
日本における空き家問題は、近年ますます深刻な社会課題となっています。
総務省が2024年4月に公表した「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月時点)によると、全国の空き家総数は約900万戸(正確には899万戸)に達し、過去最多を更新しました。
住宅総数に占める空き家率は、10年前(2013年)の調査と5年前(2018年)の調査からほとんど増えていませんが、13.8%と過去最高水準です。
これは、国内のおよそ7軒に1軒が空き家ということになります。
空き家と聞くと、「放置された家」(=その他の空き家)というイメージが強いですが、実際には販売中の物件や賃貸住宅の空き家も含まれます。
空き家のうち、特に問題とされているのが「放置空き家」(=その他の空き家)です。
賃貸・売却用や別荘などを除いた、長期にわたって不在で使用目的のない空き家は2023年時点で約385万戸にのぼり、2003年から20年間で1.8倍に増加しています。 放置空き家率も5.9%と過去最高水準を記録しました。
都道府県別に見ると、空き家率が最も高いのは和歌山県と徳島県で21.2%に達しています。次いで山梨県(20.5%)、鹿児島県(20.4%)、高知県(20.3%)が続きます。地方圏を中心に高い空き家率が見られ、都市部との二極化が鮮明になっています。
一方、空き家率が相対的に低い都市部でも、郊外などでの賃貸住宅の空き家、老朽化したマンションの空き家などが増えており、空き家問題は過疎地域だけにとどまらず全国的な課題となっています。
地方と都市部で異なる空き家数が増える要因
空き家が増え続ける背景には、様々な要因があります。
ご承知の通り、日本の人口は減少期に入っています。出生数が少なく、死亡数が増えているためです。
その結果、居住者が亡くなったり、高齢者の方が施設へ転居したりすれば、必然的に住宅が空き家となります。その結果、適切な手入れがされず老朽化するケースが増加しています。
また、相続によって所有者がご子息などの親族に変わっても、活用・売却されないまま放置される住宅が増えています。特に相続人が都市部に居住している場合、地方の実家を維持管理することが難しく、そのまま空き家になるケースが多く見られます。このケースは地方の空き家問題の典型と言えます。
一方、都市部では特に中心市街地での再開発が進んでおり、「放置された空き家」の類は減少しています。その一方で、建築の進む賃貸住宅において、賃貸住宅需要が十分でない地域では空き家(=空室)が増える傾向にあります。
また、昨今急増しているのは、都市部の分譲マンションの空き家です。
都市部の分譲マンションの供給数は減少しており、物件によっては高倍率となることも珍しくありません。
そのような状況の中で物件を購入しても、値上がりを期待して入居することなく、そのまま使わない部屋が増加しています。
これは都市型の空き家問題と言えるでしょう。
空き家対策と行政府の対応
政府はこれまでに様々な対策を講じてきました。
特に、前述の地方でよく見られる「放置された空き家」への対応は整備が進んでいます。
すでに導入されており、一定の効果を示していた「空き家対策特別措置法」ですが、2023年12月には改正法「空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」が施行され、管理が不十分な空き家を「管理不全空き家等」に指定し、固定資産税の優遇措置の対象から外すことができるようになりました。従来は「特定空き家等」に指定されるまで優遇措置が続いていましたが、改正法ではより早い段階での対応が可能となっています。
また多くの自治体では、空き家の除去に対して補助金を出すなどの対応を行っており、徐々に効果が出始めているようです。
さらには、自治体による「空き家バンク」の整備も進んでいます。
これは、移住・定住を希望する人と空き家所有者を結ぶマッチングサービスであり、地方への移住促進と空き家の有効活用を同時に推進する取り組みとして注目されています。リノベーションへの補助金制度を設けている自治体も増加しており、空き家の再利用を後押ししています。
都市型空き家への対応
都市型の空き家のうち、新築未入居のまま放置されているような物件に対しては、いくつかの自治体が「空室税(非居住住宅利活用促進税)」のような税の導入を検討しています。また千代田区では、特定の条件を満たす新築マンションにおいては5年間の事実上の転売規制(転売禁止特約の付与)を行うことを公表しています。 これも都市型空き家を減少させることになるでしょう。
今後の空き家見通し
今後、人口ボリュームゾーンの団塊世代が80代に差し掛かることから、人口減少がさらに進むことは確実です。
それは大量の相続が発生し、それに伴い使わない家が増加することにつながる可能性が高くなります。地方だけでなく、都市部においても10年もしないうちに空き家が急増することが予想されています。
こうした事態は、現在好調である住宅市場のネガティブ要因になりかねませんので、行政府・民間企業を挙げての早めの対応が求められるでしょう。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
