
不動産会社や建築会社は、企業不動産戦略のパートナー企業として長く関わってきました。企業不動産=CRE(Corporate Real Estate)という言葉は2010年頃から広まってきたようですが、その時期は企業が「不動産とどう向きあえば最大の価値が出るのか」を改めて考えることが浸透してきた時期でもあります。
それから15年以上が経過しましたが、CREについて知っているようでなかなかよくわからないという方も多いようです。
今回は「いまさら聞けないCRE用語」としてまとめて解説します。
【CRE】
企業が保有する(あるいは借りている)不動産は、企業不動産(Corporate Real Estate )といい、その頭文字をとってCREと略されます。
企業活動に必要なオフィス(事務所)や店舗・工場や倉庫・駐車場といった生産拠点となる不動産や、生産活動に従ずる社員が利用する意味では準生産拠点と言える福利厚生施設や保養施設など、また賃貸として貸して収益を上げている不動産、このようなものすべての不動産のことを指します。
「企業不動産を経営戦略の中でどのように活かすか」ということは、「CRE戦略」といわれ呼ばれ、その目的は「不動産の活用によって企業価値を最大化すること」となります。
【PRE】
PREはCREの「C」が「P」に置き換わった言葉で、Public Real Estate「公的不動産」を略したものです。公的機関・国や地方公共団体等が保有する不動産のことです。PREは全国の不動産の中でも大きな割合が存在し、「その運営管理をいかに効率化するか、より有効な活用は何か」を検討することが求められます。特に地方公共団体が保有する遊休地や未利用地の不動産活用、非効率な不動産利用の見直しなどの取組みが進められています。
【中小企業のCRE】
中小企業のCRE戦略とは、中小企業が自社の不動産や資産を最適に管理・活用するための計画や方針を指します。
CRE戦略は大企業に限って必要ということではなく、中小企業の方が大企業に比べてCRE戦略をきちんと描けているかどうかが企業価値向上に直結する傾向にあります。また同族経営が多いことや、経営者個人の資産と会社の資産において担保や連帯保証などが複雑に絡むことが多いため、中小企業の方がCRE戦略の重要性が相対的に高まる傾向にあります。
【生産拠点】
企業不動産は「収益を直接産むか間接的か」、「メインかサイドか」に分類することができます。
「直接収益を産むメイン」はつまり生産拠点ということになります。
企業が保有する不動産の中で最も多いのが生産拠点としての不動産です。
都市部を中心に多く存在するオフィスビルは企業の事務所として使われます。他にも店舗・工場・倉庫(物流施設)・駐車場などがあります。
【寮・社宅】
企業が従業員のために用意した住まいの一種で、主に社員の福利厚生の一環として設置されています。 人的資本経営において寮・社宅は会社が提供する住宅で、生産拠点(=内容は生産拠点の項目参照)に勤務する従業員のためのものですから準生産拠点とも言えます。
一般的には「寮」は単身者向けで食堂や共用スペースがあり、若手社員の共同住宅のイメージです。社宅は世帯向けということが多く、転勤などの時に利用するイメージです。
2000年代前半に「持たざる経営」が重視されるようになり、大企業の中には老朽化した社宅(とその敷地)の一部を売却する企業が増えました。
コロナ禍以降は賃貸住宅の賃料が増加する中で、会社が用意する寮・社宅は魅力的であり、採用強化のためにこれらを保有する企業が増えてきました。
社宅には自社保有社宅の他に借り上げ社宅(会社で契約した賃貸住宅の部屋に従業員が住む)、また賃貸住宅の賃料を一部補助する家賃補助という支援もあります。自社で社宅を保有する企業の中には、BCP(事業継続計画)対応拠点として活用できる寮・社宅を保有していたり、研修施設を兼ねた社宅を保有していたり、かつての「住むだけの社宅」つまり「コストがかかるもの」からの脱却が図られています。
また近年は「人的資本経営」が重視されるようになり、寮・社宅に加えて研修所や福利厚生施設等を新たに保有・拡充する企業が増えてきました。
松建設のオフィス建築
松建設はCRE戦略のパートナー企業として、最適な不動産戦略の相談から始まる決して建築だけではない「CREの専門企業」として、これまで数多くの企業をサポートしてきました。
こちらよりご覧ください。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/