建物・土地活用ガイド

2025/05/02

最新人口推計〜人口動態の変化は住宅需要にどんな変化をもたらすのか〜

最新(2024年10月1日現在)の人口推計が、総務省より2025年4月14日に公表されました。2010年以降日本の人口は減少傾向にあり、それとともに人口構成も大きく変わってきています。

不動産は、「だれが」「どう使うか」により大きく価値が変わります。
そのため人口動態は不動産需要に大きな影響を与え、価値に変化をもたらします。

今回は、最新の人口動態を解説しつつ、それが住宅や不動産需要に与える影響について考えます。

日本の人口はどれくらい減っているのか

「日本の人口は大きく減少している」と言われますが、どれくらい減少しているのでしょうか。

2024年10月1日時点の日本の総人口(日本人+外国人)は1億2380万2000人で、前年に比べ55万人(−0.44%)減少しました。
戦後の人口減少は2009年に初めて起こり、その翌年の2010年は微増、翌2011年以後は現在(2024年)まで14年連続の減少となっています。

このうち日本人だけでみれば、1億2029万6000人で、前年に比べて89万8000人(−0.74%)減少、2022年〜2023年の1年では83.7万人の減少でしたので、2024年は減少幅が拡大したことになります。減少幅は13年連続の拡大となります。

日本の総人口は1967年(昭和42年)に初めて1億人を超えました。
その7年後の1974年に1.1億人、その10年後の1984年に1.2億人を超え、結果的にピークとなったのは2008年で1億2808万人でした。

2024年の人口はピーク時から420万人減少しているということになります。
この現象が今後加速するものと思われます。
ちなみに、世帯数でみればまだ増加を続けており、将来推計では2030年くらいまで増える見通しとなっています。

拡大する日本人の人口減少ペース

10年前の2015年は、日本人人口は前年比マイナス24.3万人で、その後減少幅は一度も減ることなく進んでいます。

いまの状況が続けば、2026年の結果(26年10月1日時点:27年春公表)もしくはその翌年の結果では、日本人減少数は100万人を超えそうです。
ここ数年をみれば、日本人人口の大きな減少分を年間30万人程度外国人の流入による増加が補う形となっており、総数での減少が50万人程度にとどまっているという状況です。

人口減少の背景

人口増減の要因を分解すれば、「自然増減」と「社会増減」に分けることができます(国籍移動を除く)。

「自然増減」とは出生数と死亡者数の差のことで、このあと詳しく解説します。

「社会増減」とは、国内と海外の移動による差です。
2024年の「社会増減」は34万人の増加で、3年連続の増加となっています。
このうち日本人は2000人の減少、つまり海外へ出られた方の方が多かったということです。
外国人は34万2000人の増加で、3年連続の社会増加となっています。
人口減少の要因は、「自然増減」が大きくマイナスであることです。

2024年の出生数は71.7万人、昨年よりも4.1万人減少となりました。

第二次ベビーブームでは200万人を超えていましたが、2000年以降をみると出生数は減少が続いており、2000年は119.4万人でしたが徐々に減少し、2017年には100万人を切ります(96万6000人)。

2017年以降の出生数の減少は加速していき、8年で30万人以上減少しました。
少子化対策はいまのところ結果が見えておらず、2025年は60万人台になることはほぼ確実で、出生数が50万人台になるのも、そう遠くないものと思われます。

その一方で、2024年の死亡者数は初めて160万人を超え160万700人となりました。

戦後、死亡者数が100万人を初めて超えたのが2003年、以後ほぼ増え続けています。
今後は団塊の世代が後期高齢者となることから、寿命を考えると死亡者数は増えることになり、その結果人口の自然減は、この先さらに拡大することは確実でしょう。

「自然増減」で毎年政令指定都市1つ分の人口が減るという状況となっています。

年齢区分別人口

人口減少とともに大きな変化は、人口構成の変化が顕著になってきていることです。

本データの人口構成区分は、〜15歳未満、15〜64歳、65歳以上に分かれますが、このうち若年層の15歳未満の人口は1383万人で、前年に比べて34.3万人の減少(前年は32.9万の減少)、総人口に占める割合は11.2%で過去最低となりました。

生産者人口とよばれる社会活動の中心となる15〜64歳の人口は7372万8000人で、2万4000人の減少、総人口に占める割合は59.6%で、過去70年で最も低くなっています。

