建物・土地活用ガイド

2024/06/06

【最新】 総住宅数と空き家の現状と今後の見通し

5年に1度の「住宅・土地統計」が2023年に行われ、24年4月30日にその速報集計結果が総務省より公表されました。
「住宅・土地統計」は国の基幹統計の1つで、住宅や土地利用等の政策立案の元になるものです。調査内容は、住居形態、土地利用状況、所有関係など多岐にわたりますが、速報ではこのうち全国と都道府県の総住宅数と空き家数などが先行して公表されました。
ここでは、速報集計結果に基づき住宅戸数と空き家数について解説します。

住宅・土地統計とは

5年ごとに行われる「住宅・土地統計調査」は、総務省によれば「我が国の住宅とそこに居住する世帯の居住状況、世帯の保有する土地等の実態を把握し、その現状と推移を明らかにする調査で、この調査の結果は、住生活基本法に基づいて作成される住生活基本計画、土地利用計画などの諸施策の企画、立案、評価等の基礎資料として利用されています」とされています。

1948年から始まった「住宅・土地統計」は、現在は日本の基幹統計調査であり、統計法に基づいて調査計画を統計委員会が審議し、それを総務大臣が承認するというものです。実際の調査は、全国から無作為抽出した住戸を調査員が訪問し、そこに住む世帯に調査票を配布して行われます。
23年の調査では全世帯の1/17にあたる約340万世帯が対象となっており、かなり大掛かりな調査です。また、これとは別に建物について、外観や管理者からの聞き取りなどに基づいて作成する「建物調査票」も合わせて行われます(空き家かどうかの調査はこれに該当するようです。)

総住宅数

23年10月1日(調査時点)における我が国の総住宅数は6502万戸で、前回調査(2018年)と比べて261万戸(4.2%)増加しています。調査開始以来、住宅総数は一貫して増加しており、過去最多となっています
例えば、平成に入って初めての調査年だった1993年は4588万戸でしたので、この30年間で1914万戸増加、約1.4倍となっています。ただ、増加率をみれば、前回を含め過去4回の調査では増加率は減少していました。しかし、今回の調査では増加率は増えています。
住宅総数は世帯に連動しますので、東京都が最も多くなっています。しかし前回からの増加率でみれば、沖縄県がトップで7.2%となっています。この先の見通しですが、我が国ではすでに人口減少が進んでいますが、世帯数は2030年頃まで増加する見通しであり、増加率は減少するものの、まだしばらくは住宅総数が増えるものと思われます。

空き家は全国で900万戸だが、空き家率はこの10年横ばい

空き家数は、総住宅数6502万戸のうち900万戸で、前回調査では849万戸でしたので、51万戸増加したことになります。しかし、空き家率でみれば、13.8%で、前回調査は13.6%、2013年の前々回調査が13.5%でしたので、この10年間ほぼ横ばいということになります。ただ、1993年からの30年で見れば、実数が増えていることが顕著で約2倍となっています。
 

予想を大きく下回った空き家率

2013年の調査結果を受けて民間のシンクタンクが、将来の空き家数の予測を発表し、それをメディアが大きく取り上げました。それによれば、23年の空き家率は21.0%(実際は、13.8%)空き家数は1394万戸(実際は900万戸)でしたので、この予想からは大きく乖離しており、「予想以上に空き家は増えていない」ということになります。

問題となる「その他空き家」の名称変更について

空き家にカウントされる住宅は、4つのカテゴリーに分かれます。@賃貸住宅の空き家(=空室)、A売却用住宅の空き家(=未売却)、B二次的住宅(別荘や仮眠所など)、そして問題とされるC長期不在の住宅です。この最後のCは、これまでは「その他の住宅」という分類でしたが、今回調査結果からは、「賃貸・売却及び2次的住宅を除く空き家」という呼び方に変更されました。
 

長期不在の空き家はどれだけ増えたのか

「倒壊の恐れや景観を損なう住宅が増えている」とされる空き家問題ですが、これは主に先に述べたCの長期不在の住宅が増えていることを意味します。実際の結果を見れば、今回調査では385万戸で総住宅数に占める割合は、5.9%となっています。前回調査では349万(5.6%)でしたので、37万戸増えたことになります。
都道府県別にみれば、最もCの割合が少ないのは東京都で2.6%(前回調査では2.3%)、続いて神奈川県で3.2%(前回調査では3.3%)、続いて沖縄県4.0%(前回調査では4.1%)、福岡県4.6%(前回調査では4.9%)となっており、人口が増えている地域や大都市部ではCのカテゴリーに該当する空き家の割合はかなり少なく、前回調査より割合が減少している県も4県あります。その一方で人口減少が顕著な地域ではCの空き家率は上昇しています。

このように、都市部などでは、Cのような空き家増加には歯止めがかかっているようです。その背景として、空き家対策特措法が15年に制定され、その後に改正もされて、特定空き家(放置すれば倒壊などの危険が考えられる空き家)に対する対応が強化されており、その効果が出ていること。加えて、都市部では、再開発が進み、空き家を含めた一体開発が進んでいること等が要因と考えられます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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