TOPICS① 有効求人倍率と人の動き
有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)における求職者1人あたり何件の求人があるかの割合をいいます。一般的に求人倍率が「1」を上回れば求職者が有利ないわゆる「売り手市場」となり、「1」を下回れば「買い手市場」で企業側が有利な状況であると言えます。また、労働の需給関係を考えると、労働市場の状況は景気と連動するので内閣府が発表する「景気動向指数」でも有効求人倍率は一致指数に該当されます。
有効求人倍率について細かく見ていきましょう。
■有効求人倍率の推移※季節調整値
グラフの通り、景気拡大期には有効求人倍率が上昇しているのが分かります。リーマンショック前までは愛知県の有効求人倍率が全国に比べ著しく高い水準にあり、愛知県の代表的な産業である自動車産業が活況であっただけでなく、関連した鉄鋼などの産業やその他の製造業も活発に求人がされたことなどが起因しています。
■分譲マンション賃料(12カ月移動平均)の推移
リーマンショック後、大きく落ち込んだ有効求人倍率ですが、アベノミクス後に徐々に拡大していき、東京都の有効求人倍率の上昇が全国的にも際立つようになりました。全国的にはコロナショックで落ち込みましたが、現時点で有効求人倍率は回復しており、東京都に関しては2015年頃の水準にまで回復してきています。
TOPICS② 上昇は買いにくさの象徴?マンションの年収倍率の考察
株式会社東京カンテイがマンションの「年収倍率」を公表しました。マンションの年収倍率とは、各都道府県で分譲された新築マンション価格、築10年中古マンション価格(ともに70㎡換算)を平均年収で除し、新築・中古マンション価格が年収の何倍に相当するかを算出したものです。年収倍率が低いほどマンションは買いやすく、反対に数値が高いほど買いにくいことを示しています。年収は内閣府「県民経済計算年報」を基に予測値から算出されています。
■新築マンション年収倍率の推移
新築マンションの年収倍率は年々上昇を続けています。東京都では14.81倍、大阪府12.45倍、福岡県9.27倍でいずれも過去最高となりました。
愛知県は新築マンション価格、年収ともに前年度より減少しましたが、マンション価格の下落の方が大きかったため、年収倍率は9.72倍と0.34ポイント縮小しました。
■中古マンション年収倍率の推移
次に中古マンションを見ていきましょう。
2022年の築10年中古マンション年収倍率は、東京都が14.49倍で新築マンション同様に全国で最も高く、大阪府は前年よりも2.12ポイント上昇し10.45倍、愛知県は7.65倍、福岡県は9.27倍でいずれも過去最高となりました。
東京都に関しては、中古マンション(14.49倍)が新築マンション(14.81倍)と同程度の水準にまで上昇しています。
■東京都 新築マンション価格と平均年収の推移(2010年=100)
年収倍率が高いからといって、買いにくいかと言われたらそうとも言い切れません。なぜなら低金利だからです。日本でも長期金利が上昇し始めていますが、実際に影響を受けるのは固定金利で、多くの人が選択する変動金利への影響は暫くはないとの見通しもあります。ただ、いずれにせよ年収倍率の上昇に加えて金利が上昇すると更に買いにくい状況になるとみられます。
定点観測データ
Ⅰ 首都圏中古マンション流通レポート
Ⅱ 近畿圏中古マンション流通レポート
Ⅲ 中部圏中古マンション流通レポート
Ⅳ 福岡県中古マンション流通レポート
Ⅴ 貸家着工戸数
出典:国土交通省
Ⅵ 金利の推移

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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