
企業が事業拡大・価値最大化を図るために生産拠点(オフィス・倉庫・工場・店舗など)を強化する際は、一般的にはまず土地を探すことから始まります。 しかし昨今のように長期にわたる不動産好景気が続き、不動産価格が上昇している状況下では「求めるエリアに売土地がない」あるいは「あっても非常に土地価格が高い」という状況となっています。そのため「売土地を探す」だけでなく、「借地を探す」という選択肢を取る企業が増えています。
『いまさら聞けないCRE用語』の第3回目は、「借地」をテーマに用語解説をお届けします。
【借地と借地権】
借地とは借りた土地のことを指します。一方、借地権はその土地を使用する権利で、その地に建物を建てる事を目的とした権利です。借地人や地主との間で定めた月額賃料(地代)を払い土地を使用する権利を得ます。
たとえば駐車場や資材置き場等として利用するといった「建物を建てる目的でなく土地を借りる」場合は賃借権であり「借地権」ではありません。 またこの借地権は地主の承諾を得れば売買することが出来ます。もちろん借地権を相続することもできます。
借地権がついた土地の地主は「底地権」を保有していることになります。
【定期借地権】
1992年に借地借家法が改正され、新しく「定期」借地権という概念が導入されました。
それまでの旧法(旧借地法)では借地人が地代の支払いを継続している限りにおいては事実上、半永久的に土地が返ってこないような事例が多く、所有者が土地を将来に渡り活用できないことになり借地の供給自体も減少しました。
そこで新法つまり借地借家法では「定期」の借地権制度が創設され、一定の約定期間が経過すれば必ず土地が返ってくる借地権が創られました。
借地借家法によって創設された定期借地権は以下の3種類です。
@ 一般定期借地権
A 事業用定期借地権
B 建物譲渡特約付借地権
【事業用定期借地権】
3つの定期借地権の中でCREに関係が深いのは事業用定期借地権です。
事業用借地権は事業のため店舗・工場・倉庫等に使う建物の所有を目的に、10年以上50年未満で設定される借地権のことを指します。
基本的には契約の更新はなく期間満了時に建物を解体し、更地にして戻すこととされています。契約に際しては公正証書を作成しておかないと契約は無効となります。 また50年以上の契約は次項の一般定期借地権となります。
土地所有者(貸す側)としては長期定期収入(地代)が入り、期間満了後は土地が返還される安心があります。
一方、企業などの借りる側としては土地を長期間借りることができ、事業計画を立てやすくなります。建物を解体して返還するので、その費用を見越しておくことが大切です。
この定期借地権を結んでの建物建築は、ロードサイド店舗などで多く見られます。
久しぶりにその道を通過すると「あの店舗、閉店したんだ」と思うことがありますが、収益悪化で短期に閉店することもあると思われます。ただ多くはこの定期借地権に基づき、期間満了で閉店するケースが多いと思われます。
【一般定期借地権】
一般定期借地権は契約期間は50年以上とする必要があり、長期的な借地権の設定となります。また借地権の上に建つ建物の用途制限はありません。そのため事業用でない住宅やマンション・社宅等の建築も可能です。期間満了時には上記と同じように建物を解体し、更地で返還することになります。
大都市部では定期借地権でのマンション分譲の例が見られます。50年以上の借地権ですので、60年や70年という設定になっているようです。
土地含めてとわかるようにマンションを購入すれば、管理費・修繕積立金を毎月支払いますが(+土地の固定資産税)、定期借地権型のマンションでは、加えて地代と解体用の積立金を毎月支払います。一方で土地の所有権がない分、購入金額は安くなります(固定資産税を払わなくてもよい)。
松建設のオフィス建築
松建設はCRE戦略のパートナー企業として、最適な不動産戦略の相談から始まる決して建築だけではない「CREの専門企業」として数多くの企業をサポートしてきました。
こちらよりご覧ください。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
