
法人が保有する賃貸住宅が増えています。
今回は、賃貸用住宅を保有する企業が増えている背景を考察します。
法人の2割以上が賃貸用住宅を保有
最新の令和5年調査の「法人土地統計」によると、法人の社宅・従業員宿舎以外の住宅(つまり賃貸住宅など)の保有件数は34万戸を超え、保有割合は約2割以上となっています。
■法人による社宅・従業員宿舎以外の住宅(賃貸住宅など)の件数推移&割合

(国土交通省「土地基本調査総合報告書」より作成)
グラフを見ると、5年ごとに行われる「法人土地統計調査」で2008年以降急激に増えている状況が分かります。もちろん、この中には賃貸住宅経営のみを行う会社も含まれていると思いますが、2008年には全体の8.4%が2023年には20.2%となり、件数は10.8万戸が34.2万戸となり約3倍となっています。つまり5社に1社の割合で、企業が賃貸用住宅を保有している現状が分かります。
この背景には下記のような要因が考えられます。
@ 賃貸住宅経営のみを行う個人オーナーが法人化する傾向にあること
A 中小企業が本業を廃止し、その地で賃貸住宅を建築し、賃貸住宅経営を行うケースが見られること
B 中堅・大手企業が本業以外の収益源として賃貸住宅を保有するケースが増えていること
企業保有不動産4つの分類
上記Bのケースでは、本業のビジネス環境が目まぐるしく変化するなかで、安定収入を得たいという思惑がありそうです。さらには、融資環境が良い状況が続いていること、賃貸住宅経営の環境が良いことが挙げられます。
また企業の内部留保が増えて、株主のお目が厳しくなっていることから、賃貸住宅へ資金流入が進んでいることも背景として考えられます。
企業が保有する不動産を4つに分けると以下のようになります。
| キャッシュを生む | キャッシュを生まない | |
| コア不動産 | @ | A |
| ノンコア不動産 | B | C |
コア不動産は事業会社が生産活動を行うためのもので、キャッシュを生む@に該当するのはオフィスや工場・店舗などです。生産活動を後方支援する社宅などはAに該当します。また、本稿で解説している事業会社が保有する賃貸用住宅はBに該当し、本業とは関係ないものの(ノンコア)収益を得る不動産です。
業績好調の企業は、@においては本社の建替えや移転を行い、Aでは社宅の新設や改築を行い、Bにおいては賃貸用住宅を新規保有するという流れとなっています。
事業会社が賃貸用物件を所有するメリット
さらに、事業会社が抱える根源的なリスク回避に対応する思惑で賃貸用住宅を保有するということもあるようです。
一定年数が経てば、産業は徐々に安定期(あるいは衰退期)を迎えてきます。
社会人として20〜30年程度働けば、こうしたことは皆さんお気づきのことでしょう。
かつての人気業種は、いつかは人気が薄れ、新たな産業が生まれ、古い産業は衰退していきます。
安定〜衰退期に差し掛かると、企業は新たな事業領域に転換して永続化を図ろうとします。その転換は容易ではなく、また転換には多少の期間がかかります。
しかし、何らかの賃貸用不動産を保有しておけば、転換を図ろうとする間に不動産収入(賃料収入)が得られます。この収入は多少なりともセーフティーネットとしての役割を果たしてくれます。
これは、大企業あるいは中小企業といった区別なく、大きな役割を果たします。
また中小企業では、創業者の年齢が高齢になり、後進に託そうとしてもなかなか見つからない例も多いようです。
しかしその時に賃貸用の収益不動産を持って収入を確保しておけば、「事業をたたんでもいい」という選択肢をとる事もできます。
このように、現在のような好景気で企業の収益性が高い時に賃貸用の収益不動産を所有しておけば、「いざ」という時に役立つものなのになります。
松建設の賃貸用住宅建築
松建設では、これまで多数の法人が保有する賃貸住宅プロジェクトを行ってきました。
こちらよりご覧ください。
ご興味のある法人様は、デベロッパーであり建築会社である松建設にご相談するといいでしょう。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
