建物・土地活用ガイド

2023/01/11

23年から新設・変更・更新される不動産関連の税制度

(2022年12月14日掲載/2023年1月11日内容更新)
税の改正は毎年注目を集める国民の関心事です。とくに、毎年12月中旬ごろに発表される与党税制改正大綱はメディアでも大きく報じられます。
税制度の改正は9月末を期限として各省庁から税制改正要望が提出され、それを与党税制調査会が審査し税制改正大綱として取りまとめます。その後、閣議審議・決定されたものを国会に提出し、衆参両院で審議して成立・施行となります。

省庁から出された令和5年税制改正要望をもとに、23年に新設・改正・更新される予定の不動産・建築に関連した税について記載します。

※税制改正大綱の発表内容を受け、2023年1月11日に国土交通省税制改正概要の要望の結果を追記しました。

土地の有効活用による投資促進

国土交通省の要望書では「経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」を主要項目の一つとし、「土地の有効活用による投資促進と不動産市場の活性化」をあげています。

具体的には以下の6つです。(主な項目は詳細を説明しています。)

@ 長期保有土地等に係る事業用資産の買換え等の場合の課税の特例措置の延長
長期保有(10年超)の土地等を譲渡し、新たに事業用資産(買換資産)を取得した場合、譲渡した事業用資産の譲渡益の課税の繰延べを認める措置が3年間延長されます。
土地は経済活動の基盤であり、その需要を喚起し、より有効に活用(投資)する担い手への移転を促進することが必要です。
また、内需拡大・供給力の向上による持続的な経済成長のためには、こうした取引を通じて生じる譲渡益の活用により、事業再編や新たな国内設備投資を喚起することで、更なる民間投資の呼び水が必要となるため、税の優遇が行われる見込みです。

特例措置の内容
【法人税・所得税】
10年超保有する事業用資産を譲渡し、新たに事業用資産を取得した場合、譲渡した事業用資産の譲渡益は80%(一部75%・70%)の課税繰延べとなります。

要望の結果(改正内容)
現行の措置が3年間(令和5年4月1日〜令和8年3月31日)延長されます。また、本社の買換について圧縮率が見直されました。(23区⇒外:90%、外⇒23区:60%)

A 土地の所有権移転登記等に係る特例措置の延長
土地取得時の負担軽減、低利用地の発生の抑制などを狙い、土地の所有権移転等に関する登録免許税の軽減処置が2年間延長されます。

特例措置の内容
対象 本則
(本来の税率)
特例
所有権移転登記 2% 1.5%
信託登記 0.4% 0.3%

要望の結果(改正内容)
現行の措置が3年間(令和5年4月1日〜令和8年3月31日)延長されます。

B 優良住宅地の造成等の為に土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の延長
良好な環境を備えた住宅・宅地開発等の事業を促進するため、当該事業のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例措置(軽減税率)が3年間延長されます。

特例措置の内容
一定の事業のために土地等を譲渡した場合、長期譲渡所得(2,000万円以下の部分)に係る部分の税率が軽減されます。
所得税 個人住民税 合計
本則(本来の税率) 15% 5% 20%
特例 10% 4% 14%
軽減部分 5% 1% 6%
※法人は重課制度(長期5%)適用除外。(重課制度は令和4年度末まで課税停止)

要望の結果(改正内容)
対象事業を一部見直しの上、現行の措置が3年間(令和5年1月1日〜令和7年12月31日)延長されます。

C 低未利用地の適切な利用・管理を促進する為の特例措置(100万円控除)の拡充・延長
→所得税等にメリット

特例措置の内容
【所得税・個人住民税】
個人が、譲渡価額が500万円以下であって都市計画区域内にあるいっていの低未利用地(譲渡前に低未利用・買主により利用されることを市区町村が確認したもの)を譲渡した場合に、長期譲渡所得から100万円が控除されます。

要望の結果(改正内容)
現行の措置が3年間(令和5年4月1日〜令和8年3月31日)延長されます。また、以下の土地は譲渡価額の要件につき上限が800万円に引き上げられます。
@市街化区域または非線引き都市計画区域のうち用途地域設定区域に所在する土地
A所有者不明土地対策計画を策定した自治体の都市計画区域内に所在する土地

D リート及び特定目的会社が取得する不動産に係る特例措置の延長
→登録免許税・不動産取得税にメリット

特例措置の内容
リート及び特定目的会社が取得する不動産について、以下の措置が講じられます。
【登録免許税】  移転登記に係る税率を軽減(本則2% → 1.3%)
【不動産取得税】 課税標準から3/5控除

要望の結果(改正内容)
現行の措置が2年間(令和5年4月1日〜令和7年3月31日)延長されます。

E 不動産特定共同事業において取得される不動産に係る特例措置の拡充・延長
→登録免許税・不動産取得税にメリット

特例措置の内容
不動産特定共同事業法上の特例事業者等が取得する不動産について以下の措置が講じられます。
【登録免許税】  税率軽減(移転登記:2% → 1.3%、保存登記:0.4% → 0.3%)
【不動産取得税】 課税標準から1/2控除

