建物・土地活用ガイド

2021/09/03

アパートとマンションの経営における違いとは

将来的な土地活用の手段の1つとして賃貸住宅経営を考えている方は多いことでしょう。そんな“将来の大家さん”が悩むポイントとして挙げられるのが、賃貸住宅をアパートにするかマンションにするかの選択です。アパートとマンションとでは建物の規模感や収益性など大きく異なるため、双方のメリット・デメリットをきちんと把握したうえで、その土地に合った賃貸不動産を選択することが重要になります。アパート経営とマンション経営の違いはどこにあるのでしょうか。

アパートとマンションの違いとは?

まず多くの方が疑問に思っているのは、「そもそもアパートとマンションは何が違うのか」ということではないでしょうか。実は各概念についての細かい規定は建築基準法上にも存在しません。ただ、ごく慣用的に木造やプレハブ造、軽量鉄骨造で建てられた低層階(概ね3階くらいまで)の居住用賃貸物件をアパート、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造、鉄筋鉄骨コンクリート造で建てられた高層階の居住用賃貸物件をマンションと呼ぶのが一般的です。

小規模だとアパート、大規模だとマンションと規模感で捉えられがちですが、それはあくまでもイメージであって、双方を隔てるポイントは基本的に構造になります。したがって構造を確かめることで世間一般的な「アパートorマンション」の認識を理解することができるでしょう。

ただし、都内港区の商業ビル「表参道ヒルズ」がある場所に、2003年まで建てられていた「同潤会青山アパートメント」は鉄筋コンクリート造であったにもかかわらず、「アパート」と呼ばれていました。これは、マンションという名称がまだ一般的でなかった1926年当時に建てられたことに起因しますが、それぞれの呼び名はオーナーによるところも多いのが現状です。アパートと言いながら、一般的な基準で言えばマンションに該当する建物も世の中にはたくさんあります。

項目で比較するそれぞれのメリット・デメリット

それぞれの建物の分類について整理したところで、次はアパート経営とマンション経営のメリット・デメリットを比較しながらその違いを確認しましょう。

アパート 比較要素 マンション
木造造や軽量鉄骨造は、相対的に建物の耐用年数が短い。 資産価値の維持性 重要鉄骨造や鉄筋コンクリート造は耐用年数が長く資産価値を維持しやすい。
新築は工法・仕様その他により異なる。中古は市況により異なる。概ねマンションよりも高いことが多い。 利回り 新築・中古ともに4%程度。
投資額に土地価格が含まれるケースが多く、その場合は減価償却費の占める割合が低くなるためマンションと比較すると節税効果は低くなる。

節税効果

損益通算により、給与所得または事業所得から不動産所得のマイナス分を差し引くことができ、結果として課税の対象となる所得が少なくでき、納税額を減らすことができる。
アパート建築会社や販売会社の関連企業(不動産会社)が賃貸管理サービスを提供していることが多く、煩わしい業務をまとめて委託できることが多い。 管理のしやすさ マンションの販売元である不動産会社が賃貸管理サービスを提供していることが多く、煩わしい業務をまとめて委託できることが多い。
1棟あたりの規模感がマンションより小さいため、リフォームや修繕の意思決定をしやすい。 意思決定のしやすさ 部屋数が多いとその分、リフォームや修繕などの決断はアパートよりも難しいものになる。
ほとんどが木造のため鉄筋コンクリート造、鉄骨造のマンションに比べ耐久性は低い。また、税法上の減価償却期間は22年。 耐久性 鉄筋造、鉄骨造のマンションは木造のアパートに比べ耐久性において優れている。税法上の減価償却期間は鉄筋コンクリート造47年、鉄骨造34年。
マンションに比べ耐火性で劣る木造建築であるため、火災保険料も高くなる傾向にある。地震や風災害によるダメージもアパートのほうが大きい。 火災・ 天災リスク 鉄筋コンクリート造・鉄骨造だけに耐火性もあり地震や風災害にも強く、受ける被害も最小限に止まることが多い。
耐久性が低い木造建築のため売却価格が安値になることはある。 出口戦略の手堅さ 耐久性が高いので資産価値の下落も穏やか。場合によっては購入時より高値で売却できることも。

所有する土地に合う賃貸不動産を

アパート経営とマンション経営は、いずれの特徴も一長一短であり、どちらがより有利かは一概に言えません。ただ、1つ言えることは、所有されている土地のポテンシャルをより引き出せる賃貸不動産を選択すべきだということです。

もちろん、ご自身の事情や賃貸経営にどれだけ深く関わりたいのかという意思を尊重することも大切であり、もともとの所有する土地の大きさによって活用すべき最適な賃貸不動産は異なってくるでしょう。いずれにせよ、ご自身の性格や将来設計なども勘案して、どちらが相性のよい賃貸経営を検討するのがベストだと言えます。

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