建物・土地活用ガイド

2022/12/26

土地活用オーナーのための確定申告

年末が近づいてくると、サラリーマンの方は源泉徴収用紙の提出を求められます。
ご存知のように、給与所得に加えて賃料収入などがある方は2月16日〜3月15日までに確定申告をする必要があります。
また、この期間に新型コロナウイルスの影響などで申告が困難な場合は、申告・納付期限の延長を申請することができます。国税庁のWEBサイトなどで最新情報や詳細情報を確認しましょう。

今回は土地活用に関係する確定申告(総合課税・分離課税と青色申告)について記載します。

確定申告で決まる税額

多くの不動産オーナー様は、不動産所得に加えて株式配当や給与所得があるかと思います。複数の収入や一定以上の給与所得がある方は勤務先で年末調整が行われません※ので、確定申告をする必要があります。
※年収が2,000万円以下の場合や勤務先(収入)が複数の場合はメインの勤務先で年末調整できますが、既定の年収を越えたり副収入が20万円を超える場合は確定申告の必要があります。

「する必要がある」と書くと「納税額が増える」印象がありますが、実際は収入と経費を整理し、税金を払いすぎていたら返納されます。多くの場合は税金が還付されますが、収入が急激に増えたり控除額が変わった場合などに追徴されることがあります。
収入と経費を整理し、と書きましたが、確定申告では利益と損失を相殺し損益通算することができます。損益通算制度の説明は下記の記事をご参考ください。
松建設マガジン「不動産所得と損益通算について」

所得の種類は10種類

確定申告に際して、最初に知っておきたいことが「所得の種類」です。
所得税法ではその性格によって所得を10種類に区分しており、所得の種類ごとに計算方法や取扱いが異なります。

1⃣ 事業所得 : 商業・工業・農業・漁業・自由業など、事業から生じる所得。
2⃣ 利子所得 : 公社債や預貯金の利子、貸付信託や公社債投信の収益の分配などから生じる所得。
3⃣ 配当所得 : 株式の配当、証券投資信託の収益の分配、出資の剰余金の分配などから生じる所得。
4⃣ 不動産所得: 土地や建物、船舶や航空機などの貸付けから生じる所得。(賃料)
5⃣ 給与所得 : 給料・賞与などの所得。
6⃣ 退職所得 : 退職によって受ける所得。
7⃣ 山林所得 : 所有して5年超の山林を伐採して売ったり、立木のまま売った際の所得。
        ※5年以内の場合は事業所得か雑所得、山ごと譲渡する場合は譲渡所得
8⃣ 譲渡所得 : 土地や建物、ゴルフ会員権、貴金属、権利など個人が所有する資産を売った所得。
9⃣ 一時所得 : 賞金、懸賞当せん金、競馬・競輪の払戻金や保険の一時金・満期返戻金などの所得。
🔟雑所得  : 年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、原稿料や印税、講演料などのように、他の9種類の所得のどれにも属さない所得。

確定申告ではこの所得の種目ごとに収入や必要経費を計算します。収入を全部まとめて捉えてしまうと確定申告の際に混乱してしまうので、日ごろからしっかり分類しておきましょう。

総合課税と分離課税

10種類の所得の中には、確定申告の時に合わせて計算するものと分けて計算するものがあります。
合わせて計算するものを総合課税※と言い、不動産所得を含む項目を加算して合計所得となります。ここから対象所得を得るために使った必要経費と控除項目を引くと課税対象額が決まり、それに定められた税率を乗じて税額(総合課税分)が決まります。これが損益通算制度と呼ばれるものです。
一方、株式関連(売買にともなう譲渡益や配当等)や土地建物関連の譲渡益などは上記の総合課税とは分けて計算するため分離課税と言います。つまり損益通算の範囲外の課税です。
ちなみに、住宅ローン控除は税額から控除されます。かなりインパクトの大きい控除と言えます。

※すべての所得を合計した金額を課税の対象とする課税方法。対象となる所得などは国税庁のWEBサイトをご参照ください。

青色申告と白色申告

事業所得や不動産所得がある場合、確定申告には青色申告と白色申告の2種類の方法があります。どちらで確定申告をするかによって節税に大きな差が出るので、両者の違いを知っておくといいでしょう。
結論から言うと青色申告を選択するのが賢い選択肢と言えます。青色申告には最大65万円の控除などのメリットがあり、逆に白色申告のメリットは少ないです。

青色申告のメリットは
 @ 55万円(最大65万円)の特別控除を受けられる
 A 減価償却資産を300万円まで一括して処理できる
 B 赤字を3年間繰り越して、収入から差し引ける
 C 貸倒引当金を利用できる

などです。
※@の最大65万円控除、A〜Cには一定の要件があります。

平成30年度税制改正により令和2年分(2020年分)から青色申告特別控除額が65万円から55万円に下がりました。その代わりに、青色申告に限らず基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられ実質的には代わっていません。
さらにe-Taxによる申告または電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円の特別控除が受けられます。よって基礎控除を含む総額では、113万円の控除に増えました。

青色申告をするためにはその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出していなければいけません。開業した年の場合は開業後2か月以内に「開業届」を提出しておく必要もあります。
「青色申告承認申請書」を申請していない場合は白色申告となります。白色申告は事前の申請が不要で提出書類も少なく簡単ですが、基本的に税制上の優遇措置がありません。

事前の申請以外にも、青色申告は申告方法などが煩雑なため、税理士などに頼む方も多くいます。(費用がかかりメリットがあまりなかったという声も聞きます。)
経験のない方が自ら行う時には十分注意しましょう。近年は安価な税務ソフトが入手できるため、ハードルは低くなってきています。

確定申告を青色申告形式で行うと様々な優遇が受けられますので、是非活用したいものです。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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