建物・土地活用ガイド

2023/03/09

企業所有不動産の精査と効率的な売却について

企業の不動産戦略の最大の目的は、企業が所有する不動産を最大限有効に活用することにより「企業価値の最大化」を図ることです。
その企業不動産戦略で最も大切な事は、不動産の最適化のための精査をきちんと行うことでしょう。
そして、有効活用されていない不動産をどうするかを適宜判断していくことが求められます。

企業の不動産戦略の第1歩である「精査」のステージ

企業にとっての利益最大化のために、不動産戦略の具体的なアクションにはどういったものがあるのかを考える際の前段階として「精査」のステージがあります。
企業が関わっている(所有・借地・賃貸など)不動産について、以下の視点で精査を行うことからスタートとなります。

不動産の活用と経営にフォーカスした精査
財務の視点にフォーカスした精査(担保に入っているかどうか、借入はどうか、等)」
経営の視点にフォーカスした精査」

これら3つの視点から複合的に判断します。

不動産の活用と経営にフォーカスした精査

今回は特に「不動産の活用と経営にフォーカスした精査」について解説します。

視点1 その不動産はビジネス直結か?
事業に深く関わっている不動産なのか、それとも事業にそれほど関係がない不動産なのか?
前者はオフィスや工場・倉庫といった事業で日々使う不動産。後者には、社宅、保養所などが当たります。

視点2 収益をあげる不動産か?
その不動産がお金を産むのかどうかの精査です。事業で使う不動産では事業収益が上がり、企業で保有する賃貸用物件があれば賃貸収入があります。

視点3 不動産の活用状況
毎日使う、時々使う、滅多に使わない等使用頻度の確認を行います。低利用、未利用の物件があれば対処方法を考えます。

こうした視点で不動産の活用状況を精査すれば、取るべきアクションが明確になります。

具体的なアクション事例

企業の現状をあらゆる角度から分析を行い、今後「使う」「使わない」を精査することがスタートとなります。
不動産を所有する企業が行う、主なアクションは以下の5つです。

「他の用途として使う」となれば
 @更地(=遊休地)なら遊休地活用
 A低利用地なら自社で使うスペース以外の賃貸
 B既存建物を活かすならコンバージョン

他には
 C「新規に不動産を購入する」

「使わない」の選択肢を選んだ時は
 D「売却する」

この5つを順に説明します。

@ 遊休地活用
現在使っていない土地を遊ばせておくのは勿体ないと判断し、そこに賃貸物件を建築して賃料収入を得る活動を行う。または、今後の展開を見越して、工場・倉庫の移転などを行い、空いた土地に賃貸物件建てる等の事例です。
例えば企業が所有するビルなどの駐車場スペースが利用数の割に広すぎるということで、その一部に社宅(賃貸住宅)を建て広く入居者を集める事例や、使わなくなった倉庫を取り壊して賃貸住宅を建てて賃料収入を得ている企業など、事例はたくさんあります。

A 低利用地活用
都市部で多く見られる事例です。容積※が未消化の自社ビルを建て替える際に容積を消化したビルを建築し、自社で使うスペース以外を賃貸オフィスとする事例が多くあります。
有名な事例では、建て替えで大きなニュースとなった東京中央郵便局があります。東京以外にも名古屋、博多駅前の中央郵便局が建て替えられ「KITTE」という商業ビルになっています。これらはかつて低層ビルでしたが、今では高層ビルに生まれ変わり高度利用されています。

※容積率 … 敷地面積に対する延床面積の割合。その土地によって都市計画法で定められているが、前面道路の幅や規制緩和などで条件が変わることがある。

B 建替え・コンバージョン
コンバージョンとは用途変更をして建物を再利用することです。使わなくなった社宅に付加価値を付けて賃貸住宅にする、ホテルを賃貸住宅に用途変更する、といった事例があります。

C 新規購入
企業規模拡大に伴い、新たにオフィスビルを購入、工場の新設…など、沢山の事例があります。また、最近は事業外の収入として賃料収入を得るために、土地を買って賃貸住宅を建てる事例も見られます。

D 売却
使わなくなった遊休地、未利用地の売却です。売却は企業業績悪化というネガティブな場面でも起こりますが、所有する不動産の見直しによる取捨選択で、より効率的に事業を行う一貫としての事例も多く見られます。
生産業などで流通などの事情から自社の活用率の高い土地へ本社・工場を集約し、本社機能のあった都市部の不動産を売却する、などの事例です。
Cの新規購入にも係りますが、持っている土地を売却して得た資金で、自社に合った土地を購入すると言った「買い替え」を行う場合もあります。
※買い替えの場合、条件を満たせば「事業用資産の買い換え特例」で譲渡所得の税金を軽減することもできます。

最近では円安やそれに伴う物価の高騰などで本業の収益が減った企業がCRE戦略(企業不動産の活用)を推進しているようです。(2023年2月現在)
不動産は、保有する資産の中で大きい割合を占めているという企業が多いと思います。そのため「自社が保有する様々な不動産を上手く活用できるか」は企業業績に影響が大きく、しっかりとした分析に基づいたアクションを行うことが求められます。

売却に際して注意すべきこと

最後に売却への流れと注意点について説明します。
売却を計画した土地や建物を不動産仲介会社などに相談する例が多いようですが、仲介会社はあくまで「売り手」と「買い手」を結びつけることが業務です。価格査定を行い、公募価格(売り出し価格)を決めて、媒介契約を結び、売却活動を行います。
一般的に既存建物がある物件の売却(とくに古い建物)は、「使わなくなった建物」がある土地として売り出すことが多いです。その場合、取り壊し費用を割り引いた価格として査定されることが多くなるので、注意したいところです。

一方で、活用を目的に土地を探す企業と土地を売却したい企業とをマッチングしている企業へ相談する方法もあります。例えば松建設では土地を探している企業から相談を受けるケースや、逆に土地を売りたいという企業や個人の方からも相談を受けています。
仲介会社にはまだ相談していない、という場合も多く、企業間取引となり比較的スムーズに話が進むようですので、検討してみるといいでしょう。
松建設の土地マッチングの例
https://www.takamatsu-const.co.jp/support/tsugite/detail/16

※最善と思われる場合にはグループの松エステートが間に入ったり、松建設が購入、または収益が見込まれる場合には建て替えで建築をご提案することもあります。

松建設では不動産売買のご相談も承っています。ぜひ気軽にお問い合わせください。
ご相談フォーム  : https://www.takamatsu-const.co.jp/contact/
お電話でのご相談 : 0120-53-8101(フリーダイヤル)

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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