
企業の買収や合併を意味するM&Aですが、Mergers and Acquisitions(マージャーズ&アクイジションズ)の頭文字でMergersが合併、Acquisitionsが買収を意味します。
M&Aでの企業買収(あるいは逆の立場に立てば譲渡)は、2000年代に入り日本でも広く一般化してきました。
資本力を活かして買収(あるいは合併)したい企業は多くあるなかで、売却案件は少なかったが、中小企業においては事業継承問題、またベンチャー企業によるエグジットの手段として普及したことで売却案件が増え、M&Aが広がってきているものと思われます。
M&Aにおいて買収する側の思惑は「事業を買収する」ことが多いなかで、他にも様々あります。そのなかでも特に「不動産を取得する」という目的を一義的に考えた買収を「不動産M&A」と呼ぶことがあります。
今回は「不動産M&A」の概要とその成功の秘訣について、買い手(買収する側)目線で解説します。
不動産M&A
一般的なM&Aでは主に事業の買収を目的として株式を取得しますが、不動産M&Aでは不動産の取得を目的として企業の株式を買収します。
不動産の取得が目的ならば、何も企業の株式を買う必要がないという場合もありますが、不動産売買にかかる取得税や譲渡益にかかる税金などを考えれば、企業として買収(あるいは売却)する方がメリットが大きいと判断する場合は、この不動産M&Aという方法を採用するわけです。
売る側としては、不動産M&A(つまり株式譲渡)では株式譲渡益の2割が税金となりますが、一般的な不動産売買では譲渡益に対して法人税がかかります。 こうしてみれば、その時の事業収益の状況でメリットがあるかどうかは変わります。
不動産M&Aアドバイザリー企業
M&Aにおいては、売り手と買い手を結びつけるM&Aアドバイザリー企業が入ることが一般的ですが、アドバイザリー企業は銀行(あるいはその系列企業)や専業系企業があり、価値算定を行うデューデリジェンスから始まり、売り手と買い手を結びつける仲介業務を行います。
不動産M&Aの際には、アドバイザリー企業だけでなく税理士や弁護士、不動産価値算定のための不動産鑑定士などもプレイヤーとして入ることもあり、多くの専門家により不動産M&Aは進められます。
ただ、不動産M&Aにより取得する不動産の種別によってはそのまま使うものもあれば、建て替え予定の建物や更地、一時的な資材置き場などでは建築会社による判断が必要な場合もあります。
不動産M&Aと建築会社とのかかわり
M&Aにおいては、財務状況、経営状況、将来の見通しといった、経営に関する基礎的なデューデリジェンスはもちろん、それ以外にも保有する資産価値の適切な判断、あるいは債務の状況、また簿外債務があるかどうかといったことまで、かなり詳細な調査が求められます。
特に不動産取得を目的とした不動産M&Aにおいては、不動産資産の適切な資産価値の判断が求められます。更地やそれに準ずるような不動産の場合は、周辺の取引事例や公的地価をもとに適切な価値(価格)が判断できます。しかし、不動産資産の多くは建物が伴う不動産となります。そのため建物価値の適切な価値判断が必要です。
建物の適切な価値判断では、まず劣化の状況など建物診断に基づくものがあります。これは建築の専門家でなければ難しいものです。加えて、その建物の有効利用性の判断も必要です。たとえば、この立地ならもっと大型の不動産が建てられる可能性があるような「低利用地状態」かどうかの判断や、再建築時の可能性などの判断です。こうした診断は建築の知識に加えて企業不動産戦略(CRE戦略)の知識が必要となります。
こう考えると、不動産M&Aを検討している企業においては、CRE戦略が得意な建築会社との連携を密にすることはとても有効です。
松建設においては不動産M&Aのサポート体制が整っており事例もありますので、お考えの企業は一度相談してみるといいでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/