建物・土地活用ガイド

2023/01/05

有効活用が見込まれる都市部の社宅・寮

東京や大阪など都市部には、かつては老朽化したあまり使われていないような企業の社宅・寮が多く存在しました。住宅、店舗、オフィスなどが集中する都市部では有効な土地利用が求められ、福利厚生施設である社宅・寮もその土地に見合った活用が必要です

都市部の寮や社宅は減少・廃止の傾向に

民間調査機関の財団法人労務行政研究所によると、バブル好況に沸いた1990年代の日本では各企業が社宅・寮の充実を図っており、社有社宅の保有率は上場企業の約7割に達しました。終身雇用が当たり前の時代では、そうした社員の福利厚生を充実させるための施設が多く建てられました。しかし、バブル崩壊からしばらく経ち2000年代に入ると「持たざる経営」がもてはやされ、2008年の調査時点では保有率は36.3%にまでに減少しました。

再び脚光を集める、新しいタイプの社宅

社宅・寮は近年再び見直され、徐々に復活しています。しかし以前のように単純な福利厚生施設ではなく、緊急事態時のセンター機能を持たせる社員寮や、一部を賃貸住宅として社外の人に貸す「収益の上がる社員寮」など、「新たな時代の社宅」が増えています。

一方で、社員寮・社宅については賛否両論があります。
社宅・寮は使用料が民間の賃貸物件に比べて格段に安い点が大きなメリットであり、特に独身や子育て世代などの若手層にとっては受ける恩恵は小さくありません。しかし、以前に建てられた社宅・寮の老朽化が進んでいることもあり、そうした一時代前の社宅・寮があまり好まれなくなる傾向が強くなってきました。また、プライベートを重視する現代においては、勤務時間外で会社の人と会う可能性のある社宅・寮を敬遠する方も増えているそうです。

立地の良さを活かした活用が必要

社宅・寮は社員の生活を充実させるための福利厚生施設であるだけに、利用者が少ない状況では宝の持ち腐れと言えます。それどころか、空室が多く非効率な物件になっている場合は、維持費だけがかさみ、企業にとっての不良債権にもなりかねないのです。そのため、特に土地としての利用価値が高い東京や大阪などの都市部にある社宅・寮は、有効的な土地活用を検討すべきでしょう。

土地活用の手段としては建替えや売却などの方法が挙げられますが、立地の良さを活かしたアイディアに基づく土地活用を行うことが重要です。たとえば、閑静な住宅地に構える社宅・寮の場合は、賃貸住宅としての需要が見込まれます。既存建物の建替えやリノベーションを行うことで、トレンドを重視した若者ウケする賃貸住宅に変貌させることもできるでしょう。
また、都市部の商業地区の近くの人気エリアなどであれば住宅ではなくオフィスビルを建築し、ショップなどのテナントを入れつつ、企業の誘致をすることも可能です。空室が多いまま休眠住宅となってしまった社宅・寮をそのまま放置するくらいであれば、その土地のポテンシャルを十分に見極めたうえで、売却したり、賃貸住宅やオフィスビルを建築したりすることでの有効活用となるでしょう。

有効活用のためにアイディアを絞ることが大切

また、社宅・寮として継続して活用する場合も、以前までの老朽化した状態ではなく、時代に合わせた設備とすることが重要です。たとえば、近年では多発する地震などの自然災害に対応するために、企業の災害拠点を併設した先進的な社宅も登場してきています。社宅・寮が時代に合っていないというわけではなく、現在のスタイルに合った在り方を考えた上で建物を建築、またはリニューアルすることが重要になります。高松建設でもこうした企業のサポートを数多く行っています。

■松建設の社宅・寮の建築・建替え事例 ※社宅から賃貸マンション・駐車場から社員寮・新築本社+社員寮・社員寮+研修施設などさまざまな建築、建替え事例がございます。事例についてお問合せの場合はお問合せフォームより気軽にご相談ください。

立地の良さを活かしてマンションなどの賃貸不動産として活用したり、あるいは先進的な社宅・寮へのリニューアルをしたり、または思い切って売却したりするなど、土地の価値を最大限に活かすことが重要となります。

老朽化した状態のままで入居者が減少し、本来の存在価値を発揮できていない社宅・寮はまだ多少存在しています。しかし、採用を上手くするための対策として福利厚生の充実を図り、社宅・寮の新築や建替を検討している企業も依然としてあるだけに、ニーズを意識した土地活用が重要なことは言うまでもありません。社宅・寮の有効活用が実現できれば自ずと社員の住環境も整備でき、人材が集まりやすくなることで事業活動もより活況を呈するはずです。

監修 : 吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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