一方、65歳以上の高齢者は増え続けています。
65歳以上人口は3624万3000人で総人口に占める割合は29.3%と過去最高となりました。

また、後期高齢者と言われる75歳以上の人口は2077万7000人で総人口に占める割合は16.8%、つまり6人に1人ということになります。
ざっくり言えば、総人口の3割が65歳以上の高齢者という「世界一の高齢化社会」と言われていることがうなずけます。
65歳以上の割合(29.3%)は、世界で見ても断トツの1位(2位はイタリアの24.6%)です。

高齢者人口割合は、先進国では10%代後半から20%程度が多くなっており、群を抜いて高齢者が多い国と言えます。

デベロッパーは高齢者用の「シニアレジデンス」の開発に力を入れていますが、こうした人口動態そして今後も見通しを考えれば納得できます。

また、15歳未満の割合(11.2%)は世界の中でみても、韓国の10.6%に次いで低くなっています。
日本の出生率1.20(2023年)は、韓国の出生率0.93より高くなっていますが、日本の出生率もジワジワと低下しており、さらに低下すれば、超々高齢化社会になることは間違いありません。

15歳以下の人口の数が少なくなっているということは、単身者が増えている、もしくは夫婦の間に生まれる子供の数が減っているということになります。
そうなれば、単身用の間取りの住宅(ワンルームや1LDKなど)やカップル用(1LDKや2DK)の間取りの住宅需要が増えることにつながります。

都道府県別の人口

都道府県別でみれば、人口が増加しているのは東京都と埼玉県の2都県のみでした。
昨年は東京都のみでしたが埼玉県が加わりました。

人口の実数では、東京都が最も多く1417万8000人で前年比0.66%増、全国総人口に占める割合は11.5%となっています。
東京の人口増加率は0.66%増ですが、前年は0.34%、前々年は0.20%でしたので、増加率が拡大していることがわかります。

いまでは考えられませんが1980年代の東京は人口減少状態でした。しかし1990年代後半からの「都心回帰」に再び増加に転じ、以後東京の人口は膨れ続けています。

都道府県別人口の上位順位は変わっておらず、2位神奈川県922万5000人、3位大阪府875万7000人、4位愛知県746万人、5位埼玉県733万2000人、6位千葉県625万1000人(ここまで全国に占める割合が5%超)となっています。

三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏:本データの表記)の状況をみれば、3大都市圏合計人口は全人口の53.3%となり過去最高となっています。
1980年台は47%〜48%でしたので、5ポイント程度増えています。

東京圏は29.9%で前年比0.2%プラスとなり人口の約3割が住んでいます。
名古屋圏は9.0%(6年連続同値)、大阪圏は14.5%で前年比0.1%プラスとなっています。
大阪圏は30年前の1995年の時点でも14.5%でしたので、2000年以降の大阪圏の地位低下が言われていますが、人口割合で見れば横ばいという状況がわかります。

その一方で、東京圏の人口割合は過去30年(1995年〜2024年)で25.9%から29.9%(4ポイント)に増えていますので、集中度合いが伺えます。

つまり三大都市圏が増えているというよりも、東京圏の割合が増えているということになります。
東京圏の1都3県への人口流入が一層顕著になっており、人口集中が進んでいることがわかります。
その一方で、大阪府の人口は減少しましたが減少は僅かで、「社会増」の数が増えています。
大阪圏や東京圏では生産者人口が6割を超え、さらに人口移動に伴う「社会増」が顕著となっています。

こうした地域では、この先も安定して住宅需要があるでしょう。

都道府県人口変動の要因と生産者人口の割合

都道府県別に「自然増減」をみれば、「自然増」の都道府県はゼロです。

2021年まで「自然増」が続いた沖縄県も2022年以降「自然減」が続き、その割合も拡大しています。
人口が増加した東京都、埼玉県も同様で、「自然増減」がマイナスのなかで転入者が増えたため人口増加となっています。

都道府県を跨ぐ移動が要因となる「社会増減」をみれば、22都道府県が「社会増」となっています。
このうち、「社会増減」率が多い上位(1〜5位)は東京都・埼玉県・大阪府・千葉県・神奈川県で首都圏(1都3県)への人口流入が継続的に見られます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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