新版が21年6月に公表されました。この調査レポートから、賃貸住宅市場における「現場の肌感覚」を見てみたいと思います。(注:本調査は、第25回日管協短観、調査対象は2020年度下期(2020年10月〜21年3月)、調査期間は21年4〜5月です。)
このアンケートは、かなりの項目・分量になっています。以下では、賃貸住宅経営を行う方が最も気になるであろう、「入居率」と「家賃」の項目について見てみます。


入居率と成約賃料の現状

1)入居率について
入居率については、「委託管理」冒頭に述べた通常管理業務と管理会社との間でマスターリース契約を結ぶ「サブリース」の2つに分けて調査が行われています。(注:調査結果は、首都圏・関西圏・その他・全国に分かれています。)
2020年度上期(4月〜9月)に比べて、2020年度下期(10月〜3月)は、委託管理、サブリースとも、首都圏と関西圏で入居率が上昇しています。首都圏のサブリースは2020年上期96.5%→97.7%に、関西圏では97.9%→98.8%となり、極めて高水準となっています。サブリースは全国の数字でも98%の入居率と高い値を示しています。
委託管理では、20年度上期よりのびているものの首都圏が92.3%→95.3%、関西圏は93.7%→94.5%、全国では92.6%→93.5%となっており、全て前期比を超えており、入居率は好調が続いています。
このように、近年新規供給賃貸住宅が減っているものの、賃貸住宅需要は旺盛で、入居率は増加したものと思われます。

2)成約賃料
成約賃料では、全国では大きな変化が見られませんでしたが、首都圏では全体的に賃料増加の気配が感じられます。特に、2LDK以上の物件が賃料増加傾向にあるようで、所有マンションを高値で売り、一時的に賃貸住宅に暮らす方が増えた事や、リモートワークが進み、住まいのあり方を変えた方が見られたためと思われます。また、関西圏ではとくに1RやLDKタイプに賃料上昇のキザシが見えています。全般的に見ると、全国的にどの間取りも成約賃料は、今後上昇の可能性が高くなっていると言えそうな状況です。また、値引き等の要請も少なくなっており、貸し手有利の状況が続いています。


まとめ

このように、管理会社の現場の肌感覚では、空室率はかなり少なくなっており、賃料は上昇基調にあることがうかがえます。賃貸住宅経営における2つの大きなリスクは、空室リスクと賃料下落リスクです。現状では、これらのリスクはかなり低くなっていると言えるでしょう。つまり、現在の賃貸住宅需要はかなり旺盛で、この傾向はしばらく続きそうだと言えるでしょう。
ただし、これは全国津々浦々ということではありません、世帯数が大きく減少している地域など、賃貸住宅需要の伸びが期待できないエリアもあるので、賃貸住宅経営を行う前に「該当エリアでの今後の賃貸住宅需要の予測」を事前に確認しておくことが大切です。
賃貸住宅需要については、世帯数の現状と動向、今後の世帯数の予測などからも判断できます。しかし、現場で日々入居者の方々と対峙している管理会社の「肌感」からも、多くの事が見えてくるものと思います。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

疑問に思うこと、お困りごとなど、まずはお気軽にご相談ください

  • ご相談・お問合わせ
  • カタログ請求

建築・土地活用ガイド一覧へ