建物・土地活用ガイド

2026/05/22

政策金利据え置きと長期金利の大幅上昇が不動産市況に与える影響

2026年4月27日から28日に開催された日銀金融政策決定会合において、政策金利は0.75%のまま据え置きとなりました。
これで3会合連続の据え置きとなり、2025年12月に0.75%に引き上げられて以降、次回の同会合が開催される6月まで少なくとも半年間、政策金利が横ばいで推移する見通しです。

ご承知の通り、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇や、石油由来の製品(ナフサなど)の価格の急上昇(あるいは出荷制限)などにより、インフレ率が再び上昇しています。

政策金利の動向

政策金利は据え置きとなりましたが、各シンクタンクなどの予想では年度内に1回以上の利上げが見込まれています。
日銀による政策金利の変更は0.25%刻みで行われているため、年度内に1回利上げがあれば政策金利は1.00%に、2回とすれば1.25%になります。

現在想定されているターミナルレート(最高到達点)は1.25%との見方が多くなっていますが、中には1.75%という予想もあります。インフレ傾向は収まる兆候がなく、原油価格の高騰からさらにインフレ率上昇の可能性が高まっています。
特にコストプッシュ型の物価上昇が顕著な状況下では、日銀の政策判断は一層難しくなると考えられます。

展望レポート

4月28日には日銀展望レポートが公表されました。
日銀展望レポートは金融政策決定会合に合わせて毎年1・4・7・10月に公表される、今後の物価の見通しなどに対する日銀の展望を描いたものです。
今回公表された展望レポートの冒頭に記された概要の一部を引用すると、以下の通りです。

「先行きの日本経済を展望すると、2026 年度については、中東情勢の影響を受けた原油価格上昇が、交易条件の悪化などを通じて企業収益や家計の実質所得に対する下押し要因となることから、成長ペースは減速すると考えられる。もっとも、企業部門で高準の収益が続いてきたことなどに加え、政府による各種施策や緩和的な金融環境などが経済を下支えするため、わが国経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみられる。
物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きが続くもとで、原油価格上昇が、エネルギー価格や財価格を中心に押し上げ方向に作用することから、2026年度は2.00%台後半になると予想される。」(引用ここまで)

物価上昇の見通しについてですが、前回(2026年1月)公表された展望レポートでの「2026年度のコアCPIは+1.90%」から、今回のレポートでは2.80%に大幅に上方修正されました。
中東情勢の状況次第で変わるとは思いますが、長期化すれば物価に対してさらに大きな影響を及ぼす可能性が極めて高いと考えられます。

長期金利の動向

長期国債金利(10年もの)は、ちょうど中東情勢悪化した2月下旬以降、上昇を続けており、4月30日午前の時点で一時2.50%を超え、この先もまだ上がりそうな状況です。
国債金利が3.00%を超える水準になれば、生命保険をはじめとする安定志向の機関投資家にとっては、安全・安心に3.00%の利回りを確保できることになります。そのため、国債金利が3.00%に向かう中で、徐々に資金をリスク投資から一定割合を国債へ振り向けることになる可能性が高まります。

生命保険各社のコメントの中には国債への振り向けについて慎重なものもありますが、その動きは不動産投資分野に少なからず影響があると思われ、キャップレート(期待利回り)の押し上げ圧力が高まります。
しかしここ数年は賃料上昇が続いており、これらの影響が相殺されている状況と考えられます。

不動産投資のイールドギャップ

大都市部の不動産投資の利回りは物件にもよりますが、3.00%台前半から半ばで推移しており、長期国債金利とのイールドギャップ(※)はすでに「1.00%あるかないか」という状況となっています。
このイールドギャップは、不動産投資におけるリスクプレミアムということになりますが、日銀が2026年4月に公表した「金融システムレポート」(年2回公表)によれば、商業用不動産のイールドギャップは、世界の主要都市ではロンドンがマイナス、香港がプラスマイナスゼロ付近であり、それに次いで低いのが東京とされています。そのため東京の不動産は「だいぶ割安感がなくなっている」という状況といえそうです。

※【イールドギャップ】
不動産の期待利回りから安全資産の利回りである長期金利を差し引いた差。投資家がリスクを取ることに対するリスクプレミアムの大きさを表し、数値の減少や差の縮小に伴い、投資効率や市場の割安感が低下していると判断される指標。

まとめ

出口が見えそうで見えない中東情勢により、物価の先行き不透明感がある状況ですが、そのような中で日銀は政策金利を据え置くことを決めました。
一方、長期国債金利はインフレの長期化予想だけでなく、政府の積極財政策や日銀の買い入れ額減少も背景に上昇が続いています。
インフレ率が上昇するということは、アセット価格(たとえば株価や不動産価格)の上昇につながります。
「資産を保有しているかどうかで豊かさが決まる」という社会が良いかどうかの判断は難しいですが、そのような社会に向かっていることは間違いないでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

建築・土地活用ガイド一覧へ