建物・土地活用ガイド

2025/05/16

物流不動産の変遷と近年の動向

高速道路を走っていると、目にすることの多い大型物流施設。
あちこちで見るので「こんなにも需要があるのか」などと思ってしまいますが、現代の買い物スタイルやひっ迫している物流状況を鑑みれば「まだまだ増えそう」という思いもよぎります。

今回は物流不動産の現状について解説します。

物流系不動産の変遷

物流系不動産といえば、かつては@自社で保有する倉庫 A倉庫業者が保有する倉庫の2パターンで、いまでも@Aとも多く見られます。

@は自社保有自社利用のパターンで、Aは荷主(企業)から委託される貨物を保管するという需要に応えるものです。

しかし、サプライチェーンを最適化することを企業は求められ、それに対応する物流施設が必要となり、また物流コストを削減したいという思惑が広がります。 そのため、高機能な物流施設が求められるようになりました。

さらに物流を取り巻く環境を鑑みれば、人口減少・少子高齢化の進展による労働力不足の顕在化、国際競争の激化、情報通信技術(ICT)の革新など、近年大きく変化しています。

これに伴い物流に対する荷主や消費者のニーズが多様化していることにより、物流施設に対するニーズも時代とともに変遷をたどっています。

物流不動産とは

このような背景の中で、賃貸型物流施設(=「物流不動産」と呼ばれています)が増えてきました。

REIT(Real Estate Investment Trust:不動産投資信託)の創設など、不動産投資の環境が整備されたことを受けて、倉庫業専業ではなく国内外の不動産会社やハウスメーカーなど、多くのプレイヤーが参画するようになりました。

物流不動産とは「物流業務を行うための施設として企業などの第三者へ賃貸される倉庫・物流センター等の建物」のことを言いますが、その多くはマルチテナントタイプで一般的な倉庫に比べて大きな施設となります。

同じような利用をされる倉庫は輸送量や保管料に応じて料金が発生しますが、物流不動産ではオフィスビルのように賃貸面積に応じた賃料が発生する点で異なるアセットと言えます。

荷物を扱う企業の立場に立てば、@自社で倉庫を保有する A倉庫を借りる B物流不動産を借りる の3つの選択肢がありますが、@の場合は用地や建築費用などの初期投資がかかる点で、ABの選択肢を選ぶ企業が増えています。

賃貸物流施設:物流不動産の底堅い需要の背景

過去を振り返ると、荷主から依頼される貨物の保管を主な事業とする倉庫「=保管型の物流施設」が主流でしたが、1990年代後半から貨物の保管だけにとどまらずコスト削減やサプライチェーンの最適化といった荷主ニーズに対応し、高機能な設備の導入や流通加工スペースの確保など、保管以外の付加価値をつけた「配送型物流施設」への移行が進みました。

背景としては、
@EC市場が急拡大し宅配便取扱数が激増したこと
Aコンビニ市場の拡大とコンビニ機能を合わせもつドラッグストアの市場が拡大
 →長時間営業かつ都市部店舗が多く倉庫スペースが狭いため、1日数回の配送や小口ロッドでの配送が主となり、物流機能の効率化が必須となっています。
B旧来の物流施設の老朽化が進んでいること
C物流機能を外注する3PL(サードパーティロジスティクス)市場が拡大していること
などが挙げられます。

物流不動産の空室率

首都圏や関西圏の高速道路を走っているとよく見かける大型物流施設の多くはJ-REIT銘柄に組み込まれている物流不動産です。
現在物流系REITは8本(全体で57本)あります。

これらのIR資料をみると各REITに差はありますが、首都圏の物流不動産の空室率はおおよそ10%代前半〜一桁後半、関西圏は5%を切る水準で推移しています。

最も低かったのは、2019年ごろからの爆発的なEC需要を受けた2020年〜2021年で、その後2022年頃から空室率は上昇傾向にありましたが、このところは横ばいという感じです。

上記の背景理由@〜Cは、引き続き当てはまるため需要に大きな変化はないと思われます。
しかしその一方で、2021年以降は新規物件の供給が多かったのが影響していると見受けられます。

そのため、年月の経過に伴い空室率は落ち着いてくるものと推測されます。
その点関西圏などでは、新規物件供給が少なかったため空室率が上昇していないものと思われます。

松建設の物流施設建築

高松建設では、これまで多くの物流施設の建築を手掛けてまいりました。
自社で保有する工場に併設する物流施設の建築や倉庫の建築、また先に述べたような最新の賃貸用物流不動産まで、多様な施工実績があります。

工場・物流センターの施工実績はこちら

物流施設は外から見れば「四角い箱」のように見えますが、「どう効率よく使うか」を施主様との打ち合わせを重ねてからの提案は、施工実績が多くないとできるものではないと思います。工場との併用の場合はなおさらです。

また既存の建物の建て替えでは、既存物件を使いながら建て替えし、スムーズな移行を行うという難しさもあります。 こうしたことを丁寧に行うことも高松建設の特徴です。こちらも合わせてご確認ください。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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