建物・土地活用ガイド

2025/07/11

最新 2025年路線価の分析

7月1日に2025年分の路線価が国税庁から公表されました。

路線価は、相続税や贈与税の税額算定に用いられる地価です。路線価は「主要道路に面する土地のuあたりの価格」ということで、「路線価」と名前がついています。

価格時点は、地価公示と同じ1月1日で毎年7月1日に公表されます。

今回は2025年の路線価の動向について解説します。

国税庁が路線価を公表する理由

路線価は、公的機関が公表する「地価」の1つです。

3月の地価公示は国土交通省(土地鑑定委員会)が、9月の基準地価は都道府県が主体となって調査・公表しますが、「路線価」は税を扱う国税庁が公表します。
その理由は、路線価は「相続税や贈与税における土地価格の算定基準となる地価」だからです。

土地価格は時価での評価が難しいのですが、「相続税や贈与税における土地の価値算定は時価で行うこと」とされていますので、価額算定を容易にし、また公平に算定するために土地等の評価額の基準となる路線価及び評価倍率が公表されているわけです。

2025年の路線価全体俯瞰

路線価は公示地価(同じ1月1日が価格時点:3月公表)をベースに約80%が目安となっているため、変動率(増減率)の傾向は概ね似通うことになります。

全国約32万地点(民有地の宅地、田、畑、山林など:路線価等の評価における宅地とは、住宅地、商業地、工業地等の用途にかかわらず、建物の敷地となる土地のことを指します。)の平均変動率は、前年プラス2.7%(前年は+2.3%)となりました。

4年連続の上昇で、現行方式となった2010年以降で最高の伸び率となりました。
47都道府県のうち35の都道府県でプラスとなっており、全国的に上昇が顕著となっています。

■四大都市における平均路線価の増減率

(国税庁「路線価」より作成)

図1は4大都府県の2022年以降4年分の路線価変動率の推移です。

これを見ると、東京都と大阪府は右肩上がりに上昇しており上昇率も拡大していることがわかります。

特に東京都の上昇率は大きく8.1%と、都内の上位を見ると20%を超える地点も多くなっており、コロナ禍前の上昇率に迫る上昇率となっています。
この傾向は全国の主要都市で見られます。

■主要都市の平均の路線価の増減率(%)

(国税庁「路線価」より作成)

図2は、松建設レポートで毎月更新している定点観測データのうち、新設住宅着工戸数を取り上げている都道府県(一部追加している県があります)の過去4年の増減率を示しています。
これを見れば、全国的に上昇していることがわかります。

路線価の算定の実際:路線価方式と倍率方式

実際の路線価の算定は以下のようになりますので、相続や贈与について関係のある方は参考にしてください。

路線価が定められている地域(あるいはその周辺地域)では、「路線価方式」で評価額を算定します。
計算方法は以下の通りです。

1. ベースとなるのは、評価対象地が接する路線の路線価×面積(=地積)
2. 画地調整率(=評価対象地の形状、たとえば奥行距離、不整形の度合い、角地など)に基づき、価額を補正する率を掛けて補正する

また、上記以外の土地は「倍率方式」を用いて価格評価を行います。
倍率方式では、固定資産税評価額(3年ごとに評価替えが行われます)に地価事情の類似する地域ごとに定めた「評価倍率」を掛けて算出します。

2026年の路線価の見通し

2026年の路線価の見通しですが、金利上昇の懸念はありますが国内外の観光客の増加、地方主要都市での再開発が引き続き増えていること、また全般的な経済状況が活況なことなど、プラスの要因が続いていることから、地価公示と同様に上昇が続くことは確実でしょう。
また主要都市では、今年以上の上昇率となるところが多いでしょう。

路線価の上昇で納税が増える

改めて言うまでもありませんが、路線価の上昇は相続税における土地の評価額が上昇することです。

相続や贈与で引き継いだ資産の価値が上がる事は嬉しいことですが、その分納める税額が増えます。
相続が前もって分かっていれば何らかの対応もできますが、なかなか難しいものです。

多額の税金を納めることになり慌ててしまうことのないように、事前の準備をしておくべきでしょう。

相続時の税効果を高める様々な活用方法がありますので、不動産を相続する可能性のある方は早めに松建設の専門家に相談するといいでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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