建物・土地活用ガイド

2023/04/28

グリーンボンド発行の3つのメリットとサステナビリティ経営

グリーンボンドとは「グリーンプロジェクトに関する事業に特化した資金調達」で、投資する側から見れば債権投資、調達する企業側から見れば社債発行です。2008年に国際復興開発銀行が初めて「グリーンボンド」という名称で発行し、その後、環境への関心の高まりとともに次々と様々なプロジェクトに対してのグリーンボンドが発行されました。
昨今では、事業会社においても関心が高まっています。このうち、建設分野で広がりを見せる「グリーンボンド」について、そして高松コンストラクショングループの取り組みについて「建築分野に広がるグリーンボンド」で解説しました。

グリーンボンドを発行する主体には、グリーンプロジェクトの原資を調達する事業者やグリーンプロジェクトを行うSPC、またグリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達する金融機関やあるいは地方自治体などがありますが、今回は「グリーンボンドを発行することで得られるメリット」を、企業目線から対社内、対社外(社会)、対市場(マーケット)の3つに分けて解説します。

グリーンボンドの発行と対社内メリット

環境省が発行する「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版」では、メリットの1つ目に
「グリーンボンド発行に関する取組を通じて、企業の組織内のサステナビリティに関する戦略立案と遂行、リスクマネジメント、ガバナンスの体制整備につながる可能性」
をあげています。

グリーンボンドの発行には、発行準備の段階でグリーンプロジェクトにおける評価・選定プロセス、環境改善効果の算定など周到な準備が必要です。これを公表することでグリーンボンド(=社債)の引き受け(=購入)を促します。この発行準備での取り組みが、サステナビリティ経営に影響を与えます。
サステナビリティ経営は、「環境」・「社会」・「経済」の3つの観点すべてで持続可能な状況を実現する経営のことです。環境に配慮し、社会性を考慮した上で経済活動の一翼を担う企業であり続ける経営スタイルと言えます。

以前はCSR(企業の社会的責任)活動が主流でしたが、SDGsの浸透とともにサステナビリティ(持続可能性)の考え方が広がってきました。
CSRは、経営や事業、プロジェクトとは切り離されて実施されることが多く、かつてのメセナ活動の延長に捉えられることもあります。「企業が余剰資金の活用で社会とのつながりを強化する」というイメージです。
一方でサステナビリティ経営は、環境・社会・経済の持続可能性を考えた事業活動により「企業の長期的な事業継続につながる」という、事業成長の側面が強いものです。
また、年次報告では環境改善効果のレポーティングなども求められます。「すべきことを適切に行っているか」の監視をされることになり、企業はより実現性を高める努力をするでしょう。

つまりその活動は
「発行体の中長期的なESG評価の向上につながり、ひいては企業価値の向上に寄与する。」
「グリーンボンド発行を通じて獲得した投資家との対話は、自社のサステナビリティ経営をさらに高度化していくことにもつながり得る。」

グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版
ことになります。

社会的な支持の獲得

グリーンボンドの特徴は、調達した資金の用途が「グリーンプロジェクト」に限定されていることにあります。つまり、グリーンボンドを発行した企業はなんらかのグリーンプロジェクトを行います。
前述したレポーティングや外部機関のレビューなど、透明性の高いグリーンボンドの発行は「グリーンプロジェクト」を誠実に実施する宣言とも言えます。社会性の高いグリーンプロジェクトを積極的に推進している企業であることをアピールでき、企業価値の向上が期待できます。こうした事業継続の考え方、環境問題への取組みにより、金融機関などを含むボンドを引き受けた(=購入した)投資家との関係強化や、投資家に限らない社会全体からの企業ファン獲得につながる可能性もあります。

資金調達手段の多様化と好条件の資金調達

持続可能性を高めるために、新規事業への投資、新規設備への投資、新社屋への投資など、企業はビジネスを仕掛けるための資金が必要です。そのため、企業が様々な資金調達手段を持っていることはアドバンテージになります。

その一つとして、グリーンボンドという社債発行手段を有することは
「地球温暖化をはじめとした環境問題の解決に資する性質を有する投資対象を高く評価する投資家等の新しい投資家層の獲得につながり、資金調達基盤の強化につながる可能性があり、また、投資家との対話を通じ、互いの考え方や取組の理解が深まり、調達の安定化につながる可能性が考えられる。」
グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版

社債は金利水準や企業の信用力により利率が決まります。創業間もない新興企業や、金融市場での信用が低い場合などは、社債を発行することそのものが難しくなります。
しかし、マーケットの状況次第ですが最近では比較的好条件の利率で資金を調達できているようです。
金融機関との信用関係が十分に構築できていない企業では、希望した条件で融資等が受けられないこともありますが、グリーンプロジェクトに含まれる事業であればグリーンボンドが発行でき、より好条件で資金調達できる可能性があります。
グリーンボンドは事業の内容をはじめ、年次レポートの提出など投資家からの目線が厳しく向けられていることもあり、誠実にプロジェクトを遂行できる事業・企業と判断されれば、グリーンボンドという社債を購入してくれる投資家の支持を得ることも可能です。

サステナビリティ経営へ

こうした3つのメリットを享受しながら、サステナビリティ経営を実現することが可能な社債こそがグリーンボンドなのです。

建築でのグリーンボンド利用にご興味のある企業様は気軽に松建設までお問い合わせください。
ご相談フォーム  : https://www.takamatsu-const.co.jp/contact/
お電話でのご相談 : 0120-53-8101(フリーダイヤル)
松コンストラクショングループのサステナビリティ・リンク・グリーンボンドに関する記事 : 「建築分野に広がるグリーンボンド

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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