
2025年の地価公示が公表されました。
全国平均や大都市圏の動向については「2025年の地価公示を読み解く 大都市圏版」で解説しました。
また、地方都市では札幌周辺や北海道の地価については「2025年の地価公示を読み解く 地方都市全体&北海道(札幌)版」で解説しました。
ここでは、地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)のうち、仙台・広島・福岡の状況について解説します。
地方圏の地価の概要 〜振り返り〜
2025年の地価公示では、地方圏全体は昨年に比べて上昇しました(4年連続)。
全用途平均は+1.3%、住宅地は+1.0%、商業地は+1.6%となり上昇幅はほぼ昨年並みとなっています。
地方四市全体では、全用途平均は+5.8%となり2年連続して上昇幅が縮まりましたが、札幌・福岡・仙台では、コロナ禍中も含めて10年以上連続して地価上昇しており、住宅価格の高騰や収益不動産価格の高騰など全体的に不動産価格が高くなっていることから、上昇に一服感が出てきました。
地方四市を除くその他の地方圏では、全用途平均は+0.8%、住宅地は+0.6%、商業地は+0.9%と、いずれも3年連続してプラスとなりました。
大手半導体企業の進出地域やその周辺地域の住宅需要や賃貸住宅需要が増え、引き続き建設ラッシュが続いていることや、周辺の商業地域でも開発・新規出店が相次いでおり、工業地はもちろん住宅地・商業地も活況にあること、また人気のリゾート地での別荘地需要が旺盛なことなど、ポジティブな要因が多いため、まだしばらく上昇する見通しです。
仙台市の状況
仙台市は札幌や福岡ほどではないものの、近年それに次ぐ勢いで地価上昇が続いています。
仙台市全体では住宅地は昨年比で+6.3%(前年は+7.0%)、商業地は+8.3%(前年は+7.8%)となりました。
住宅地は依然として需要が好調で高い上昇率となっていますが、地価上昇と建築費高騰の影響により買い控えが出て、全ての区で上昇幅が縮小となりました。
この傾向は仙台市周辺の名取市や岩沼市などでも見られ、5%を超える上昇となっていますが前年よりも上昇率が縮まっています。
仙台市の商業地は、ホテル需要や飲食店需要が堅調であり、上昇幅が大きくなりました。
ただ、周辺市では上昇幅がやや縮まっています。
2026年も今年と同じ傾向で、特に住宅地は上昇を続けるものの、上昇幅はやや小さくなるものと予想します。
広島市の状況
広島市は地方四市の中では出遅れ感があり、地価上昇は続けているものの上昇幅は他の三市に比べると少ない状況が続いています。
しかし、広島市内中心部の再開発が活発に行われており、商業地の上昇には勢いが出てきました。
広島市全体では住宅地は昨年比で+2.4%(前年は+2.0%)、商業地は+4.6%(前年は+4.2%)となりました。
ともに地方四市では唯一住宅地、商業地とも上昇幅が拡大しています。
住宅地では、豪雨被害のあった広島市内郊外の傾斜地域の住宅地は引き続き下落傾向にありますが、他の平坦な利便性のよい地域では住宅地需要が好調で地価上昇傾向にあります。
周辺の東広島市や廿日市市や府中町では、住宅地地価の上昇幅が拡大(廿日市市は横ばい)となっています。特に府中町は+4.5%と高い伸びとなっています。
商業地は、広島駅のメイン口である南口の再開発が進んでおり、利便性・賑わいの向上などの期待からホテル用地などの需要が高まっており、商業地地価の上昇幅は拡大しています。
2026年は住宅地・商業地とも今年以上の地価上昇が期待できそうです。
福岡市の状況
中心部での再開発が続く福岡市ですが、天神地区の「天神ビッグバン」はかなり進みましたが、まだまだ続くとのことで、さらに博多駅周辺の再開発も進んでおり、福岡市はここ10年で大きく変化し、さらに進化を続けるようです。
このような再開発に加え、インバウンド観光客が多く、また国内観光客も多い福岡市では、住宅地・商業地とも高い地価上昇率が続いています。
福岡市全体では、住宅地は昨年比で+9.0%(前年は+9.6%)、商業地は+11.3%(前年は+12.6%)となりました。
昨年よりも、住宅地、商業地とも上昇幅はやや縮まりましたが、それでも全国有数の高い上昇率となっています(県庁所在地単位での上昇率は、住宅地は1位、商業地は東京23区・大阪市に次ぎ3位)。
住宅地では、市内のマンション需要が引き続き好調であり(福岡市は以前からマンションが多い街)、用地仕入れ激化に伴い地価が上昇しています。
ですが、マンションを含め住宅価格がかなり上昇しているため、住宅地地価の上昇幅は縮小しました。
周辺の筑紫野市や大野城市や古賀市でも住宅地地価は高い伸びを示していますが、上昇幅はやや縮小傾向にあります。
商業地では、前述のように国内外観光客増加に伴いホテルの稼働率は好調が続いています。また百貨店等の売り上げも好調で、好材料が多く2桁の上昇となっています。
2026年も引き続き住宅地・商業地とも高い上昇率になると思われます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/