
2026年2月8日投開票の衆議院議員選挙では「物価高対策」が大きな焦点となりました。
物価高が続く中で賃金が上昇しなければ、国民生活は苦しくなりますので、政治課題としては最重要項目となります。
政府が物価の安定や賃金の上昇を目指した政策を打ち出しているのはそのためです。
我が国は過去30年程度、大きな物価上昇を経験してきませんでしたが、2022年以降は2%〜3%を超える物価上昇が続いています。
資本主義経済において、長期間物価が上昇しないことは好ましくありませんが、一方で上がり過ぎるのも生活に支障をきたします。
こうした事態を避けるべく、日銀は安定化のための政策を図っています。
物価上昇の下では不動産価格も上昇します。
今後の物価上昇の見通しを考慮したうえで、2026年の不動産市況を考えてみましょう。
物価上昇の現状
まず、現在の物価上昇の状況を考えてみましょう。
■消費者物価指数(コアCPI)全国・東京都区部(前年同月比)

(総務省統計局「消費者物価指数」より作成)
こちらのグラフは、総務省が公表している2つの消費者物価指数(全国と東京都区部)のうち、生鮮食品を除いた「コアCPI(コア指数)」の2022年からの推移を示しています。 これによると、物価上昇は2022年4月頃から始まり、その後も収まることなく継続しています。
2025年の状況を見ると、2%台半ば〜3%台半ばで推移していることが分かります。
2013年に政府と日銀は「安定的に2%程度の物価上昇を目標とする」ということを掲げて金融緩和政策を推進しましたが、現在は概ねその状況下にあると言えます。
物価上昇の見通し:最新日銀展望レポート
日銀は年に8回金融政策決定会合を開催し、政策金利など金融政策を決定します。そのうち、1・4・7・10月の会合後には「経済・物価情勢の展望」(日銀展望レポート)を公表します。
最新の展望レポートは2026年1月23日に公表されました。(会合は1月22・23日の2日間開催、展望レポートの本文は1月24日に公開)
これによると、2026年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しは+1.9%とされ、前回(2025年10月)より+0.1%としました。
過去の展望レポートを振り返ると、2026年の見通しは1.9%→1.9%→2.0%→1.7%→1.8%、そして今回は1.9%と大きな変化はなく、2026年も概ね2%程度の物価上昇が見込まれるということになります。
また、2027年度の見通しは+2.0%(前回と同値)となっています。ただし、今後は食料品等の消費税が減税される方針が示されたことなどにより、政策的に上昇が抑えられる可能性もあります。
政策金利は1.25%まで上昇の可能性
このような見通しから、金利のベースとなる政策金利には上昇の余地があります。2%の物価上昇見通しであれば、ターミナルレートは1.5%程度を予測するのは必然ですが、需要の冷え込み懸念を考慮しても1.25%(つまり年度内に2回の金利上昇)の可能性は十分にあるでしょう。
しかし、消費者物価指数が2%上昇の状況下での1.25%の政策金利ですので、実質金利はマイナス圏内にあるということになります。そのため不動産市況には大きな影響はないものと思われます。
ただし、金利上昇に伴う不動産に対するネガティブ報道があるかもしれません。
物価上昇と不動産価格
「不動産価格」と一口にいっても価格のボラティリティ(価格変動の激しさ)の大きい都市部のマンション価格もあれば、上昇下落がゆっくりとした地価もあります。 ここでは消費者物価指数と地価の動向を比較してみます。
■消費者物価指数(全国コアCPI)と地価公示上昇率(全国全用途平均)の比較)

(国土交通省「地価公示」・総務省統計局「消費者物価指数」より作成)
こちらのグラフは、消費者物価指数(全国コアCPI)の各年平均(2025年は10月まで)と地価公示における全国全用途の変動率を重ねたものです。これを見ると、物価上昇と地価上昇のグラフが概ね連動していることが分かります。
このことから全国平均の地価動向を見る限り、現在の不動産市況は物価上昇並みの推移ということになります。
もちろんエリアにより大きく異なりますが、バブル期は物価上昇が4%程度だったのに対し、地価上昇は10%以上ありましたので、当時のようなバブル感はないと言えるでしょう。 もっともこれは地価のことであって、昨今のマンション価格はそれを上回る上昇率です。
こうして見ると、インフレ基調は少なくとも数年は収まることはなく、不動産市況もマンションなどは価格調整局面を迎えるかもしれませんが、全体的な市況感は2026年も概ね良好だと思われます。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
