建物・土地活用ガイド

2026/02/20

開発が求められる木密地域

江戸時代には「火事と喧嘩は江戸の華」と言われ、江戸の町では大きな火事(大火)が頻発しました。
江戸が東京と名前を変えた後も、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災や、1945年(昭和20年)3月10日の東京大空襲では被害が大きく拡大しました。
その要因の一つは延焼によるものでした。
現在も木造住宅が主流の地域があり、冬は乾燥した日が多くなることから、東京は火事になると消火が困難となり被害が多く出やすい傾向にあります。

戦後80年が過ぎ、行政府は様々な対応を行ってきました。
それでも東京には、ひとたび火災になれば大きな被害が出る可能性のある、木造住宅が密集する地域(木造住宅密集地域)があります。
かつて、戦災によって家を失った方々が被害の少なかった山手線の外縁部等に移り住んだ際、そこでは道路などが整備されないまま宅地化が進んだ地域が多く、現在の木造住宅密集地域となっています。

このような木造住宅が密集する地域の解消に東京都は取り組んでおり、そこには建設会社も技術面などで貢献しているようです。
今回は木造密集地域について考えてみましょう。

木造住宅密集地域とは

木造住宅密集地域は、「木造住宅が密集し、特に老朽住宅の立地割合が高く、かつ道路・公園などの公共施設等の整備が遅れている地域(引用:東京都第二建設事務所発行冊子)」で、略して「木密(もくみつ)地域」とも言われます。

首都圏で大きな地震が発生した場合、こうした地域では建物の倒壊や同時多発的な火災により、大規模な市街地火災が発生するおそれがあります。それは生命の危機はもちろん、緊急活動や物流などの都市機能にも大きな支障を与える可能性があります。
また、木密地域では住宅が「密集」しているために道路が狭く、消防車両が近づくことが困難な場所も多くみられます。

木密地域不燃化プロジェクト

こうした状況を受け東京都は、2012年(平成24年)に「木密地域不燃化10年プロジェクト」を立ち上げました。
特に建物の倒壊や延焼の危険性が高く、老朽化した木造建築物が集まり、災害時に大きな被害が想定される地域「整備地域」を対象に、東京都は特別な支援を行ってきました。
具体的には、不燃化を推進する「不燃化特区制度」の活用や、火災を食い止める延焼遮断帯を形成する主要な都市計画道路である「特定整備路線」の整備を一体的に進めてきました。

この「木密地域不燃化10年プロジェクト」は、当初の期限であった2021年3月末で一旦区切りを迎えました。
しかし、不燃化をさらに加速させるため、不燃化特区制度の活用や特定整備路線の整備といった主要な取り組みについては、2025年度(令和7年度)末まで5年間延長が決まり、現在も継続されています。

なお、この延長期間における支援内容やプロジェクトの詳細についてはこちらをご覧ください。

木密地域での解決策

木密地域における火災等の災害防止策は、前述した不燃化プロジェクトを中心に行政の手によって進められています。しかし、こうしたインフラ整備が進んでも、個々の住宅が密集する状況が完全に解消されるわけではなく、他にも多様な解決策が模索されています。

例えば最もシンプルな方法は「個別の住宅の建て替え」ですが、それ以外にも複数の住宅を一体的に建て替えて「共同住宅(マンション等)」にするという解決策もあります。

さらに街づくりそのものを刷新する「再開発」という抜本的な解決策もあります。
これは、木造住宅密集地域の市街地における防災機能の確保等を図ることを目的として、老朽化した建築物を除去し(居住者の権利関係の調整が必要となります)、最新の防災機能を備えた建築物(ビルやマンション)などを整備するというものです。

最後に

発生確率が高まっている首都直下型地震。
発生時の風などの気象条件次第では、木密地域で甚大な被害が出ることが想定されています(東京都資料)。そのため、対応は「待ったなし」の状況と言えるでしょう。しかし、まだまだ対策が進んでいるとは言い難い状況のようです。

松建設でも技術面での貢献はもちろん、再開発のPM(プロジェクトマネジメント)担当としての貢献など、これまでの実績を基に貢献できる分野だと考えています。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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