
CRE戦略は2010年前後に広まりましたが、2013年以降長く続く好景気を受けて、近年は「第2章」あるいは「2.0」という様相です。
その背景には好景気・株高などを受けて企業業績が好調な事、そして企業の事業展開が進み、オフィスなどの生産拠点(他には工場・店舗・倉庫など)の再編(新築・集約・移転など)が進んでいることがあります。
また不動産価格が上昇しており、保有や利用のコスト(固定資産税や賃料)が上昇していることも「ここでCRE戦略を見直そう」という契機となっています。
さらには上場企業などの大企業では、ESG経営が叫ばれるようになっていることもあります。
そんな中でCRE戦略は多様化しており、単純に「売る」「買う」「建てる=新築する」だけではない手法が増えてきました。
「いまさら聞けないCRE用語」の第2回目は、「多様化するCRE戦略」をテーマに用語解説をお届けします。
【ESG経営】
ESG経営は環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視して経営することで、ESGはそれぞれの頭文字です。 企業の持続的な成長と発展だけでなく、社会的な価値(平たく言えば尊敬・感心される)の向上も合わせて追及することを主眼に置いた経営戦略です。
単に利益を追求するPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)といった財務的な追及だけでなく、環境への配慮(E)・労働環境の向上や多様性の推進(S)・健全な企業統治(G)といった財務的な側面以外にも力点を置いて経営を推進することで、社会的にも投資家からも評価が高まり、長期的で持続的な成長に寄与できる可能性が高まります。
CRE戦略との関連ではオフィスや工場など生産拠点の環境改善などが分かりやすい例で、特に人材採用などでは顕著に効果が出るものと思われます。
【バリューアップ】
保有する不動産を「改修」や「用途転換」などの工事を行い、価値を向上させる施策を指します。これは単なる修繕あるいはリフォームではなく、これらの施策(工事)を実施することで、CRE戦略としては「収益性向上」や「イメージ・ブランド力向上」などの「企業の価値」を高める行為です。
またそれまで活用していなかった土地などを開発する行為もこれに該当します。
【セール&リースバック】
セール&リースバックとは、保有する不動産(あるいはその他動産)を売却して(セール)その売却資金を得た後、同じ物件を賃貸して(リース)使い続ける手法のことです。
資産を売却することで資金が入り、固定資産税などの負担がなくなるだけでなく、バランスシート(BS)が軽くなり、新たな借入がしやすくなります。
またリース費(賃料)は経費算入できますので、利益の大きな企業にとっては節税効果もあります(売却益は事業収益と合算することになり、税がかかることに課税対象となります)。
CRE戦略の一環として、企業がこの手法を用いる事例が増えたのは2000年代に入ってからで、リーマンショック後に増えました。ちなみにアメリカなどでは1930年代から用いられていたそうです。
【BCP (事業継続計画)】
BCPとは事業継続計画=Business Continuity Planの頭文字をとったもので、増え続ける予期せぬレベルの自然災害、近年攻撃が目立つシステム障害などの緊急事態に際して、事業への影響を最小限に抑え、事業の継続や早期復旧を可能にするための計画のことです。
CRE戦略との関連では災害時でも事業が止まらないよう、生産拠点の分散化・配置の見直しがメインとなります。災害時の復旧拠点として社員寮をBCPに組み込む企業もあります。 また起こった危機に対応するだけでなく「自然災害に強い不動産」「耐震性強化」もBCP対応の一部とみなしていいでしょう。
松建設のオフィス建築
松建設はCRE戦略のパートナー企業として、最適な不動産戦略の相談から始まる決して建築だけではない「CREの専門企業」として数多くの企業をサポートしてきました。
こちらよりご覧ください。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
