建物・土地活用ガイド

2025/09/12

都市部におけるオフィス需要

企業や個人などが保有するオフィスビルは、余程築年数が経っていなければ大都市部において収益性の高い不動産投資の1つです。コロナ禍以降オフィス回帰が進み、オフィス賃料は上昇傾向にあります。

今回は最近のオフィス需要を見ながら、オフィスビル建築について考えてみましょう。

オフィス賃料動向の動向

下の図は2006年から2025年春までの主要都市におけるオフィスの賃料動向です。傾向としては、東京主要5区の動きが最も活発に変動しています。
これを見ると、金融緩和とともに経済環境が良くなった2014年頃から賃料は上昇し2020年にピークを迎えますが、在宅勤務が奨励され、企業が一部床を解約することが増えたコロナ禍で大きく落ち込みます。しかし落ち込んだ賃料は2023年後半から上昇傾向にあり、現在もその状態が続いています。
他の主要都市では好景気が続き、不動産市況も長期間好調な札幌の賃料上昇が目立ちます。また中心部でのオフィス建て替えが進み、新規供給が多い福岡市でも床面積総数は増えているものの、企業の賃貸需要が旺盛のため賃料上昇が続いています。その他大阪・横浜・名古屋でも賃料は上昇傾向にありますが、新規供給が多いためか先に挙げた東京・札幌・福岡ほどの上昇はありません。

■主要都市のオフィス平均賃料

(三鬼商事株式会社「オフィスマーケットデータ」より)

空室率の動向

次にオフィスビルの空室率ですが、2024年12月と2025年7月の空室率を比較すると、東京主要5区平均は4.00%→3.16%、札幌は3.70%→3.60%、横浜は7.34%→6.17%、名古屋は4.54%→4.07%、大阪は4.04%→3.69%、福岡は5.56%→5.13%と、主要都市は軒並み空室率下落、賃料は上昇傾向にあります(この期間では仙台のみ空室率増加)。

すでに「オフィス回帰」という言葉は古くなった感もあり、多くの企業で人材不足の状況があるため、採用強化を進める中でオフィスのあり方を見直しています。より新しいビル、より立地イメージの良い場所に建つビルへの移転が進んでいます。また増床してより使いやすいオフィスへイメージチェンジを行うなど、オフィスに積極投資を行う企業が目立ちます。

求められるオフィスビルとは?

オフィスビルは、そこで働く従業員が業務を行いやすいように適切に考え抜かれた設計であることはもちろんですが、来客するお客様対応など、その企業の業務形態やオリジナリティに配慮が必要です。いわば機能性・デザイン性・快適性を兼ね備えた空間として創造されなければいけません。

また企業の理念やスタンスを反映させ先進性や独自性を感じさせるビルの外観は、企業のイメージUPに繋がり、業務推進はもちろん採用力強化にも繋がります。さらにはデザイン面以外でも、事業継続計画(BCP)を踏まえた設計であれば、より企業の信頼性に繋がります。

老朽化ビルの建て替え

先に述べたように、大都市部のオフィスビルの空室率は低下傾向にありますが、1フロアあたりの床面積が狭く、さらに老朽化したビルの競争力は低くなります。余程良い立地条件があれば別ですが、このようなオフィスビルは競争力がなくなり、空室率増加、賃料下落の可能性が高まります。

老朽化ビルの建て替えは、建築費上昇の中で躊躇するオーナーもいるかもしれませんが、建築費の上昇はしばらくの間続く可能性が極めて高く、可能ならば早めがお勧めです。またオフィス賃料も上昇局面にありますから、建築計画中に作成する収益シミュレーションよりも上振れする可能性もありますので、検討に値するものと思われます。

松建設のオフィス建築

松建設では、法人・個人が保有するオフィスビルの建築は多数あり、また様々なオフィスビルプロジェクトを手掛けてきました。

こちらよりご覧ください。

オフィスビルの建築、老朽化ビルの建て替え検討をお考えの方は松建設に相談するといいでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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