建物・土地活用ガイド

2024/08/21

土地活用としての「テナントビル経営」

土地活用として建物を建設し、収益を上げるものとしては賃貸住宅や商業施設、クリニックなど多岐にわたります。また、その種類、手法(スキーム)は、どんどん新しいものが登場しています。特に都市部では様々な手法がありますが、意外に土地オーナー(法人・個人)様が検討しない土地活用の種類として「テナントビル」があります。確かに、立地条件が重要で「需要があるか」と悩んだり、「建築費が高そう」などと考えたりすることがあります。今回は土地活用としての「テナントビル経営」について解説します。

ビル関連の土地活用

土地活用としてのテナントビル経営は、所有する土地にテナントビルを自ら建築し、ビルオーナーとして賃料収入を得るものです。ビル関連の土地活用では、所有する土地を企業に事業用定期借地として貸し地代を得る(企業が自社使用のオフィスビルを建てる)パターンや、テナントビルを建築したいと考えるデベロッパー企業などに貸して地代を得る、というパターンもあります。

いずれの場合も、テナントビル経営では1社に貸すパターン(シングルテナント)と複数社に貸すパターン(マルチテナント)があります。シングルテナントの場合、入居予定の企業が求める仕様が異なりますので、新築時は比較的スケルトンに近い状況で貸すなどすれば、建築費は安く仕上がります。しかし、退去リスクは大きくなりますので注意が必要です。マルチテナントの場合は、テナント募集に難航する場合もありますが、退去時のリスクは分散されます。

またテナントビルの入居対象としては、オフィス専用ビル、オフィス+低層階店舗ビル、飲食系専門ビルなどがあります。所有する土地の立地に応じて需要を想定して決めるといいでしょう。

ただし、いずれの場合も所有する立地が「ものをいう」ことは間違いありません。

 

テナントビルの需要とブランド

ここでは、テナントビル経営のうちオフィス向けのビルについて深掘りしてみます。企業等が入居するテナントビルを選ぶ際の要因として、勤務者の交通利便性や業務上便利という観点からの「立地」と財やサービスを産む生産拠点としてのオフィスビル賃料はコストとみなされますので「賃料」、この2つは第一のポイントとなります。また、オフィスの立地は企業のブランドイメージを構築するという側面もあります。例えば、オフィスが渋谷にあるのと池袋にあるのでは、好みはあるもののブランドイメージはだいぶん異なります。この2つは密接に結びついており、オフィス立地として人気のあるエリアの物件では、需要(つまり人気)が異なることから、同クラスビルでも賃料に差が出ます。

また、立地やスペックだけでなく、ビルのブランドイメージでも賃料に差が出ます。大手デベロッパー企業が展開する統一されたオフィスビルブランドは、大規模ビルだけでなく、中規模ビルでもブランド展開が進み、日系大手デベロッパーだけでなく、外資系企業も中規模ビルのブランド化を進めています。

収益物件としてのテナントビルを考えると、建築費は同条件なら基本的にはほとんど変わりませんが、前述のように賃料は多少の違いが出ます。

 

テナントビル経営の長所

テナントビル経営の長所は、何といっても他の土地活用賃貸物件の中でも高い賃料を得ることができることです。後述しますが、確かに建築費(投資額)は高くなりますが、その分収益性は高くなります。

主に企業向けに貸すことになりますので、賃貸住宅等に比べて出入りの頻度が少なく(長期賃貸が多い)、安定的な収益を得ることができます。また、市況が良い時には、新規契約だけでなく、契約更新時にも賃料を上げやすい環境になります。

最後に収益性とは関係ありませんが、土地活用の中で他の物件に比べて、ステータスは高くなることも忘れてはいけません。

テナントビル経営で懸念されること:特徴的な事

テナントビル経営で懸念されることとしては、投資総額(建築費など)が高い点です。そもそもテナントビルはある程度の規模の建物になりますので、その分建築費がかかることは言うまでもありません。また、昨今の建築費が高騰していますので、かなりの投資になるでしょう。

次に、土地活用での賃貸住宅経営と大きく異なる点として、景気に左右されやすいという点があります。2020年〜2022年にかけて、コロナ禍により多くの企業が出社制限を行い、借りていたビルの一部のフロアを解約するケースが見られました。それに伴い、空室率が上昇、オフィスビル賃料相場は大きく低下しました(現在は、だいぶ回復しています)。一方、この間も賃貸住宅では、ネガティブ局面はなく、逆に空室率低下・賃料増となりました(現在も続いています)。加えて、先に述べたようにシングルテナントの場合は退去時のリスクが大きくなります。

最後に

高松建設では、土地活用としてのテナントビルの建築、テナントビル経営サポートの実例が多くあります。検討される方は、ぜひ一度相談してみるといいでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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