
お寺、神社を取り巻く収益環境は年々厳しくなっているようです。
「檀家さん離れや、新たな檀家が集まらないことによる経済的な支援が減少していること」「法要などの減少」「葬儀などを寺社で行う家が減っていること」などがあり、収入の落ち込みが進んでいます。
こうした状況が続くと、寺社の建築・改修資金が確保できないということになりえることでしょう。
今回は、寺社敷地の開発について解説します。
寺社敷地:考え方の変化
江戸時代以降全国各地に創建された寺院、明治時代以降大量に創られた神社。
このように寺社は100年を超える歴史を持ち、その地に長く根付いた欠かせない存在となっています。そのため、寺社は寺社としての存在感を保つ必要があり、木々に囲まれ、本堂あるいは社殿が中央に鎮座し、広い境内を確保して時に式典やお祭りなどに使われるというあり方が続きました。
こうした事情から、存続を考えると売却する選択肢はありませんので、以前は寺社境内の活用について消極的な寺社関係者が多かったようですが、柔軟に考える関係者が増えており、境内敷地の有効活用を行う寺社が増えてきました。
大きな敷地を有する寺社だけでなく、中規模の寺社でもこうした傾向が徐々に出始めています。
その背景には、冒頭に述べたような経済的な理由が大きく、老朽化した社殿のあり方を検討する宗教法人としては、敷地を借地などに有効活用することで、自己負担が少なく(あるいは不要で)、新築あるいは改修が可能となることが挙げられます。
デベロッパーの思惑
寺社の敷地の有効活用が徐々に広がっている背景には、デベロッパーや建築会社の働きかけによることも理由の1つです。徐々に増えている事例を鑑みて、他の寺社も検討するという循環です。
需要が増える都市部におけるマンションやオフィスビルは、新たな用地を確保することが難しくなっています。
その一方で、都市部においての寺社では容積率を消化している事例は少なく、好立地の都市部に残る有効な土地としてデベロッパーが注目しているというわけです。
また、都市部においては定期借地を利用した分譲マンションが一般化しており、マンションデベロッパーにおいては安心して開発・販売を行えるようになってきたことは、土地を手放すことのない有効活用を模索する寺社の思惑と一致することでもあります。
寺社敷地有効活用のパターン
松建設は、後述するグループ会社の金剛組とともに寺社建築専業の金剛組と組んでの有効活用提案を様々な寺社に対して行っていますが、その一例をお伝えします。
1) 社殿(本堂)一体型建て替え
本堂あるいは社殿の建て替えと有効活用を一体で行うものです。本堂を1階部分に置き、それを取り囲むような土台の上に建物を建築しオフィスビルとして、あるいはホテルとして使うというものです。
2)寺社所有の遊休地の活用
本堂・社殿の置かれている敷地以外に寺社が所有する敷地、例えばあまり使われていない駐車場敷地の有効活用です。新たな収入源が生まれて安定した収入となる可能性があります。その一方で、収益事業には納税義務が発生することに留意してください。
3)定期借地
広い敷地を有する寺社では、敷地の一部を定期借地として貸すことで地代が入ってきます。マンションやオフィスビル用の敷地として長期に貸し出すとすると、前払い地代が入るスキームならば、そのお金を建て替え・改修費用に使うことができます。
4)売却
上記2のような状況の敷地を売却するという選択肢も考えられます。
松コンストラクショングループの松建設と金剛組のタッグ
寺社の建替え・改修は、通常の建物の建築・改修と異なり特殊なノウハウが必要です。
松コンストラクショングループには、現存する世界最古の企業と言われる西暦578年創業の金剛組があります。金剛組は大阪の四天王寺の建築に携わった金剛一族が興した会社で、寺社仏閣建築のパイオニア企業です。
建築会社と寺社建築の両方を同じグループに有している企業体は、ほとんど例がないと思われ、これら2つの企業が一体となって寺社敷地の有効活用と寺社の建替え・改修を行っています。
このような改修建て替えを検討している寺院・神社を保有する宗教法人の方は、松建設あるいは金剛組に相談すると専門家による現実的な提案を受けることができます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/