要望の結果(改正内容)
現行の措置が2年間(令和5年4月1日〜令和7年3月31日)延長されます。また、不動産取得税の軽減対象に保育所が追加されます。

住まいの質の向上・無理のない負担での住宅の確保

次の主要項目としてあげられているのが「豊かな暮らしの実現と地域の活性化」です。
その中で「住まいの質の向上・無理のない負担で住宅の確保」を促す税制について、以下の4つの要望をしています。

@ 長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置の創設
一定の要件を満たすマンションについて、必要な修繕積立金が確保されマンションの長寿命化のための大規模修繕工事等が実施された場合に、当該マンションの建物部分について当該大規模修繕工事が完了した翌年度分の固定資産税額を1/3減額する特例措置が創設されます。

特例措置の内容
一定の要件を満たすマンションにおいて、長寿命化に資する大規模修繕工事※が実施された場合に、その翌年度に課される建物部分の固定資産税額が減額されます。減額割合は、1/6〜1/2の範囲内(参酌基準:1/3)で市町村の条例で定められます。
※屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事
【対象となるマンションの要件】
・築後20年以上が経過している10戸以上のマンション
・長寿命化工事を過去に1回以上適切に実
・長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保(積立金を一定以上に引き上げ、「管理計画の認定」を受けていること等(地方公共団体の助言・指導を受けて適切に長期修繕計画の見直し等をした場合も対象))

要望の結果(改正内容)
上記について2年間(令和5年4月1日〜令和7年3月31日)の特例措置が創設されます。

A 空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円控除)の拡充・延長

特例措置の内容
【所得税・個人住民税】
相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋(昭和56年5月31日以前に建築され、相続の開始の直前※において被相続人の居住の用に供されていたもの)を相続した相続人が、当該家屋(耐震性のない場合は耐震改修をしたものに限り、その敷地を含む。)又は除却後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除。(令和5年12月31日までの譲渡が対象)
※被相続人が老人ホーム等に入所していた場合は、入所の直前

要望の結果(改正内容)
現行の措置が4年間(令和6年1月1日〜令和9年12月31日)延長されます。また、売買契約等に基づき、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または除却の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象となります。

現行制度では対象が譲渡前に耐震改修工事、または除却工事※を実施した場合に限定され、売主・買主間の合意に基づき譲渡後に工事を実施した場合は対象とされていません。
空き家の発生の抑制を図るため、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除について、適用期間を4年間延長するとともに、譲渡後に耐震改修工事又は除却する場合も適用対象となるよう拡充されます。

※建物を解体し更地にする工事

B 買取再販で扱われる住宅の取得等に係る特例措置の延長
→不動産取得税にメリットがあります。

特例措置の内容
買取再販で扱われる住宅・敷地のうち、一定の質の向上を図るリフォームを行った後、個人の自己居住用住宅として譲渡するものについて、不動産取得税(宅地建物取引業者の祝に係るもの)が以下の通り減額されます。
【住宅部分】 築年月日に応じ、一定額を減額(最大36万円)
【敷地部分】 対象住宅が「安心R住宅」である、または既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入する場合に、税額から150万円または家屋の床面積の2倍(200uを限度)に相当する土地の価格のいずれか大きい額に税率を乗じて得た額を減額

要望の結果(改正内容)
現行の措置が2年間(令和5年4月1日〜令和7年3月31日)延長されます。また、不動産取得税の軽減対象に保育所が追加されます。

C サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制の延長
→不動産取得税・固定資産税にメリットがあります。

特例措置の内容
【不動産取得税】
家屋:課税標準から1,200万円/戸を控除
土地:税額から150万円または家屋の床面積の2倍(200uを限度)に相当する土地の価格のいずれか大きい額に税率を乗じて得た額を減額
【固定資産税】
5年間税額を減額。減額割合は1/2〜5/6の範囲で市町村が条例で定める割合(参酌標準:2/3)
※上記の各特例措置の対象は、国からの建設費補助を受けていること等、一定の要件を満たすサービス付き高齢者住宅に限られます。

要望の結果(改正内容)
現行の措置が2年間(令和5年4月1日〜令和7年3月31日)延長されます。

要望の大半はそのまま施行されることが多いようですが、与党税制調査会での審議、閣議決定、国会での審議を経て施行となります。これから発表される税制改正大綱の内容を注視しましょう。

松建設では定期的に「税務相談会」「法務相談会」を開催しています!
相続税や土地活用に強い税理士・弁護士へご相談いただけます。
※当社お客様向けの相談会です。ご参加を希望の場合は営業担当者へご連絡ください。
当社へのご相談実績がない場合はぜひ一度ご相談頂き、ご参加ください。
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お電話でのご相談 : 0120-53-8101(フリーダイヤル)

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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