
不動産における「等価交換」は1970年代から始まったようですが、現在では都市部を中心に多くみられる手法です。
企業が保有する土地や個人が保有する土地で行われる「等価交換」は、半世紀近い歴史の中で業界内では広く一般化したようにも思えますが、関係者以外では知らない方も多いと思います。
ここでは、「不動産の等価交換」について解説します。
等価交換とは
最もポピュラーな等価交換は、広い土地を保有する自宅の建て替え等でマンションの一室と「等価交換」する事例です。
デベロッパーと協議してそこに分譲マンションを建築、土地を提供する代わりに土地権利の対価として、それに見合う広さのマンションの部屋の提供を受けるというものです。デベロッパーは残りの部屋を分譲して「分譲マンション事業」として利益を得ます。
企業保有不動産(=事業用不動産)では、社屋の建て替え費用を捻出するために、用地の一部を建築会社(あるいはデベロッパー)に提供して建築費を捻出するという例も多くみられます。土地の権利の対価と建物価値(専有利用権)を交換するというイメージです。
「建築費用の捻出が困難な事業会社や借金を背負いたくない個人様」の要望と、「事業用地不足、あるいは地価高騰で事業用地獲得が困難なデベロッパー(建築会社)」の要望をマッチさせる手法と言えます。
権利と価値
土地の価値は市況などにより上下しますが、基本的に土地の価値は消費されません(そのため消費税がかかりません)。
一方で、建物価値は利用状況にかかわらず、経年で減価償却することになっています(建て方により減価償却率は異なります)。
そのためある一時点(例えば契約時)の価値を算定して「等価交換」するわけですが、状況により「得したor損した」という感覚に陥ることがあるようですが、これは仕方がないことです。
等価交換プロジェクト事例とメリット
等価交換プロジェクトは、先に述べた分譲型など売り切りパターンもありますが、継続事業を行うパターンもあります。
ある等価交換プロジェクトでは、企業保有する大きな遊戯施設跡地にタワーマンションを建設、低層階半分までを等価交換で取得、その部屋を賃貸住宅として賃料収入を得ています。
この例では、土地を提供する代わりに建築費用ゼロ円(諸経費など除く)賃貸住宅を保有し、収益物件を獲得したことになります。
また、使うことのなくなった事業用地を提供し、そこに商業施設を建築、デベロッパーと按分割合を決めて、その割合に応じたテナントからの賃料収入を得ている事例もあります。
このように、企業が保有する事業用用地の場合その跡地を全て手放すことなく、建築費用をかけずに収益不動産という形に生まれ変わる例が多くみられます。
以上のように、等価交換のメリットは「土地(不動産)保有者(個人・企業)は、ほとんど元手をかけずに新たな不動産の権利(の一部)を手にすることができ、そして新たな不動産の土地・建物の権利を手放すことなく一部は保有できる」ということになります。
等価交換はどんな土地が向いているのか
等価交換のメリットを聞けば取り組みたい企業や個人も多いかと思いますが、どんな土地(不動産)でも対応可能かと言えば、そんなことはありません。
「デベロッパー(建築会社)が事業として成り立つ」と判断されなければ、「等価」になりません。
例えば、一般的に住宅地の立つ一般的な広さの土地では、そこで分譲マンションは困難です。しかし都心の一等地などでは、それほど広くなくても低層分譲マンションの建築は可能ですからチャンスがあると思います。
逆に向いているのは、都市部にある工場跡地や今後稼働停止を検討している工場や倉庫、またある程度の広さのある小売店舗などです。
これらは、等価交換の可能性が大いにある不動産と言えるでしょう。
松建設の等価交換
松建設では、様々な等価交換プロジェクトを手掛けてきました。
こちらよりご覧ください。
等価交換はデベロップメント事業ですが、建築・建設が必ず付随します。
等価交換事業にご興味のある事業用不動産の活用をお考えの法人様は、デベロッパーであり建築会社である松建設までご相談するといいでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/