
2026年1月30日に2025年12月分と2025年年間合計の新設住宅着工戸数が公表されました。
2025年4月に建築基準法改正が実施されたことを振り返ると、2025年の新設住宅着工戸数は3月に大きく伸び、4月以降は反動で減少するという状況となりました。
今回は2025年の新設住宅着工戸数の動向と2026年の見通しについて考察します。
2025年年間の新設住宅着工戸数の概要
国土交通省は2026年1月30日に2025年12月分と2025年年間合計の新設住宅着工戸数を公表しました。
2025年年間の新設住宅着工戸数は74万667戸で前年比-6.5%、3年連続の減少となりました。
カテゴリー別に見ると、持ち家(自己所有の土地に自宅の建築)は20万1285戸で前年比-7.7%(4年連続のマイナス)、貸家(主に賃貸用の住宅)は32万4991戸で前年比-5.0%(3年連続のマイナス)、分譲住宅(分譲戸建てと分譲マンション)は20万8169戸で前年比-7.6%(3年連続のマイナス)となっています。
■新設住宅着工戸数 (年計)(上段:実数 下段:前年比)

(国土交通省「住宅着工統計」より作成)
上の表は、2018年から2025年の8年分の新設住宅着工戸数の年計をカテゴリー別に見たものです。これを見ると2023年以降、全てのカテゴリーで前年比マイナスが続いていることが分かります。総数(総計)はこの8年間で約94万戸から約74万戸へ約22%と大きな減少となっています。
新設住宅着工戸数 かつては100万戸、今は70万戸
新設住宅着工戸数の総数(総計)を見ると、2008年までは100万戸以上を維持していました。しかし、それ以降は100万戸台を回復することなく、コロナ禍だった2020年に90万戸を切りました。その後、多少回復しましたが、2024年には80万戸を切りました。
このままのペースでいけば、遅くとも2030年までには70万戸を下回ることは確実でしょう。
2025年の新設住宅着工戸数を月別に見ると、2025年4月に建築基準法の改正があり、そのため2025年3月に駆け込み的に大きく数字を伸ばしましたが、4月以降はその反動減が続きました。
「持ち家」新設住宅着工戸数の動向
所有する土地に自宅を建築する「持ち家」の件数は、4年連続のマイナスで何とか20万戸をキープしたという状況です。2021年比では約30%のマイナスで、1960年代の水準となっており、今のペースで減少すると2026年は20万戸を切りそうな状況です。
各ハウスメーカーは、注文住宅事業ではかなり苦戦しているようです。
注文建築の建築費は上昇を続けており、同じ床面積でも建築費用は1.5倍以上となることも珍しくなく、「富裕層だけが建築できる」というような状況です。
一方で富裕層をうまく取り込めているハウスメーカーは、受注単価は上昇していることで、建築数は減少しているものの請負金額の落ち込みはそれほど大きくないようです。
前述のように2025年4月に建築基準法の改正があり、省エネ基準適合の義務化や小規模木造住宅でも構造安全性基準の向上、省エネ計算などが導入されました。そのための駆け込みが2025年3月にあったため、3月分は前年同月比で+37.9%となりました。
しかし、その反動は大きく、2025年4月から8月は前年同月比2桁のマイナスが続き、以降12月まで全て前年同月比マイナスとなりました。
その結果2025年は月別では3月以外全て前年同月比マイナスとなり、苦戦の状況が伺えます。
この先も注文住宅の建築数は減少することが予想されており、各社は減少し続ける中での事業展開が求められるでしょう。
「貸家」の新設住宅着工戸数の動向
「貸家」の着工戸数は、ここ数年は僅かに減少していますが、2021年比では微増と安定しています。個人の投資家だけでなく法人による賃貸住宅投資が進んでいることが背景にあります。
持ち家と同じく、建築費の高騰というネガティブ要因がありますが、期待利回り(キャップレート)の推移を見ていると最低水準が続いており、投資意欲の高さが伺えます。しかし2025年に微減となったのは、貸家建築の需要はありながらも賃貸住宅用適地が不足していることが背景にあると考えられます。
月別に見ると、持ち家と同じく建築基準法の改正前の駆け込み需要があり、2025年3月は前年同月比でプラス51.2%となりました。特に木造系の賃貸住宅では改正前と後で大きく変わることが要因でしょう。
なお2025年2月・3月・10月は前年同月比でプラス、それ以外はマイナスとなっています。
2026年の新設住宅着工戸数の見通し
金利の上昇と建築費の上昇は、この先も続くことが予想されます。
そのため、特に持ち家の新設住宅着工戸数は引き続き低調が続くことが予想され、20万戸を切る可能性は極めて高いと思われます。20万戸を切ることになれば、大きなニュースとなることでしょう。
2026年の貸家(賃貸住宅)の建築戸数の見通しでは、長期金利の上昇と建築費の上昇がネガティブ要因となりますが、その一方で家賃上昇というプラス要因もあり、今年並みか、微減ということになるでしょう。
ただ先に述べたように、賃貸住宅適地の不足が続くことになりそうで、やや減少する可能性が高いものと思われます。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
